第129話
ビャッコを撫でまわしていると足元に魔法陣が浮かび僕とビャッコは光に包まれた。気が付くとレース会場に戻っていて沢山の人に囲まれて表彰台の上に僕だけいた。ビャッコは強制的に戻されたようだ。
そして、僕の隣にはトロフィーを持ってニコニコしているラウズさんが立っていた。少し辺りを見回すと壁側の方に夏樹と肩車をしてもらっているルキの姿を見つけた。
「ウィリアム選手、おめでとうございます。流石はゴッドクラス持ちの召喚士ですね」
表情を変えずにラウズさんはトロフィーを差し出しながらそんなことを言うと会場がざわつき始める。
僕はゆっくり手を伸ばしてトロフィーを受け取った。
「あはは……ありがとうございます。えっと、調べたんですか?」
「ええ、今後の為にも多少は」
「こんな短時間で?」
「部下たちが優秀なのもで」
「なるほど……ちなみにどこまで……?」
そう尋ねると笑顔で返してくるラウズさん。めっちゃ気になるんだけど!
その時、ラウズさんの後ろから獣耳のメイドがこちらに何かを持って歩いてくる。
「こちらが景品となります」
メイドから箱のようなモノを受け取ったラウズさんが僕の前に差し出す。
「蓋を開ければあなたが欲しいものが手に入ります。開けるはウィリアム選手のタイミングで構いません」
「わかりました、ありがとうございます」
「では、これにて表彰式は終わります。ウィリアム選手、こちらの通路をお使いください。その方がよろしいかと」
「お気遣いいただきありがとうございます。連れもいるんですが……」
「畏まりました」
ラウズさんは部下達に指示を出してくれて夏樹とルキの下へ行く。
僕とラウズさんは関係者用の通路に入っていくと扉が閉まった。
個室に案内され座って待っていると扉が開く。
「ウィル!」
座っている僕にルキは駆け寄ってくる。その後、夏樹も入ってきた。
「ビャッコは?」
「今召喚するよ」
ビャッコを召喚するとルキは近づき首周りを優しく撫で褒めている。ビャッコも褒められて嬉しいようだ。
「兄貴、おめでとう。それが景品? まだ開けてないの?」
テーブルの上に置いている手付かずの箱を見て夏樹が尋ねる。
「二人が来てから開けようって思ってね」
僕はゆっくり蓋を開けると中には赤、青、緑、黄色の四色の宝石が埋められているネックレスが入っていた。
「それは?」
「夏樹、椅子に座って」
「? うん」
箱からネックレスを取り出して、夏樹の後ろに回りネックレスを付けてあげる。
「夏樹には世話になりっぱなしだからさ、なんか返せたらなって思ってさ~」
「兄貴……!」
振り向いて見上げる夏樹の瞳は今にも零れそうな程に涙が溜まっていた。
「めっちゃ嬉しい! サンキュー兄貴!!」
「ってうわああ!」
夏樹は立ち上がって凄い勢いで抱き着いてきたせいで受け止めれずに後ろに倒れた。
「ルキもやる!」
「ガオ!」
「っちょ、まっ!?」
仰向けで倒れている所にビャッコが飛び込んできて、その上にルキが飛び込んでくる。
ビャッコは僕の顔舐めだす。止めたいけど手が抜け出せなくてされるがままだった。
「ベタベタだ……」
「はい、兄貴」
夏樹からタオルを受け取り顔を拭く。
「あ、ヘスト達からなんだけど、どこにいるかだって」
「あーこっちから行くって伝えてもらっていい?」
「了解。……カジノ内にあるレストランにいるって」
「じゃ行こうっか」
ビャッコを戻してから僕達は個室を出るとラウズさんの部下の一人が扉の前にいて、道を尋ねると、レストラン近くにある関係者用の通路まで案内してくれた。
部下の人にお礼を言ってから扉を出てレストランに向かう。店内に入ると従業員に部屋を案内された。
「皆、お待たせ……ってヴェスナーとセゾンはどうしたの?」
部屋に入るとカジノに来た時と違ってテンションがた落ちのヴェスナーとセゾンの姿が目に入り、ヘストとクシュに尋ねる。
「あー……大負けしたそうですよ」
「二人とも欲張って、所持金ゼロ。バカ」
クシュからの辛辣な言葉がヴェスナーとセゾンに突き刺さったような気が……あ、二人とも泣きそうになっているな。まぁ、でもこれはフォロー出来ないな。
「ギャンブル……もうしないっす……」
「お、俺も……」
二人は反省しているようだ。
「そんじゃ、二人のテンション上げるためにも豪勢な料理を頼もうか」
「やった!」
「嬉しいっす!」
僕がそう言うとヴェスナーとセゾンがテンションが上がる。単純だなこの二人は。
次から次へと料理を頼み、隙間なくテーブルの上には豪勢な料理が並べられ談笑しながら満腹になるまで食べつくした。




