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バグから始まるVRMMO活動記  作者: 紙紙紙
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第125話

 視界が暗転すると見知らぬ景色が広がっていた。

 凝った造りの建物はなく、シンプルな木造の家が建ち並んでいる。そして、舗装された道の両脇には透き通った水が流れて、所々にヤシの木が植えられていた。ここがナハルヴァラのハウジングエリア。なかなか綺麗な所だなぁ。


「きれいだね!」


「そうだね」


「兄貴ーー」


 ハウジングエリアの景色を眺めていると先に進んでいた夏樹が振り返って僕を呼んで手招きする。ルキの手を繋いで夏樹達の後を急いで追いかけた。

 しばらく暑い日差しの中を歩いて街に入りヴェスナー達の許可証を貰いにギルドに向かう。

 ちなみに、ナハルヴァラはとても広い街で上層と下層に分かれており迷路のように道が入り組んでいるのが特徴の街。上層は飲食店や武具店などが様々なお店が建ち並び、下層はNPC達の居住区や工房、夜にしかオープンしないこのゲーム最大のカジノがある。


「そう言えばさ、砂漠が一日にして様変わりしたの知ってるか?」


 そんな時、頭の後ろで手を組みながら歩くヴェスナーが呟く。


「知ってるっすよ。山みたいな、渓谷みたいになった奴っすよね?」


「画像見た。凄かった」


「ね! 何処の世界遺産かよって思った!」


 ヴェスナー達の会話を聞きながら僕に話題が来ないことを願った。


「一部の人は天変地異だー、とか、神の御業だー、とか訳の分からない事を言ってるらしっすよ」


 聞きたくない情報が入ってくるー。


「ん? 神の御業? 神? ウィル?」


 クシュが小さく呟く。なんでそこから僕に繋がるんだ?


「それは流石に無いっしょ」


「そうっすよ」


「いくらウィリアムさんが無茶苦茶でもそれはないよクシュ」


「む……」


「痛っ! なんで蹴るんだよ!」


「ふん!」


 それを聞いたヴェスナー、セゾン、ヘストの三人は否定するような意見を言うとクシュは頬を膨らませて拗ねてしまい、ヘストの尻に蹴りを入れた。ヘストは涙目になりながら尻を摩ってる。

 こんな事で、二人の仲が悪くなるはいけないと思い、正直に話すことにした。


「あのさ、皆んな……」


 皆んなの視線が集まる。言い辛い……


「その件なんだけど……それ、僕がやりました……」


 そう言うと四人は案の定、口を開けて驚いていた。


「マジかよ……ゴッドクラス怖っ!」


「ウィルっちがフレンドでよかったす……」


 クシュは勝ち誇った笑みを浮かべをヘストを見つめる。


「今度デート、ね?」


「なんでそうなるんだよ?!」


 すかさず上目遣いでクシュは言う。


「いや、なの……?」


「……いや、じゃないけど……」


「じゃあ決まり!」


 クシュはヘストの腕に絡みつき愛おしいそうに見つめる。なんだこれ?

 そんな視線をヴェスナーとセゾンに向けると、いつもこんな感じだよと言いたげな視線が返ってくる。


「イチャイチャしてる二人置いて行くぞー」


 夏樹の言葉に二人だけの世界に入っている二人を置いてぞろぞろと歩き出す。後ろから声が聞こえてくるけど気にしない。

 数分歩きギルドに到着した僕達は四人の許可証を貰ったあと、話し合いをしてバラバラで散策するこになった。

 四人の後ろ姿を見送り、僕達も移動を始める。とりあえず、上層から見て回ることにした。

 美味しい匂いに釣られて買った串焼きを片手に散策。

 道具屋、武具屋、アクセサリー店等のに巡っていく。

 やがて、がらりと雰囲気が変わり、お洒落な飲食店が建ち並ぶエリアに入る。しばらく歩くと不意に袖を引っ張られ僕は視線を落とす。


「あのおみせ、なあに?」


 ルキの指の先を辿ると可愛い制服姿の店員がいるお店を指していた。ショーケースには定番な物から凝った物まで色とりどりなケーキが並べられていた。


「あの店は多分ケーキ屋だと思うよ」


「けーき?」


 ケーキを知らないのかルキは頭をこてんと傾ける。


「甘いお菓子だよ。行ってみよっか」


「うん!」


 そう言うとルキは目を輝かせ僕の手を引っ張って歩き出す。お店に着くとルキは額をショーケースにくっつけて凝視する。僕と夏樹はそんな姿を見て笑ってしまった。


「いくつでも頼んでいいよー」


「ほんとう?!」


「おう」 


 ルキが指差したのと僕と夏樹の分もついでに店員さんに伝えショーケースから取り出してもらい次々に箱に入れていく。

 結局苦そうな物以外全部一切れずつ買うことになってしまった。インベントリに入れとけば腐りはしないけども……買い過ぎた。店員のどんだけ買うんだよと言いたげな視線が痛い。


「兄貴、甘やかし過ぎ」


「あはは……」


 夏樹にも言われてしまった。反省せねば。


「ルキ、食べ過ぎるとお腹壊すからケーキは一日一個ね?」


「わかった!」


「じゃあ約束ね」


「うん!」


 ルキと指切りを交わしお店を後にする。

 すぐ近くにあるパラソルが開いている椅子に腰掛け、インベントリからケーキとフォークを取り出しそれぞれの前に並べる。


「「「いただきます」」」


 一斉にフォークを刺し口に入れ味わう。うん。普通に美味いな。


「相席よろしいかね、勇者よ」


 三人で談笑しながら食べているあると勇者と呼ばれ、顔を上げると特徴的な仮面が入り、僕は思わず嫌な顔をした。


「メフィスト……」


「久しいな勇者よ! ぶははは!!」



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