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バグから始まるVRMMO活動記  作者: 紙紙紙
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第114話

「暑い……」


 屋敷から砂漠の街ナハルヴァラの手前にある村に転移した僕の第一声がそれだ。

 日がまだ昇っていない早朝なら少しは涼しいと思ったけど全然暑かった。


「日中の方が今よりも暑いよ」


「マジで……ルキは大丈夫?」


 白いワンピースに麦わら帽子を被っているルキに尋ねる。


「うん! へいき!」


 本当に平気そうな明るい笑顔で答えるルキ。


「ルキの装備には暑さ軽減付いているから平気だよ。兄貴は一応これを」


 夏樹から瓶に入った水色のアイテムを受け取る。


「それ飲めば六時間は暑さが軽減できるよ」


「へー。クロウカシスで飲んだ寒さ軽減のアイテムみたいだね。六時間……ナハルヴァラまでどれぐらいで着くの」


「半日以上、かな?」


「これしかないの?」


 確実に途中で効果が切れると思い聞いてみる。


「あるにはあるけど……飲み過ぎるとお腹壊すから一本制限なんだ。兄貴、効果切れたら水球作って涼しくしてみたら? 兄貴、ゲンブのおかげで水魔法つかえるんだからさ」


「そうするよ。じゃ今回はゲンブがいいかな?」


 僕は早速ゲンブを召喚する。

 召喚されたゲンブは小さくなって僕の頭に乗る。


「ゲンブおいで!」


 頭の上にいるゲンブをルキが呼ぶ。

 ゲンブは僕の顔を伺ってきたから頷くとルキの頭の上にぷかぷか浮いて移動する。


「じゃあ二人とも付いてきて」


 夏樹を先頭に村の中を進んでいく。白っぽいけど少し黄ばんだ壁に木材をただ並べたような屋根が連なっていた。興味本位に家の壁を撫でると手に砂が付く。


「ナハルヴァラの街や村は、大体が砂岩で出来ているわよ」


 突然後ろから声がして顔を向けると茶色の短髪に身軽に動けそうな軽装している女性がいた。足元にはピンと立った耳に勇ましい目つきの白い毛に覆われた犬のような動物を連れている。召喚獣? もしくは従魔かな。


「そうなんですね。ここに来るの初めてだったので」


「初めてなの? ……あ、誰かに連れて貰ったのね、納得したわ」


「そんなところです」


 女性と話しているとルキが指を引っ張る。


「どうした?」


「ナツ、さきにいったよ?」


 夏樹の方を見ると大分距離が開いていた。


「あ、じゃ僕達はこれで」


「馬車のとこまで行くんでしょ? 場所は知っているから一緒に行かない?」


「別に構わないですけど」


 特に問題ないと思い承諾する。


「なら、決まりね。そう言えば名乗ってなかったわね。私はアカネ、ジョブは氷狼召喚士。この子は相棒のフロストウルフ。名前が長いからフロストって呼んでいるわ。本あなたは?」


「僕はウィリアム、ジョブは召喚士です。この子がルキで、頭の上にいるのが僕の召喚獣のゲ……ウォータータートルです」


 余計な追及をされない為に咄嗟にゲンブの事を誤魔化した。


「やっぱり召喚士。ウォータータートル……確かクイーンクラスよね? いい召喚獣と契約したのね! まぁ私のはキングクラスだけどね!」


「そうなんですね」 


 これは隠し通した方が良いなと内心誓う。

 一通り自己紹介して僕達は談笑しながら馬車乗場に向かった。


「兄貴、遅いよ! 前と同じように護衛依頼って形に、って誰この人?」


 色々済ましてくれていた夏樹がアカネさんの事を尋ねる。何故か若干警戒している。


「私はアカネ。君がウィリアムの連れの人だね? よろしく」


 アカネさんは平然とした顔で手を差し出す。


「ナツキだ」


「よろしく! じゃあ私も護衛依頼を受けてくるからまたあとでね」


 アカネさんは大きく手を振って颯爽と受付に向かった。


「どうしたの夏樹?」


「いや、なんでもない。馬車あっちだよ」


 夏樹が指差す先にある大型の幌馬車に歩いて行く。

 御者の人に挨拶してNPC達が乗り込むのを見守る。


「アンタらも護衛依頼か?」  


 僕よりも二倍ぐらいの身長でごつごつした体つきのツーブロックの髪形をした男性が話しかけてくる。


「初めまして、クラン《ラグナロク》リーダーのウィリアムです」


「俺は《剛腕の戦士》のリーダーのグラディウスだ。あっちの三人がパーティーだ」


 指の先を辿るとグラディウスさんと同じ体格した男性が三人いた。僕は軽くお辞儀する。


「これで護衛依頼のメンバーは揃っているか?」


 グラディウスさんは御者に尋ねるとあと一人という。多分アカネさんだろうと僕はそっと伝えた。


「遅くなってしまったわ」


 時間ギリギリでアカネさんが来る。


「遅い! 配置は既に決めている。アンタは後ろだ!」


 グラディウスさんは怒り気味に言って馬車に乗り込んでいく。

 僕達も乗り込んで任された右側がに就く。

 ちなみに左側と正面はグラディウスさんのクランが担当だ。

 グラディウスさんが御者に合図を送り、少し遅れて馬車が動き出した。








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