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バグから始まるVRMMO活動記  作者: 紙紙紙
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第11話

 陸に着く頃には太陽は沈み、夜空には満月が浮かんでいる。

 夜のフィールドは整備された道に街燈が等間隔に配置されていて明かりはそれだけ。今は月明かりで視界は問題ないが明かりがないと夜の活動は難しいな。


「兄貴こっち」


「?」


 そんなことを考えていると夏樹に呼ばれ一緒に橋と陸に間にある小さな店に立ち寄る。


「なんか必要なのを買うの?」


「あるちゃあるけど、兄貴所持金どれぐらいある?」


 夏樹に言われ所持金を確認。前回売った素材分しかないな。

 そのことを夏樹に伝えた。


「うーん、金銭的に一個しか買えないか……まあ今夜は月明かりもあるし問題ないかな。この光のタリスマンを買うと月明かりが無くても夜のレベル上げが出来るようになるんだけど」


「そんなアイテムあるんだな~」

 

「兄貴……序盤の流れとか初心者向けのサイトとかって見てない?」


 夏樹に問われ僕は考え込む。

 僕が見たのは召喚士のこととギルドで武器を受け取れるぐらい。

 実際に体験して楽しみたい派だから一切調べてない。

 そのことを夏樹伝えた。


「うーん、まぁ遊び方は人それぞれだしいいけどさ。あんま知らな過ぎると誰かとパーティー組むことになったら逆に迷惑になっちゃうから気を付けて」

 

「ん、了解」


「あのさ兄貴、しばらく俺と組まない? そしたらさ兄貴の知らないこと教えられるし、兄貴の拘りも守れるしどうかな?」


「別にいいけど。夏樹は友達と遊ばなくていいのか? 折角買ったんだし……」


「友達とは予定合わせてやるからいいの。OKってことで良い?」


「う、うん」


「やった! じゃあ夜のレベル上げにレッツゴー!」


 光のタリスマンを買わず、消費していたポーションを補充して夜のフィールドに歩いて行く。



 しばらくフィールドを歩いているとウルフという狼型の敵モンスターを見つけた。

 ウルフは群れで行動していると夏樹は教えてくれたが、目の前にいる一匹だけだ。

 敵モンスターはレベル3。レベル1の夏樹でも勝てなくもない敵モンスターだ。


「兄貴、俺一人でやってもいい?」


「構わないけど、ちょっと待って。……来い、セイリュウ!」


「ギャア!」


 セイリュウを呼び出すと右腕に絡みついてくる。


「これが、兄貴の召喚獣?」


「セイリュウって言うんだ」


「へー。結構愛嬌あって可愛いね。それでセイリュウを召喚して何するの?」


「敏捷力が上がるバフを掛ける。ウィンドアップ」


 魔法を唱えると夏樹の体が薄緑色のオーラが纏った。

 ステータスを見るとバフのアイコンがついている。


「気を付けて」


「おう! 今なら負ける気がしないぜ!」


 僕が見守る中、夏樹はゆっくりウルフに近づく。

 ウルフも気付いたのか視線を夏樹に向け、牙を見せ威嚇をする。

 夏樹は止まり足を開き柄に手を掛け、地面を蹴り一瞬姿が消え、轟音共に現れた夏樹は木にぶつかっていた。そしてドロップアイテムだけ残してウルフは消えた。


「夏樹!?」


 心配になった僕は慌てて近づき夏樹を抱え転移結晶のアイテムを使い街に戻り、宿屋に直行した。

 横に寝かせしばらくしたら夏樹は目を覚ました。




「兄貴……ここは……」 


「ファルトリアの宿屋。酔ったの一言だけ言って倒れるんだから心配したよ。よかった……それで何があったんだ?」


「うん……」


 夏樹が使ったスキルは相手との距離を詰めて切りかかるスキルだったが、敏捷力が上がったせいでウルフを切った後制御出来ずに木にぶつかったそうだ。


「それ、僕のせい、だよな。ごめん夏樹……」


「兄貴、平気だから気にしないで。それよりもレベル上げ中断させちゃってごめん!」


「「……ぷっ」」


 お互いに謝っている状況に僕と夏樹は笑いあった。


「それにしてもセイリュウのウィンドアップ凄まじいな。兄貴は使った時はなんもなかったの?」


 オーガ戦で一応使ったが特に問題は無かった。夏樹がああなった原因があるならセイリュウを出していたことかな。


「あるにはあるけど、多分だけどセイリュウを召喚していたからだと思う」


「どういうこと?」


「説明する前に皆を夏樹に紹介するよ」


「皆?」


 宿屋では戦闘系のスキルは使えないが召喚は可能。それにMPも消費してもすぐに回復するから順番に召喚した。


「来い、スザク! ゲンブ! ビャッコ!」


 もともと召喚しているセイリュウ以外の三匹を召喚するとそれぞれの定位置に着く。


「紹介するな。足元にいるのがビャッコ、左肩に止まっているのがスザク、頭の上に乗っているのがゲンブ。皆夏樹に挨拶してー」


「ガウ!」

「チュン!」

「ギャア!」

「カメ!」


 四匹は順番に夏樹に挨拶する。


「あ、あのさ兄貴聞くの怖いけど聞いていい? こいつらってもしかして全員ゴッドクラスだったり……」


「そうだけど?」


「マジか……あはは……」


 夏樹は引きつった顔して乾いた笑いをした。




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