第105話
玉座の間の扉に着いた僕はラティノアに尋ねる。
「ラティノアさん、作法とか知らないんだけど大丈夫ですか?」
「問題ないです。では入ります。陛下、お連れしました」
そう言うと扉が自動で開いて行く。内側から誰かが開いているのかな?
扉は徐々に開いて行き、赤い絨毯の先に白い髭を生やした厳つい顔をした人が座っている。
更にその隣には金色の髪をした女性と明るめの青い髪をした女性とシャルル様が並んで座っている。
「よく来てくれたプレイヤー達よ。 我が名はギルバルト・フォン・クロウカシス。此度の件、誠に感謝するぞ!」
王様が声が響き渡る。少し鳥肌が立ってしまった。
「クラン《銀狼の彼方》と《ラグナロク》の皆様には感謝しております。私は第一王女シニル・フォン・クロウカシスと申します」
「第二王女シティア・フォン・クロウカシスです。家族を救っていただき誠に感謝しております」
王女様の二人がドレスの裾を掴み優雅にお礼を述べる。
「そこにいる副団長から大体の事は聞いておるが、詳しいことを尋ねたい」
「わかりました」
代表してヴェスナーが答える。
そして、僕達はあの日の事を細かく伝えた。浮遊城のダンジョンボスが侵略していたことと、ダンテというプレイヤーがダンジョンボスだったことをだ。
「信じがたいことだが、戦ったお主達がそういうなら事実なのだろう。浮遊城、か……副団長、至急魔導士を集め城の守りを強化せよ」
「はっ!」
ラティノアは王様の命令で玉座の間を出ていく。
「おい、あれを持ってこい」
兵士の一人が箱を持ってきて王様に渡す。すると、王様は立ち上がりヴェスナーの前に歩み寄る。
「感謝の気持ちだ。受け取ってくれ」
「あ、ありがとうございます」
ヴェスナーは両手で受け取る。何を受け取ったのか全員ヴェスナーの周りに群がる。
「開けてもいいですか?」
王様が頷くのを確認してからヴェスナーはゆっくり箱を開けると、そこには虹色に輝く玉が入っていた。
「それはクロウカシス王家に伝わる秘宝――虹色の宝玉だ」
王様は詳しく説明してくれた。
この虹色の宝玉を武器に当てると熟練度が最大になりジョブチェンジが出来るようになるそうだ。ただし、使用すると宝玉は砕けて二度と使えなくるようだ。まさかのチート級のアイテムを渡されヴェスナーは青い顔になる。
「こ、こんなもの、も、もらえません!」
「我の気持ちを無下にする気か?」
「うぅっ……あ、有難く頂戴いたします……」
ヴェスナーは断り切れず受け取りインベントリに仕舞う。王様は満足そうな表情をしていた。
「さて、祝いのパーティーを開催したいのだが……このありさまではな」
「すいません……」
僕はすかさず謝る。
「責めているわけではないのだから謝る必要はないぞウィリアム殿。お前達を招待したいのでな、修築が終わり次第知らせを送ろう。それから開催日時を決めるという流れでどうかな?」
「俺達はそれで構わないです。二人は?」
「急な仕事が入ってこなければ平気かなー」
「俺はいつでも!」
「だそうです」
「決まりのようだな。クラン《銀狼の彼方》、クラン《ラグナロク》」
急な王様モードに皆姿勢を正した。
「お前達のおかげでこの街と娘達は救われた。王として、父親として感謝するぞ」
王様と王女様達が頭を下げる。
「俺達は出来ることをしたまでです」
「そうか」
王様は公務があるそうで玉座の間を出て行く。その後ろを王女様達もついて行く。
残った僕達はタイミングよく帰ってきたラティノアに帰ることを伝え、転移結晶のアイテムを使い一旦僕達の屋敷に戻った。
使っていない部屋に集まりクエストの報酬金を受け取りクランチェストに仕舞う。それから僕達は宝玉について話し合った。
「これさ、使わないでどっちかのハウジングに飾るってのはどうかな?」
「使うのもったいないし俺はそれでいいよ」
「俺っちも!」
「うん。綺麗だから保存」
ヴェスナーの意見に賛成する三人。
「俺は兄貴に任せるよ」
夏樹は僕に丸投げした。
「うーん、皆の意見に賛成でいいか。それでヴェスナー達のハウジングでいいよ」
「わかった」
代表でヴェスナーがインベントリにしまう。
「おはなし、おわった?」
僕の膝の上で大人しくしていたルキが言う。
「うん、終わったよ」
そう言うとルキは目をキラキラさせる。
「じゃあ、あそぼうウィル?」
することもないし、念の為に皆に聞くと一緒に遊ぶことに。
時間の限り僕達はルキと色んな遊びをしてからログアウトした。




