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【23000pv感謝】元衛兵は旅に出る〜衛兵だったけど解雇されたので気ままに旅に出たいと思います〜  作者: 水縒あわし
肉の街ヴァイデ編

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また会う日まで


 黒葉の森の手前にある宿場に到着した俺たちは、『黒い短剣』の皆と共にそれぞれ部屋を取った。



 ノーレストを出てから、共に過ごす最後の夜。俺たちは全員で食堂に集まり、夕食のテーブルを囲んだ。



 フィオナとライラは、これが最後とばかりにロウェナの隣に座り、名残惜しそうに彼女の世話を焼いている。


「ゴードンさん、皆には本当に世話になりました」


 俺が言うと、ゴードンはエールを一口飲み、真剣な顔でこちらを見た。


「礼には及ばねえよ。だが、エドウィン。一度は抜けた森だとしても、油断はするな。何が潜んでいるか分からんからな」


「はい。肝に銘じます」



 すると、隣からピップがおずおずと小さな革袋を差し出してきた。


「あの、これ……餞別です。僕が集めた薬草をいくつか調合したものですから、軽い傷なら効くと思います」


「ありがとう、ピップ。助かるよ」


 食事が終わり、そろそろ部屋に戻ろうかという時だった。

これまで黙って食事をしていたザックが、懐から何かを取り出し、ロウェナに無言で差し出した。



 それは、不器用な手で彫られたであろう、少し歪だが味のある、木彫りの鳥のお守りだった。


 ロウェナは、そのお守りを受け取った瞬間、全てを理解したようだった。



 これが、お別れの印なのだと。 


 俯いて、今にも泣き出しそうなのをぐっと堪え、小さな手でもらったばかりのお守りを強く握りしめる。


 そんなロウェナを、フィオナとライラが両側から優しく抱きしめた。



「大丈夫よ、ロウェナちゃん。別れは寂しいけど、またきっと会えるから」


 部屋に戻る前、俺は『黒い短剣』の皆に向き直り、深く、長く頭を下げた。



「皆さんのおかげで、ここまで本当に心強かった。このご恩は忘れません。本当に、ありがとうございました」




 翌朝、支度を終えた俺とロウェナが食堂に降りると、そこには既に『黒い短剣』の皆が静かに集まっていた。


 昨夜までの賑やかさが嘘のように、誰もが口数少なく、ただ黙々と朝食を口に運ぶ。

名残惜しい空気が、食堂全体を支配していた。




 やがて、宿の前で、別れの時が来た。



「達者でな、エドウィン。お前さんなら大丈夫だろうが、無理はするなよ」


「ロウェナちゃん、また絶対に会いましょうね!」


「……気をつけて行けよ」


 皆が、それぞれの言葉で俺たちを送り出してくれる。



 ロウェナは、溢れそうになる涙を必死にこらえながら、小さな手で皆に何度も手を振った。




 『黒い短剣』の皆に見送られ、俺たちは黒葉の森へと続く道を踏み出す。


 時折、後ろを振り返ると、彼らはまだそこに立って、こちらを見ていた。



 ロウェナは、その姿が見える度に、大きく、大きく手を振り返す。


 やがて、道のカーブを曲がり、彼らの姿が見えなくなった。



 静寂が訪れたその瞬間、ずっと我慢していたロウェナの堪忍袋の緒が、ついに切れた。



 その場に立ち尽くし、わっと声を上げて泣き出してしまった。


 俺はロウェナの隣にしゃがみ込み、その小さな肩に優しく手をかけた。



「旅をしていれば、たくさんの人に出会う。そして、同じだけ別れもあるんだ。……寂しいが、それは仕方のないことなんだよ」


 俺は、諭すように、ゆっくりと語りかける。


「でもな、ロウェナ。別れは、終わりじゃない。また、きっと会えるから」



 俺の言葉に、ロウェナはしゃくり上げながらも、こくりと頷いた。

そして、自分の服の袖で乱暴に涙を拭うと、差し出された俺の手を、今度はしっかりと握り返した。



 さあ、行こう。

 俺たちの目の前には、静寂に包まれた黒葉の森が、どこまでも広がっている。



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― 新着の感想 ―
こんばんは。 語彙力不足で申し訳ないですが…『良い』ですね。 ロウェナちゃんとの出逢いを経て、エドウィンさんが一時的な保護者から徐々に父になっていくような雰囲気が読んでて優しい気持ちになれるのが素敵…
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