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【23000pv感謝】元衛兵は旅に出る〜衛兵だったけど解雇されたので気ままに旅に出たいと思います〜  作者: 水縒あわし
肉の街ヴァイデ編

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旅の仲間と、新たな目的地


 南へ。



 新しい目的地が決まった俺たちは、そのままギルドに戻り、さらなる情報収集を始めることにした。



 先ほど話を聞いた南部出身の若い冒険者の周りには、いつの間にか人だかりができていた。

彼の故郷である草原地域の話は、内陸にあるノーレストを拠点にする冒身者たちにとって興味深いらしい。



「草原の中心にはヴァイデってでかい街があるんだ。活気があっていい街だぜ。何せ、南にある領都なんかで消費される肉は、ほとんどヴァイデで処理されてるからな。『肉の都』なんて呼ばれてるくらいだ」



 男がそう自慢げに話していると、「お、なんだか面白そうな話をしてるな」と、聞き慣れた声が輪に加わった。


『黒い短剣』の皆だ。



「ヴァイデか。俺たちも何度か行ったことがあるぜ」

 リーダーのゴードンが、顎を撫でながら言う。


「ノーレストからだと、途中の町や村に寄りながらゆっくり行っても、一月ありゃ着く。道中、宿場も点在してるし、旅はしやすい方だろうな」


 次々と集まってくる生きた情報。



 領都の南西に位置する草原の街、ヴァイデ。ノーレストから三十日ほどの旅路。


 俺は手帳にペンを走らせ、それらの情報を書き留めていく。



 ある程度の情報を集め、もう十分だと判断した俺は、話を聞かせてくれた冒険者たちや、親切に対応してくれた受付嬢に礼を言い、ロウェナと共にギルドを後にした。



 宿に戻り、カウンターにいた店主に、しばらく街を離れることを伝えと。


「なんだい、今度は南かい! しかも一月もかかるような遠出とはな……」

 店主は、心底名残惜しそうな顔をした。


「当分お前さんの面白い土産話が聞けなくなるのは寂しいが、達者でな。次に来る時も、とんでもねえ土産を期待してるからな!」


「はは、善処しますよ。必ずまた寄らせてもらいます」

 俺はそう言って笑い、部屋の鍵を受け取った。



 部屋に戻り、買ってきたばかりの地図を広げて旅の計画を練る。


 しばらくして、部屋の扉がノックされた。『黒い短剣』の皆が、顔を見せに来てくれたのだ。

 俺は皆を部屋に招き入れ、一つの提案をした。



「ゴードンさん、一つお願いがあるんですが。黒葉の森を抜けるまで、俺たちの護衛を頼めませんか。もちろん、依頼として正規の料金で」

 俺の言葉に、ゴードンは少し難しい顔をして腕を組んだ。


「……すまねえ、エドウィン。実は、俺たちは明後日から別の依頼が入ってるんだ。だから、ヴァイデまでの護衛は引き受けられねえ」

 その言葉に、俺は少しがっかりしたが、仕方ない。


「いえ、無理を言ってすみません」


「でも、その依頼、方向は同じよね? 森の手前の宿場までなら、一緒に行けるんじゃない?」

 フィオナが、そう助け舟を出してくれた。

「……そうだな」


 ゴードンは少し考えると、頷いた。

「よし、分かった。宿場までで良ければ、護衛代はいらねえ。道連れだ」


「本当ですか! ありがとうございます、助かります」


 彼らのような手練れと一緒なら、黒葉の森まででも心強い。


 俺たちは出発日を話し合い、『黒い短剣』の出発に合わせて、二日後にノーレストを発つことに決めた。


 その日のうちに、俺は店主に余裕を持たせて五日分の携帯食を注文した。



 翌日は、丸一日かけて出発の準備に充てる。

 街の市場で、旅に必要な消耗品を補充し、武具屋で愛刀や新しい防具の確認をしてもらう。それから、ロウェナのために、日持ちのする干し果物や焼き菓子を多めに買い込んだ。



 全ての準備を終えると、まだ時間に余裕があった。


 部屋で一息つきながら、俺は隣に座るロウェナに尋ねた。


「ロウェナ。この街を出る前に、何かしておきたいことはあるか?」


 俺の問いかけに、ロウェナはきょとんと目を瞬かせた。


 そして、何かを思いついたように、自分の伸びてきた金色の髪の毛先を、小さな指でくるくるといじり始めた。


 そして、はにかむように、俺の顔をじっと見上げてきたのだった。


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