表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

22/115

22,刺客。

 

 山小屋が見えてきたところで、スゥが足を止める。


「まってリッちゃん、罠の可能性があるかも」


「レオナルドは信用できると思うが」


「うーん。確かにリッちゃんの、人を見る目は確かだと思うよ。他力本願が大好きなリッちゃんらしく」


「なぁ、まだマイリーのことで怒ってるのか、お前は」


「だけど、レオナルドという人が敵側に捕まっている場合もあるよね。そうすると、あの山小屋では、敵の待ち伏せが待っている──これって重複表現?」


 スゥの言うことも一理ある。レオナルドが聖都軍に捕縛されている可能性も否定はできない。またはコア機関か、それとも。


「よし、スゥ。──気をつけて偵察してきてくれ」


「結局、わたしなの?」


「あいにく、おれは戦闘向きじゃないんでな」


「分かった、リッちゃん。一緒に行こー」


「……しょうがない、行こう」


 山小屋は開けた場所にあるため、身を隠して近づくことができない。

 無防備にならざるをえないところを走っていき、山小屋の外壁にぴたりと身体をつける。そして窓から、室内を見やった。


 とくに異常は見られない。

 山小屋内に入る。人けはない。


「待ち伏せはないが、レオナルドもいないのか」


 スゥがくんくんしながら言った。


「リッちゃん。なんか、燃えてない? 燃えている臭いがする」


「あ、しまった」


 窓から外に身を乗り出すと、山小屋の屋根が燃えていた。脱出しようとしたとたん、あまたの火矢が飛んでくる。


 おれは慌てて室内に戻った。


「待ち伏せはあったんだ。しかし、奴らは外にいた」


「聖都軍かな?」


「どうだろうな。とにかく、蒸し焼きになる前に、逃げないとな」


 だが思ったより火のまわりが早い。外に強硬突破しようとしても、周囲にいる射手から狙い撃ちされるだけ。

 それと蒸し焼きになるより、まず一酸化炭素中毒で死にそう。


「困りましたな、スゥさん」


 スゥは弱り切った様子で言った。


「リッちゃん。わたしは剣士だから、火事とかには弱いんだよね」


 一考してから、近くまで迫っていた火炎に向かって、ビー玉を投げた。


 ダメもとで第四の型【冷たいものは冷たい】を付与。

 効力の凍結状態が決まり、一帯の火炎が凍り付いた。


「すごい、リッちゃん! デバフって、人間や魔物以外でも使えるんだね?」


「森羅万象に効力があるのか。これはおれも意外。デバフ付与は相手を選ばないらしい」


「これで火攻めでやられる心配はなくなったね。じゃ、出るよ、リッちゃん」


「外の姿なき射手どもはいなくなってないぞ」


「けど火の手というプレッシャーがなければ、わたし、飛んでくる矢を斬り落とす自信があるよ。だからリッちゃんは、わたしから離れないで、ついてきて」


 スゥの、どこからくるか分からない自信に賭けるとしよう。


 スゥの後ろに続いて、山小屋を出る。とたん三方から矢が射られる。ただ少なくとも、山小屋を背にしているので、背後からの矢攻撃はないわけだ。


 そして三方からの矢の雨を、スゥの戦剣〈荒牙〉が舞い、斬り払っていく。

 そのまま茂みまで突っ込んだ。


 大樹を背にして、身を低くする。


「やるな、スゥ」


「ところで、この敵は聖都軍なの? それともコア機関というところなの?」


「それはいい質問だが、おっと」


 黒装束の刺客が樹林の中から襲いかかってきた。敵は3人。それぞれ短剣を装備している。先ほどまでは矢を射っていた連中だな。


「たぁっ!!」


 スゥが戦剣を数閃させ、二人の刺客を斬り殺す。


 3人目には、おれがビー玉を当てていた。

 第十三の型【痛いのは生きている証拠】。


 状態異常系であり、その全身を激痛が襲うデバフ付与だ。


「ぐぁぁあ!!」


 刺客が痛みにもだえ、転げまわる。

 そこをおれは踏みつけて、動きをおさえる。


「こういう手荒な真似はしたくないが、手段を選んでもいられないからな。痛みを解除してほしかったら、答えろ。お前たちは、どこの組織に属している者だ?」


 とたん刺客が泡を吹き出した。


「リッちゃん! 情報を吐かせる前に、痛みでショック死しちゃうよ!」


「バカな。このデバフに、そこまでの激痛はないはず──あ、こいつ、毒薬を歯にでも仕込んでいて、いま噛み砕きやがったんだ。おい、吐き出せ!」


 しかし、気づいたときには毒死していた。


「捕虜になるくらいなら、死を選ぶ。リッちゃん。これって、コア機関のやりかた、かな?」


「うーん。なんとなくだが、聖都軍でもコア機関でもない気がするな」



評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ