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114/115

114,聖騎剣術最終奥義《見損なったとはいわせない》。

 


 ドラゴンを『装備品』と定義したのは、正解だったようだな。


 それによってオルギの肉体は砕け散り、ドラゴンそのものが、抜け殻として飛んでいった。


「ほかの悪魔が来るまえに、長居は無用。ラベンダー、迎えにきてくれ!」


 このとき、同時に複数のことが起きた。


 観客席から降下してきたスゥがおれを突き飛ばし、オルギが振り下ろした燃え盛る大剣を、戦剣〈荒牙〉で受け止める。


 この衝撃で、おれは飛ばされた。


 オルギの状態は、敵ながらかなり悲惨。

 ドラゴン形態が抜き出されるさい破壊された身体は、原型を留めているのが奇跡のような状態。


「しかし、さっき身体がバラバラになったと思ったが、まだ五体は残っていたのか」


 燃え盛る大剣と思ったものは、オルギの右腕が形態変化したものだった。

 便宜上、〈燃える腕剣〉とでも呼んでおくか。


 この〈燃える腕剣〉による連続攻撃を、スゥはぎりぎりで回避していく。

 先ほど一撃を受けとめたが、そのときの衝撃で、だいぶ身体に限界がきているようだ。


 まったく五体がほぼ破壊された状態でも、ここまでの威力とは。


 おれはスゥの援護にまわった。


 こういうときは、まずシンプルなものから。

 第一の型【亀の歩み】。減速デバフ。


 五体がボロボロのくせに、オルギの動きはまだまだ速い。

 そこで減速デバフをかける。


 さらに〈燃える腕剣〉から巻きつくようにしてスゥに絡みつこうとする火炎は、第四の型【冷たいものは冷たい】による凍結デバフ。

 凍結した矢先に、すぐに火炎状態が戻るが、とにかく連続して打ち込むことが大事。


「下等なる人間、ごときがぁぁぁ!!」


「はい、そういうの、よくないと思うよ。下等差別、反対!」


 スゥの〈回転斬り〉。


 そこに付与するのは、第七の型【ビリビリしているのだね】。

 オルギの裂けた肉体箇所に、感電状態を付与する。


 空気を走る電流が、スゥの〈荒牙〉をつかむ。

 そして誘導するようにして、オルギの裂けた場所へ。


 そこに叩き込まれた〈荒牙〉が、さらに悪魔の肉体を断ち切り、一刀両断にした。


「とうっ!」


「お見事といいたいが、まだだぞ、スゥ!」


 上半身だけとなったオルギの身体が燃え上がり、火炎の巨大な砲丸となって、スゥに襲いかかる。


「わぁ、このしつこさ! 敵ながら天晴──リッちゃんも見習おう」


「おれは、いつもしつこい男だろうが!──それって、いいことか?」


 しつこく凍結デバフを、《デバフ・アロー》で打ち込む。

 ついに火炎が消えただけでなく、オルギの上半身を凍結状態に持ち込む。


「スゥ! この凍結状態は、ほんの一時だぞ!」


「三秒で充分だよ! 聖騎剣術最終奥義《見損なったとはいわせない》!!」


 つまり、渾身の一撃。

 だがただの一撃ではない。一瞬だが〈封魔〉スキルの鳴動を聞いた。


 こんどこそ、オルギの身体が一刀両断される。

 転がった頭部が、信じられないという口調で言った。


「バカ、な、人間、ごときが、に、ん、」


 観客席からなだれ込んできたゴブリンの群れが、オルギの肉片を踏みつけて、こっちに突進してきた。

 すっかり錯乱状態で。


 スゥが片膝をつく。


「うう。はじめのオルギの一撃を受け止めたとき、骨を何本か折ったみたい」


 空間転移してきたラベンダーが、軽くお辞儀した。


「まった?」


 こいつ、いいところだけ登場しやがるよな。

 しかし、錯乱したゴブリンの群れが迫っているので、文句は言えない。


「まった、まった」


 ラベンダーの空間転移で、おれとスゥはその場を去った。

 途中、「今回はすっかり後方支援でした」と自責しているエンマを連れて、闘技場の外まで脱出。


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