表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
ネモフィラの乙女戦士  作者: 七海美桜


この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

9/12

八話 ディミトラの夢

「呆れずに聞いて欲しいんだけど」

 電話をしてもいい? と麗空からメールが来たのは、夜の二十時過ぎだった。夕飯も食べお風呂に入り、宿題を途中までやっていた翔惟は直ぐに「構わないよ」と返事を送った。すると、すぐに麗空から電話がかかって来た。

「君が話す事で、俺が呆れるなんてことないさ。そう言えば、最近少し様子がおかしかったね。何かあった?」

「翔惟に隠し事は出来ないわね――ええ、そうなの。実は、同じ夢をずっと見ていて、困ってるの」

 『ずっと同じ夢を見る』という言葉に、翔惟は小さく息を飲んだ。

「同じ夢……?」

「何だ、そんな事かって思われても仕方ないんだけれど……気になって仕方ないの」

 電話口の麗空は、本当に困っているような声音だった。

「まさか、古代ギリシャの夢を見ている……なんて言わないよね?」

「それよ! どうして翔惟に分かるの?」

 自分も同じ夢を見ている翔惟は、まさかと思って自分の夢を口にした。麗空は、すぐにその言葉に反応した。


 ――まさか。麗空は、俺と同じ夢を見てるのか?


 翔惟は、広げていた宿題のノートを閉じた。宿題の片手間の会話ではない。その代わりにタブレットを開いて、自分の夢の記録を開く。

「女性二人と男性二人。戦いがあって、よく覚えていない人物と戦っていた。英雄(イロアス)と呼ばれたリュコスの戦士は赤髪の男性、ヴロヒの乙女は白に近い銀のロングヘアの女性、レオーンの戦士は金髪、プテリュクスの戦士は茶色の髪をポニーテールにしている……違うかな?」

「そう、同じ夢だわ! その夢をあなたに相談したかったのだけど、いつも忘れてしまっていて……」

 驚いた麗空は、彼女らしくない慌てたような声を上げた。翔惟はそれを聞きながら、夢がやはり前世と何らかの関係があると確信した。「麗空の話」とページを作り、彼女の話を聞く事にした。

「麗空の見た夢の話をして貰えるかな?」

「ええ、少し長いけど……聞いてね」


 それから麗空は、自分が小さな頃からその四人が自分と同じように成長していく夢を時折見ていた話をした。これには、翔惟も少し驚いた。自分は、あの戦いの夢しか見ないからだ。


「私は、その戦いの最中ヴロヒの乙女に崩れかけた宮殿の一部が落ちて来るのを最後で夢が終わるの」

「そうか――俺は、ヴロヒの乙女を庇おうとして覆いかぶさるリュコスの戦士が最後で、目が覚めるよ。まさか俺達が、その生まれ変わりって事ないよな?」

「……生まれ変わり?」

 翔惟の言葉に、麗空は怪訝そうな声音になる。

「でも、私の視線は(そら)からだわ。ヴロヒの乙女の視線じゃない」

「うん、俺も。じゃあ――なんで、俺たちはこの夢を見るんだろう?」

 二人はここで、言葉に詰まった。二人は夢の長さは違うが、同じ人物達が出る戦いの夢を見ている。しかし何故自分たちがこの夢を見ているのか、「意味」が分からないのだ。 


「少し、古代ギリシャの事や夢について、調べてみるよ。二人が似たような夢を見る偶然はあるかもしれないが、()()()()()()()()()()()()()に見るのはあまりにも不自然だ。何か意味があるはずだよ」

「そうね――私も、お父様に知り合いの夢について研究している方に、一度連絡してみるわ。私、こんな映画を観た記憶も、本を読んだ事もないもの」

 今の状態で、何の知識もない二人が話し合っても答えが出ない。頭の回転が速い二人は、お互いそう悟り手分けをして意味を探すことにした。


 電話を終えると、翔惟は深々と息を吐いた。まさか、自分を悩ませてていた夢を麗空も見ていたとは思ってもいなかった。彼女と出逢ったのは、まさかこんな因縁があったからなのだろうか?

 一度落ち着こうと珈琲を淹れて、ブラックのままそれを飲み干す。そうして残っていた宿題を片付けて、ベッドに横になる。

「まずは夢診断でも見てみようか」

 そう思いタブレットで検索するが、何をキーワードで調べればいいのか分からずに早々と諦めた。

 仕方ない、今日も夢を見るのか確認してから――明日、図書室にでも行ってみようかな。そう思い、翔惟は眠りについた。


 しかし。その日は、違う夢を見ていた。


「カイロス――探すの」

 夢の中で、プテリュクスの戦士が倒れているリュコスの戦士に囁いていた――まるで、誰かに聞かれないように小さく。

「アリスタイオスを探して――あいつを、倒すの。これは、あなた達にしか出来ない。アリスタイオスは記憶を強く封印されて、アンジェリキに関わればあなた達が集まる前に異端者(エレティコス)に知られてしまう……あなたにしか頼れないわ。お願いよ……」

「ディミトラ……俺は、アリスタイオスを探せばいいのか?」

 夢に中で、翔惟はリュコスの戦士に代わってそう尋ねていた。翔惟は、プテリュクスの戦士が「ディミトラ」という名前だと()()()いた。

「そう――そうすれば、私が迎えに行くわ。あなた達の故郷――「オモルフォス」を救って……」


 いつもと違い、目覚めは悪くなかった。ベッド脇で充電していたスマホを手に取ると、SNSで「アリスタイオス」と入力した。

 関係ない言葉や似た単語が数件ヒットしたが――その中で、夏の日差しに誇らしげに咲いているひまわりのアイコンのコメントを見つけた。


 『リュコスの戦士、ヴロヒの乙女、レオーンの戦士。知ってる人いますか?』


 それだけの書き込みだ。ハッシュタグに、アリスタイオスに名も使われていた。もしかして、違うかもしれない。だが、麗空の時のように四人の二つ名が全く同じ事が、確率的に偶然と呼べないからだ。


「夕方、メッセージを送ってみよう」

 翔惟はスマホを一度置くと、制服に着替えた。 この答次第で、自分たちの前に「ディミトラ」が現れるかもしれないと、半ば信じていた。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ