七話 仲間?
学校が終わり真っ直ぐ家に帰って、用意されているお菓子を制服姿のまま食べる。ありすは、両親と姉がいる。姉は大学生で、夕方からは近くのレストランでアルバイトをしている。だから、この時間まだ帰らない。母親がおやつを食べているありすに、ココアを淹れてくれた。
「ママ、有難う!」
手作りのドーナツを口に運びながら、ありすはテーブルにカップを置く母親に礼を言った。
「今日はロールキャベツだから、あまり食べ過ぎないでね。それとドーナツ、お姉ちゃんの分も残してあげてね」
よく食べるありすは、どちらかと言うと小柄で細い方だ。小さい体のどこに入るのか、母親は不思議に思いながらもそう一応念を押しておいた。
「はぁい」
そう返事をするありすは、もう一個を食べ終えてココアのカップに手を伸ばしている。それを眺めてから、母は軽く肩を竦めてキッチンへと戻る。
ピコン
何かの通知音だ。カップを持とうとしたありすは、不思議そうにソファの横に置いたカバンに視線を向けた。母は自分のスマホはエプロンのポケットに入れている。そうなると、鳴ったのは自分のスマホに違いない。友人からのメールかな? と思いながら、ありすはスマホを取り出した。
ロック画面を解除する。すると、あまり使っていないSNSにDMが届いているとの通知が、画面には表示されていた。
「え?」
ありすは不思議に思いながらも、画面を開いてみた。送り主は、『KAI』だ。アイコンは狼のような犬のような、スタイリッシュなイラストのアイコンだった。
『初めまして、突然失礼します。あなたの投稿を見ました。リュコスの戦士は赤髪の男性、ヴロヒの乙女は白に近い銀のロングヘアの女性、レオーンの戦士は金髪の男性。合ってますか?』
「え――!?」
「何、どうしたの?」
突然大声を上げた娘に驚いた母が、再びキッチンから顔を出した。ありすははっと我に返り、無意識にスマホを後ろ手に隠した。そうして「何でもないよ、驚かせてごめんなさい」と、引きつった笑みを浮かべた。母親は首を傾げながらも、再びキッチンに戻る。
母親の後ろ姿が消えるのを確認すると、ありすは再びスマホの画面を見直しました。見間違えではなく、確かにそう書かれていた。
そしてその文章の最後には、こうも続いている。
『プテリュクスの戦士とレオーンの戦士がどうなったか、あなたは知っていますか?』
「ぷ、て、りゅくす……?」
ありすは、小さく呟いてみる――もしかしたら、逃げたポニーテールの女性かもしれない。彼女は仲間だから、アリスタイオスは逃がしたのだ。
「もしかして、この人も私と同じ夢を見ているの?」
思いがけない連絡に、ありすは驚く。そうして、もう冷め始めてしまったココアを一口飲んだ。
「返事、そう……この人に返事を書かなきゃ」
知らない人に連絡するのは、初めてだ。先生の話の時みたいに、文通でなくてよかった。と、ありすは考えていた。字があまり上手くなくて、ガッカリされたくないからだ。
「なんて返したらいいのかな?」
ありすは悩みながら、ドーナツに手を伸ばすことなく必死に考えた。
『はじめまして、連絡ありがとうございます。ボクの呟きに気が付いてくれて嬉しいです。四人の姿は、あなたが書いてくれた通りです。もしかして、あなたもこの夢を見ているんですか? この夢に何か意味があるのか、あなたは知っていますか? レオーンの戦士達は、裏切者に負けて誘拐されました。プテリュクスの戦士は逃げて消えました』
何度も文面を見直して、ありすは深く息を吐いてから送信した。それから、スマホを握ったままテーブルに突っ伏した。
――送ってよかったのかな? なんだか、ドキドキする。もしかしたら、他の人からも連絡が来るかもしれない。ありすは興奮して赤い顔のまま上体を起こすと、スマホの画面を閉じてカバンに入れた。
本当に、ボクの前世なのかな? このメッセージをくれた人と、仲間だったのかな? あの四人と――一人の裏切者と、何か関係あるのかな?
再び手を伸ばして、二個目のドーナツを齧る。お母さんが作ってくれる、いつもの優しい味だ。それを食べていると、興奮していた気持ちがゆっくり落ち着いてきた。
そうだ、明日先生にも報告しよう。そう思いながら、冷たくなったココアを飲み干した。そうして立ち上がって、ココアのお替りを淹れる為にキッチンに向かった。
バスを降りて家へ向かう途中、音楽を流しているスマホから通知音が聞こえた。翔惟はそれに気が付くと、音楽を止めた。そうして、SNSの画面を開く。そこには自分が先ほどメッセージを送った『ありす』という、夏の日のひまわりのアイコンの人物からの返信が届いていた。
「……やっと、見つけた。ディミトラの言う通りだ」
翔惟は自分と同じ夢を見ている人物がいて、その先も知っている事に安心もした。そう、間違いなく彼だ。昨日夢に見た言葉の通り、試しにSNSで夢で「アリスタイオス」と入れて検索をしてみた――するとまさか、本当に彼の名前を見つけた。同時に、英雄と呼ばれる四人の人物を称える呼び名も書かれていたのだ。それもその投稿は、翔惟がSNSで検索をする僅か二日程の差で投稿されていた。
「麗空に連絡しないと」
一度SNSを閉じると、翔惟は麗空にメッセージを送った。
『俺達の仲間を見つけたよ。三人で、話してみないか?』




