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67 二日目:食料の買い方

 ガレットさん行きつけの肉屋にてミックススパイスと塩漬け肉のブロックを購入、更に店主から掛け紐付きの革袋を購入し経木で包んだ塩漬け肉と瓶詰スパイスをその中に入れる。


「どんな露店でもお店でも品物を入れる袋を買えるんだね」


 ナターシャは姉に近付き質問する。

 組合とか条例とかそういう縛りは無いんだろうか。


「えぇ。遠征する騎士団の為に色々と整備されたの。出発直前に至急手配しないといけない場合もあるから、さっきの市場でも、食料品店でも、商品に合わせた袋の販売を行っているのよ。値段も極力安定させるよう努力しているみたいね」


 へぇー、結構合理的な街なんだな。

 一人納得している所にガレットさんが口を挟む。


「肉と香辛料は買えたので次は塩ですね。移動しますよ」


 言い終わると歩を進めるガレット。

 姉とナターシャもその後に続き、今度は塩売り場へと場所を移す。



◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇



 食肉街の奥は十字路になっていて、三方向に伸びる道の先には職種の違う店が並ぶ。

 まぁ傍から見たらそう見えるだけで実際は同じ業種なのかもしれないが。

 ガレットさんと姉が右折したのでナターシャ達もその後ろに続く。


 次に見えて来た街は塩売り場でもあり、海産物街でもあるかもしれない。

 建物は食肉街よりも綺麗に石が積み上げられている。やはり生活必需品は儲かるのだろう。

 店頭では岩塩、海水塩の量り売りが行われていて、値段は岩塩の方が若干高い。凡そ1.1倍程。

 先ほど海産物街と言ったがその通りで、塩売店以外にも店があり海沿いで取れる魚の干物や燻製、樽詰めされた魚の塩漬け。

 他にはカイメン類の天然スポンジや珊瑚サンゴなんかを販売している。

 まぁ地中海の天然スポンジは有名だったから流石に俺でも一目で分かる。黄色くて丸みを帯び、無数の穴が開いたフォルム。正しくスポンジ。

 ……まぁそれよりも黄色くて四角くて、後ろに緑の薄くて堅いのが付いている物の方が見慣れているけど。

 そして干物だが大きさは様々。普通のアジの開きサイズから畳レベルのサイズが売られていたりする。畳サイズの干物銀貨10枚って物凄いな。買い手居るのか?


 暫く進んでいくとガレットさんが一軒の店に立ち寄る。

 どうやらここで塩を買うらしい。海水塩は売っておらず、岩塩を専門に扱う店のようだ。


「店主さん、このピンクの岩塩を300g下さい」


 サッと見ただけで何を買うか決めるガレットさん。鑑定眼スキルでも持ってるんですか?

 革袋に詰められた塩を小銀貨数枚と交換で受け取る。

 塩は麻袋の方に入れるようだ。


「さて。最後に残りの日数分の食料と嗜好品を買わないといけませんね。来た道を戻りますよ」


 と言い、また歩いていく。テキパキしてるなぁ。



◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇



 来た道を戻り十字路を南に進んだ所。

 建物の見た目は相変わらず石で変化は無いが、売り物がガラリと変わる。

 乾燥・燻製肉は軒先に吊るされていて、豆、小麦、砕いた欠片みたいな穀物は麻袋に入れて量り売り状態。他にも各種雑穀が販売されている。

 店の中には棚があり、そこに乗っている大きなガラス瓶の中には葉っぱや何かの種、トウガラシっぽい物……多分香辛料やハーブだろう。更にはドライフルーツらしき物が入っている。

 名前を付けるなら穀物街?それとも雑貨街かな? まぁいいや。


 街で買い物をする人も何処か雰囲気が変わっている。

 ある人は店前に出されている値札を見て紙に記録しては移動……を繰り返し、ある人は店主に値切り交渉を行い、ある集団は騎士団の使いだと名乗ると砕いた穀物を購入し……へぇ、それロールドオーツって言うの? 初めて知った。

 そのロールドオーツを袋買いして行ったり、という形。

 もしかして旅の食料を補充、購入するエリアなのかな。つまり糧食街。


 少し先に進むと変わった商品を売る店が増えてきた。

 白や赤の紙を巻き、その上から蝋で包んだ四角い物体が積まれていて、一つ小銀貨1枚から高い物は6枚。

 安い物では銅貨3……の隣の文字が読めないけど予想では10の位だから30枚辺りだと予測。

 歩を止めたガレットが後ろを向き、ナターシャに話しかける。


「ではナターシャ。貴女の仕事のお時間です。6日分の食料を買い揃えて行きましょう」


 ナターシャは露骨に嫌そうな顔をする。

 やだなぁ、俺まだ7歳ですよ? そんな大層な仕事出来るわけないじゃないですか。


「嫌そうな顔をしない。これも勉強です。指摘や注意をしてあげますからまずは適当に選んでみて下さい」


 適当にって言われてもなぁ……

 ナターシャは辺りを見渡し、やはり気になる蝋で包まれた四角い物体を指差す。


「あれはどうです? ……というか何ですか?」


 その言葉を聞いてガレットは説明を始める。


「あの紙に包み蝋で回りを固めた物体はショートブレッドという日持ちのする堅いクッキーような物を梱包したものです。普通の品は小麦粉・水・バター・塩で生地を作り二度焼きした食べ物ですね。食感はボソボソとしていて、味は塩味の強くて甘くないビスケットのような風味です。安い物はカサ増しでライ麦粉やジャガイモ、酷い物では野菜クズや魚粉なんかを混ぜてあります」


「……見分ける方法はありますか?」


 何と言うか失敗する予感しかしないので一応見分け方を尋ねる。

 その問いに姉のユーリカが答える。


「今のナターシャには騎士団の使いっていう大義名分があるから大丈夫よ。買う前にまず使いであると宣言しなさい。使いである事の真偽を問われたら番地を言って届けて貰えばいいの。……もし粗悪品を掴まされたらその街の守衛所に駆け込みなさい」


「成程?」


 そういう感じなのね。

 ナターシャはとりあえず最初に目に入った店に行く。

 店はショートブレッドの箱以外には棚に香辛料、ロールドオーツ、乾燥豆や乾燥肉が販売されている。

 こじんまりした感じの店だ。店先に店主が居て、近くに羊皮紙の入った棚がある。


「いらっしゃい」


 店の前に椅子を出し、暇そうに座っていた店主が近付いてきたナターシャに話しかける。

 ナターシャは困惑しながらも話す。


「ええと、騎士団の使いの者です。ショートブレッドを買いに来ました」


「……ホントに騎士団の使いかい?」


「は、はい。男性用宿舎、6号の201号室の方に頼まれました。商品は会計の後にそちらに届けてください」


「……分かった。個数は?」


 それを聞かれてナターシャはガレットさんを呼ぶ。


「どれくらい買いますか? どの値段の物を?」


「ショートブレッドは一箱で1食分になります。取り合えず4人3食4日分で48セットですか。値段は……店主さん。添加物無し、小麦のみの物は幾らですか?」


「小銀貨1枚。」


 ガレットの問いにぶっきらぼうに答える店主。


「ではドライベリー入りは小銀貨2枚ですか?」


「そうだ。砂糖、蜂蜜入りも同じ値段。それの組み合わせで4枚。全部入りで6枚だ。品質は保証するが値段は変えん」


 店主が若干不機嫌なのは多分騎士団絡みだからなのかも。

 値段ボレないからかな。怖い。


「だそうですナターシャ。極力安値に抑えて適当に買いなさい」


 上手く情報を引き出すガレットさん。父の言っていた見習えとはこういう事なのだろうか。

 ナターシャは言われた通りに選択する。


「じゃあ……添加物無しを24セット、蜂蜜入りを12セット、砂糖入りを12セット下さい」


「……分かった。合計で金貨3枚と銀貨12枚だ。ちょっと待ってくれ」


 店主は椅子の隣にある棚から羊皮紙を取り出しショートブレッドの注文個数・日付を記入。

 書きやすいよう棚の上に置き、羽ペンをナターシャに渡す。


「じゃあこの用紙にサインしてくれるか」


 どうやら発注依頼書らしい。ナターシャは羽ペンを受け取りフルネームでサインする。

 店主も確認し棚の中に戻す。


「よし、会計だ。もう一度言うが、まけんぞ」


 分かってるよ……ホラ。

 ナターシャはリュックから金貨を取り出し4枚手渡す。


「確かに。釣りは銀貨8枚だ。確認してくれ」


 店主はナターシャにお釣りを手渡す。しっかり8枚。

 ナターシャは腰の巾着袋に戻す。


「他にも買いたい物はあるか?」


 ナターシャはガレットさんを見る。ガレットさんは首を振る。


「いえ、これで十分です。ありがとうございます」


「ご贔屓に」


 サラッとした感じで売買が終わる。

 店から少し離れた場所でガレットが話す。


「良いと思います。添加物無しを48セット買わなかったのは賢い選択です。後必要な物は残り2日分の主食、ドライフルーツと漬物、燻製肉にエール樽、嗜好品ですか。後ここで買える物は一部の主食になりえる物と燻製肉ですね」


「ショートブレッド以外の主食は何ですか? パン?」


 ガレットはナターシャの質問に答える。


「えぇ、2日目と3日目はそれで充分です。……ですが、気分を変える為に別の物にしましょう」


「別の物とは?」


「やはりオートミールですね。美味しいですから。しかしオートミールには少なくとも数量の4倍の水が必要です。ここでオートミールを買った後、水と残りの物資を買いに商会に向かいましょう」


 そして言い切ると同時に歩き出すガレットさん。

 ナターシャの実地研修はまだまだ続く。

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