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54 一日目:求)冒険者登録とランク上げの詳細 後編

「は、はい。カッパーから青銅ブロンズはクエストのクリア回数、アイアンはクエストのクリア回数と共に一定の魔物討伐量を保持していれば自動的に昇格します。シルバー以降は昇格試験に合格しないと厳しいですね」


 受付嬢も少したじろぎながらも答える。


「分かりました。最後にカッパーランクの受けられるクエストなのですが、街の清掃や薬草探し以外に魔物討伐なども存在するのでしょうか。また、自身より高いランクで討伐依頼が出される魔物を討伐した場合、特例として昇級出来たりしますか?」


 遂にナターシャとしてではなく赤城恵として質問し始める赤城恵ナターシャ

 口調や声音が完全にサラリーマンのそれである。


「えっ!? ……え、えぇっと、はい。カッパーランクならスライムやホーンラビッツ退治などの小型で弱い魔物を討伐する依頼が存在します。

 そして元々強い方がギルド登録された場合も鑑みて、飛び級制度も用意しています。

 現ランクでの一般的な戦闘力ではまず倒せないと判断される魔物を討伐してきた場合、特例として昇級を認める事もありますが……

 現在のナターシャさんのランクなら、シルバー以上の高ランクの魔物を一体か、アイアンのランクの魔物を複数回討伐してきた場合に限ります。その場合、条件を問わず青銅ブロンズに昇級する事が可能です」


 少女にあるまじき口調と事細かな質問に困惑しながらも答弁する。


「そうですか。一気にアイアン以上、例えばシルバーゴールド、更には最高位の白金プラチナランクまで上げる事は出来ますか?」


「ぷ、白金プラチナ!? ……え、えぇっと……今の所そう言った事例は聞いた事がありません……ごめんなさい」


 受付嬢がカウンターでほぼ見えないナターシャに向かって謝罪する。


「……分かりました。冒険者ギルドの営業時間なども聞いていいですか?」


「じ、時間ですか? エンシア王国の城門の開け閉めと同時刻なので、だ、大体朝の5時から夕方5時までとなっております。それ以降、夕方5時から夜の10時までは酒場と宿屋としての営業となります。宿の受付もこの時間帯までです」


「宿があるんですね。宿泊費はいくら掛かりますか?」


「えぇと、宿屋の平均価格である銀貨4枚を目安にしています。酒場で酔いつぶれて寝た場合強制的に宿に収容され、次の日に罰金として銀貨4枚を徴収する決まりにもなっています。払えない場合はクエストのクリア報酬から天引きしていきます」


「そうなんですか、分かりました。細かな説明ありがとうございます。質問は以上です」


「い、いえ、どういたしまして。快適な国民生活をお送り下さい」


 ナターシャは姉に手を伸ばし、外に出ようと促す。

 ユーリカは困惑しつつもナターシャの指示に従って外に出る。斬鬼丸も後ろに続く。

 そんな一行に手を振り、笑顔で見送る受付嬢。彼女もまたプロである。


 そのまま冒険者ギルドの外に出て、ひと段落着いたように気を抜くユーリカ。

 ナターシャがあんなに事細かに質問するとは思わなかった様子だ。

 そんな姉に斬鬼丸が話しかける。


「少し宜しいでありますかユーリカ殿」


「……? なんでしょうか」


 ユーリカは後ろを振り向き斬鬼丸に対応する。


「その、拙者の冒険者登録もお願いしたいであります。護衛としてナターシャ殿に付いて行く身故」


 少し恥ずかしそうに兜を掻きながら話す斬鬼丸。

 ちょっと可愛い仕草だ。


「あー……そうですね。分かりました。ナターシャ、戻りましょう」


「うん。終わるまでギルドの中見回って良い?」


「駄目」


「ケチー!」


 赤城恵ナターシャは姉と精霊の間でぶー垂れながら冒険者ギルドの中に戻る。

 そんな姿を見てユーリカは安心する。


(さっきはあんまりにも大人びた感じだったから驚いたけど、やっぱりまだ子供なのね。でも、ランクを早く上げる方法について詳しく聞くって事は何かあるのかしら。

 高ランクになる特典と言えば、騎士団への配属か王家のお抱え冒険者……そうか!

 今ユリスタシア家にはクレフォリア様が居る!

 早く高ランクになって王家と関わり、クレフォリア様が盗賊に捕まった真の原因を探ろうという魂胆なのね!

 ナターシャが直々に動くという事は、組織内で相当重要視されている問題なんだわ!)


 と姉は再び妹の影の暗躍を推測しつつ、斬鬼丸と共に受付で同じ登録作業を行う。ナターシャは二人からあまり離れないようにしながら酒場の中を覗く。

 すると先程まで居なかったアジア人っぽい顔つきの男性がカウンターで酒を飲んでいた。

 見た目は壮年で、髪型は黒髪のポニーテール。日本語で言うと総髪って言うんだっけ。

 服装はザ・侍。袴に袖の広い服、としか形容できない。だって詳しく知らないもの。

 腰には大小二本の刀を差し、肩にはカッコよくマントを巻いて羽織っている。流浪の剣客ってこんなイメージだよね。

 そんな男性をカウンターの影から見守るナターシャ。男性もその視線に気付き、手に持つ茶色の液体が入ったグラスを上に持ち上げ乾杯のような仕草を取る。フゥー渋い!

 ナターシャは少し恥ずかしそうに顔を隠し退散しておく。

 眺め過ぎるのも悪い気がするからな。ゆっくりさせてあげよう。


 斬鬼丸のギルド登録も無事終わり、一行は再び外に出る。

 年会費だが今回は保留し、また後日支払う事に。食糧費がどれくらい必要か分からんからね。


「よし、これで目標の一つ目は終わりね。じゃあナターシャ、一度私の宿舎に行くわよ」


「分かった」


 ナターシャとユーリカは道の先にある内側の方の城門へと歩いていく事になる。斬鬼丸も付いてくる。

 その途中三人の警備隊と遭遇し、その中の一人がユーリカに話しかけてくる。


「ようユーリカ」


「あらこんにちわベイク。元気そうね」


「まぁな。いつも通りさ。……それで、その子は誰だ? 妹か?」


 質問しながらナターシャを見るベイク。

 ユーリカもそれに気付き返答する。


「その通りよ。私の妹のナターシャ。今日から3日ほど私の部屋に泊まる事になったの」


 ナターシャはベイクにおずおずと礼をする。


「へぇ、姉とそっくりで可愛いじゃないか。よろしくなナターシャちゃん」


 ベイクという男性は手を差し出してくる。

 ナターシャは敢えて人見知りムーブを行い姉の後ろに隠れ、警戒する仕草をする。

 だってその方が面白そうだし。因みに顔は外人補正入ってるから大体イケメンにしか見えないよ?

 傍から見れば怖がる銀髪蒼眼な美少女の姿にベイクも手を戻す。


「おっと、用心深い子だ。常に正しく猪突猛進な姉とは大違いだな」


 その言葉に目を薄めるユーリカ。


「……口が減らないわねベイク。後で訓練所に来なさい。たっぷり訓練に付き合ってあげるわ」


「おぉっと怖い。マッシュ、フライ、ずらかるぞ。美味しく調理されちまう」


 走って逃げるベイク。その後ろに居た警備兵二人も楽しそうに笑いながらそのまま小走りに去っていく。

 ナターシャは疲れたようにため息をつく姉に質問する。


「知り合い?」


「えぇ。私の同期で、今も一緒に騎士養成学校に通っている人よ。一人では大した事ないんだけど三人での連携は見事で私もよく苦戦するわ」


 指の骨をパキポキ鳴らす姉。おこなの?


「やっぱり三人相手では負けちゃうの?」


「負ける訳ないでしょ。負けたらお父様に叱られるわ」


「そうなんだ……」


 三人相手に勝てるのか……強いなお姉ちゃん。


「さ、行くわよ。明日は買い出しで忙しいんだから今日中にガレットさんに連絡しておかないと」


「はーい」


 姉に手を引かれ、ナターシャは先に進む。

 斬鬼丸ものんびりとその後ろを付いて行った。

分割した後編

冒険者ギルド関連は考察しすぎて疲れたマン

割と見直し多いので毎朝7時投稿厳しいマン

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― 新着の感想 ―
[一言] ベイク、マッシュ、フライってポテトやんけ! って思わず突っ込んでしまいました。
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