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9 魔法創造について3行で纏めろ 後編

天使ちゃんに送ってもらったマニュアル。

それは赤城恵時代に創り上げた伝説の魔導書だった!

おかしい、これは焼却処分したはず……!焦った(ナターシャ)は意を決して再びLINEを開く。

 な、なんでこの本が……!

 俺は身体の震えが止まらなくなり、逃げるようにベットの上から転げ落ちる。

 そして壁際まで自身を追い詰め、6歳児な銀髪蒼眼の幼女の姿でガクガクブルブルと縮こまる。


 ……お、おかしいだろ? あ、あの本は組織の解散と同時に焼却処分したはずだぞ?

 なんで、それとまったく同じ見た目をした本がなんでここにあるんだ……?


 俺は何度もチラ見して現実では無い事を祈るが、威風堂々として中学生特有の邪気眼オーラに包まれた黒表紙のノートが俺に現実を焼き付けてくる。

 あ、ちなみにタイトルは白マジックを使いDE〇TH NOTE風味に書いてあって……とかそんな事はどうでもいいんだよ! なんで天界に俺の黒歴史ノートがあるんだよ!


 俺は意を決して幼女な身体を無理矢理動かしベットへ再び近づきあぁクソチラチラと視界に入ってくるんじゃねぇ黒歴史!

 スマホを手に取ってLINE(神)を起動。再度天使と連絡をとる。


ナターシャ

[すみませんマニュアルの事なんですが]


天使

[はいはーい天使ちゃんだよー♪]


 フレンドリーな口調で天使さんのメッセージが来る。


ナターシャ

[これって俺が昔作ったノートですよね? なんで天使さんが持ってんの!?]


 沸き起こる感情を隠しきれずつい強めな口調で書いてしまう。


天使

[あぁそれ? 神様がめぐちゃん用のマニュアルだって渡してくれたんだよね。無くしても困らないようにコピーも取ってあるよ!]


 なんてことをしてくれたんだあの神様!

 ってかどういう経緯で手に入れたんだよ! あとコピー取るなや!


ナターシャ

[神様ってどうやって俺のノートを手に入れたんですか? それ燃やして処分したんですけど?]


天使

[あー燃やしちゃったら神様の元に来ちゃうね。お焚き上げと同じ要領だよ]


天使

[特にこのマニュアルは清めの塩とか魔術の触媒とかと一緒に燃やされたみたいだから、尚更神聖度が上がって神様の目に留まったんじゃないかな?]


 どうやら完全に忘れ去る為にと厨二病グッズに粗塩を掛けながら燃やしたのが良くなかったらしい。

 クソァ! どう処分すればよかったんだよ! 埋め立てれば良かったのか!?

でも埋めるだけじゃ誰かが掘り起こす可能性だってあるだろ! 俺は完全に消し去りたかったんだよ! だったらもう燃やすしかないだろ!


ナターシャ

[天使さんお願いがあります。そのマニュアルをコピーや本物を問わず全部焼却して破棄してください]


ナターシャ

[お願いします]


 俺は一縷の望みを掛けて天使にお願いする。頼む、せめてコピーだけでも。


天使

[えー? ちょっと難しいなぁ。このマニュアル神様が手に取っちゃったから聖遺物扱いになってるし、コピーは緊急用にって他の天使にも神様が配ってたし回収するの無理かも。]


 マジで何してくれてんのパツキン女神!? 俺をそんなに殺したいのか!

 ってか黒歴史ノート聖遺物になってるってどういう事だよ! やめろや! 本物感が増すだろうが!

 あぁもうこれは本人に問い詰めるしかない! そして神命で全削除させるしかねぇ!


ナターシャ

[神様って今近くに居ますか? 変わって欲しいんですけど]


天使

[神様? あー今会議中だから無理かな。会議が終わるのは多分1年後くらいだね]


 長すぎるだろ! 1年間も何を議論するんだよ神様!

 新世界の創造でもやってんのかよ!


ナターシャ

[そこをなんとか。LINEが無理なら電話で話し合うだけでもいいんで]


天使

[ごめんねー、今の会議ってけっこー重要な話でさ。割って入っちゃうと天罰として私の翼取られちゃうから無理かな]


天使

[それとここだけの話なんだけど、君について議論してるらしいよ。期待集まってるねぇめぐちゃん!]


 嬉しくねぇよ! 1年間も俺を議題にする必要があるならもっと生産的な話題にしろや!


ナターシャ

[せめてマニュアルのコピーだけでも処分出来ませんか]


天使

[んー無理だね。コピーでも神からの贈り物なのは間違いないし、他の天使も絶対手放さないと思うよ]


天使

[まぁでもめぐちゃんの書いた本だって言うのは皆に言っとくね! 神様にも認められた凄い人間なんだよーって!]


 やめろォォォ! これ以上天界で俺の黒歴史を広めないでくれぇぇぇ!!!!

 せめて匿名の人間が書いた事にしておいてぇぇぇ!!!!


ナターシャ

[それだけは秘密の方向でお願いします。マジでお願いします]


天使

[えー? んーしょうがないなー。分かった。2人だけの秘密にしとくね]


ナターシャ

[ホントお願いしますよ。ここだけの話とかで言わないで下さいね]


天使

[言わないってー。私これでもけっこー信頼厚いんだからっ]


 く……信用ならねぇ。天使なのにここまで相手を不安にさせるってマジなんなの。

 なんで保険として天使さんに会議後俺に電話を掛けるよう神様に伝えて、とお願いする。

 天使さんもおっけー♪と軽い口調で返し、LINEでの会話が終わる。


 (ナターシャ)はスマホをベットに投げ捨て、疲れた様子でベットに腰掛ける。幼女の軽い体重でマットレスが小さくたわむ。

 しかし1年後か……覚えていられるかな。いやこの黒歴史ノート(マニュアル)が手元にある限り一生忘れる事はないだろうな。

 手に取った“我が叡智の結晶‐魔法創造‐”を眺めて、はぁ、と大きくため息をつく。


 ……またこの本を読むことになるとは。

 禍々しい漆黒の妖気を放つその本の表紙を開き、未知なる深淵へと再び潜航(ダイブ)する。

 その中は光と闇の戦いから始まり、果ては世界の終焉、その先に待つ新天地への出立を暗示している内容だった。


 ……もうこれマニュアルじゃなくて設定資料集じゃん。魔法創造について大して書いてねぇぞ。この中から天使さん情報読み取ってたのかよすげぇな。

 机の前の椅子に座り、†漆黒の堕天使†などのキャラ紹介の中に書いてある魔法創造の断片的な情報を紙に書き上げ纏め上げ、本来のマニュアルを作り上げる。これは後でもう一度読もう。

 そして久しく読み直し、余りの設定の恥ずかしさに酔いながらも読み切った(ナターシャ)は二度と目に入らないように表紙を厳重に紐で括り(それはもうグルングルンに巻きました)、アイテムボックスの中に叩きこんだ。


 気が付けば外はもう暗く、1階では楽しく話し合っている家族の声が聞こえる。

 ふと外を見た俺は、窓に映る2つの月を眺めながら呟く。


「“満月の夜よ、その月光を聖なる剣と化し、我が前に顕現せん”……!?」


 あぁぁぁぁぁっ! つい口走った言葉にデメリットの影響の深刻さを理解する。


“1つ目。精神がめぐちゃんの中学時代に近くなります。”


 つまり俺の思考は中二病時代の精神に慢性的に影響されるって事かよ!

 くっそぉ! スキルが解放された影響か油断してると口が勝手に言葉を紡いでしまう! ホント誰か助けて! 止めてくれ!


 机の前の椅子に座りながら頭を抱えて唸り続ける俺の前で突如、それは起こった。


「……!?」


 窓から差し込む月光の光が少しづつ集まり、闇夜を照らす純白の輝きを持つ剣が出現。

 その剣は透き通っていて、すらりと伸びた刀身はまさに月の光を想起させる。


「!?」


 あぁもう新しい魔法創っちゃったよ! 月光剣創造しちゃったじゃねぇか!

 月光剣は机の上でふわふわと一定の距離を保ちながら宙を浮き、何者かが手に取るのを今か今かと待っている。

 丁度そのタイミングで、2階に誰かが上がってくる足音が。


「ナターシャちゃーん。ご飯よー」


 声からするに母親のガーベリアだ。俺を呼びに来たらしい。

 足音は次第に(ナターシャ)の部屋へと近づいてきてやべぇぞ急いで剣を消さないと……!

 俺は必至に文章を考え、一つ思いつく。


「……わ、“我が前に存在する剣よ、月光へと戻れ!”」


 剣が次第に光の粒子へと戻り、窓の外へと流れ消え去っていく……ってか消えるの遅ぇよ! 早く消えろや!

 パタパタと手で剣を仰いで光の粒子の流れを早くして消滅を早める。

 足音はどんどん近づいてきて部屋のドアをノックされてうぉぉぉぉぉぉ間に合えぇぇぇぇぇ!!!!!


「……ナターシャちゃん?」


 ギィ、とドアが開く。

 ガーベリアが姿を見せる。


「あぁ! お、お母さん! どうしたの!?」


 俺は机の椅子からバッと降りて振り向き、何事も無かったかのように笑顔で振る舞う。

 窓の外には最後の粒子が1つ、雪のようにふわふわと飛び去って行った。


「ご飯の時間だからナターシャちゃんを呼びに来たの。反応無かったから、寝ちゃったのかな?って思って。」


 ガーベリアは全然気付いていないようで、ナターシャは安心する。


「ううん、寝てないよ? ちょっと今日の洗礼の事を考えてたから聞こえなかったのかも!」


 まさか剣創りましたなんて言えないので適当に言い繕う。

 今の所普通の6歳の幼女で通してるんで。チートスキル持ってるとか言えないですよ。

 神様の警告もありますしね。


「うふふ、そうね。ナターシャちゃんもこれで魔法が使えるもんね。これから魔法の訓練頑張るんでしょ?」


 軽く握った手で口元を押さえ、微笑みながら話すガーベリア。長い銀色の髪がゆらりと揺れる。

 いやぁ、美人だからホント様になるなぁ。神様にも負けてないわこれ。


「う、うん! 私いっぱい勉強して訓練して、凄い魔法使いになるよ!」


「ふふ、私もナターシャちゃんが凄い魔法使いになるのを応援してるわね。」


 じゃあ行きましょう? という母親の言葉にうん! と頷いて(ナターシャ)は部屋を後にする。

 机の上にはナターシャが書き上げた1枚のマニュアル。

 扉を閉めた風圧でふわっと浮き上がり、月光の当たる机の端へとその場所を移した。


 月光の元に浮かび上がる文章は異世界の文字。分からない閲覧者の為に特別に要約しよう。


 魔法創造。

 現在の真名は魔法創造(厨二)。スキル:厨二病がLv10を超え、Ex進化した物。条件を満たせば(いず)れ真の魔法創造へと姿を変える。

 デメリットがあり、1つは思考が“我が叡智の結晶‐魔法創造‐”を創り上げた際の精神へと引っ張られ、影響されるという事。意識を強く持っていれば引っ張られる事は無い。


 2つ目は魔法を創造する際にカッコイイ(長いので要約)文章で創らないと魔法として認識されないという事。ただ例外がいくつかあり、他人が素晴らしいと認めた場合は魔法として認可されたり、爆炎や氷獄などの単語は小型魔法に分類されるなど、活用範囲は幅広い。


 3つ目は心で唱える事で魔法として起動する事が可能。しかし規模、威力、精度が著しく減少する。魔法を詠唱するという事は神聖な儀式であり(以下略)

 単語魔法を無詠唱で使う事も出来るが、威力がかなり減衰される。(詠唱単語が下の中なら、無詠唱単語は下の下。)


 魔法創造は神すら殺し、時間逆行(タイムトラベル)の可能性をも秘めた究極の力であり、当然ながらそれ相応の代償が発生する。

 これを持つ者の人生にはとてつもない苦難が待ち受けているだろう。


 With great power comes great responsibility.(大いなる力には大いなる責任が伴う)――――


 だけども彼らスーパーヒーローと違う点は、この魔導書の作成者がHAPPY_END以外認めない人間だったという事だけだ。(原文ママ)


黒歴史ノートと様々な魔術グッズを火にかけて塩を振りかけて灰にすると神様の元へ届くらしいですね。

つまり赤城恵は元の世界で既に魔法を使っていたという事になりますね(適当)

ようは元々魔法を創る才能があったという訳ですよ。


そして設定開放して的確に視聴者の心にダメージを与えていくスタイル。

たまに6歳の幼女とか文章に入れとかないと主人公が男に見えてくる不具合なんとかしたいですねー


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― 新着の感想 ―
[良い点] おもしろー!!! 中二病設定良きですね♪ 元男なのに可愛ゆし! あと序盤の中二呪文詠唱のルビ良かったです!笑
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