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世界の平和より自分の平和  作者: 三ツ葉きあ
第四章『味方の中の』
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第三十五話『青い人』―1




 “青の四天王”とは、ユウヤが「かっけーから」と言って名付けた肩書だ。そのままな気もするが、それを、考えた本人に言ってはいけない。

 ユウヤは所謂(いわゆる)、中二病というやつなのかもしれない。彼が『カッコイイ』という理由で四天王に強いた事柄は、たくさんある。色違いのオーバーオールにしても、そうだ。


「いや……クソダサイよ……」


 シンジは声に出して毒づいた。こんな事、《天神と虎》の中で言おうものなら、ユウヤによって瞬殺されているところだ。だが、彼は今、そこに居ない。


「自由って素晴らしいなぁー」


 解放感に浸っているが、あの用心深いユウヤの事だ。盗聴器の一つでも仕掛けているかもしれない。シンジはお口チャックの気持ちで、口を(つぐ)んだ。何故か背筋まで伸びる。

 新幹線の中で“かしわめし”を食べたので、腹は満たされている。


 カタカタとキャリーケースを引っ張って、シンジはユウヤに告げられたホテルへ向かう。ユウヤは新幹線だけでなく、ホテルも手配してくれていた。

 行動力はスゴイんだよね、と誰にというわけでもなく、ひとりごちる。


 シンジは《天神と虎》の四天王になって、日が浅い。超能力も、持っていない。四天王の中で最弱だ。イツキが新人を連れて来た時には、本気で辞めさせられるのかと思ったほどである。

 そんな彼が、何故《天神と虎》の四天王に居座る事が叶っているのか……。シンジ自身も言っていたが、彼は《天神と虎》の稼ぎ頭とも言える。もやし炒めしか食べられない連中とは、違うのだ。

 超能力も持っていないシンジが、何故《天神と虎》に居る事に拘るのかというと、理由は色々あるが、


「はぁー。早く世界征服したいなー」


 という思いが大きい。


 シンジは世渡りが上手い。本能的に、強者につく。ユウヤは、シンジが知る限り一番の“強者”だ。現時点では腰巾着にすらなれていないが、ユウヤについていれば、彼が世界征服を果たした時に優遇されるという確信があった。

 シンジも、本気で“世界征服”が出来ると信じている狂人(ヤバイやつ)だ。厳密には『(ユウヤ)なら、世界征服くらい出来るんじゃない?』と本気で思っている、狂人(ヤバイやつ)

 実際、ユウヤの能力の危険性を目の当たりにしてきたシンジだ。シンジはユウヤの懐に入り込んだ方が有益だと判断し、今に至る。持ち前の野次馬根性が後押しした結果でもあるかもしれない。


 ホテルのフロントでチェックインを済ませ、部屋へ向かう途中、大学生くらいの女性二人組に、声を掛けられた。小走りで、シンジの元へやって来る。


「あの、すみません。タレントさんですか?」


 頬を赤らめて言う女子大生のA子さん(仮)に、シンジは笑顔を向ける。少し顔を傾けた時に、フローラルな香りがほのかに舞った。


「いいえ。芸能活動は何も」


 ふんわり笑って、失礼します、と立ち去る。背後では、女子大生のB子さん(仮)が「何であんなイケメンなのに、クソダサオーバーオール着てるんだろ」と疑問を投げ掛ける声がした。


(そんなの、ボクが訊きたいよ……)


 女子たちの気配が消えてから、シンジは肩を落とした。

 せめて、四人色違いのスーツなら良かったのに――と。


 シンジが四天王になった時には、既にオーバーオールが浸透していたので、異論は認められなかった。

 この《天神と虎》の制服ともいえるオーバーオールは、ジーンズに使われるデニムと同じ、綿の厚地織布で出来ている。ジーンズは元々、作業着という事もあり、頑丈だ。


 マヒルとユウヤ、そしてイツキが《天神と虎》を立ち上げた際に、倉庫市で白いオーバーオールを安く大量に手に入れたらしい。四天王が着ているものは、後から染めているのだ。と、シンジは聞かされている。

 因みに、洗って色落ちしたら四天王自らが染める決まりだ。


(庶民的。ボクは嫌いじゃないけど)


 自分の泊まる部屋に着き、ベルマンから荷物を受け取り、カードキーで中へ入る。広くはないが、白を基調とした清潔な印象の部屋だ。

 シンジはシングルベッドに体を半分沈ませると、ゴソゴソと衣類を脱ぎ散らし、そのまま夢の世界へ旅立った。




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