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戦い済んで

 ダマテンでヤマトを飛ばしたユウとの間に緊張が走った。


 しかし状況はさらに変化する。

「なんだいユウ、お前もあーんをしてもらいたいのかい? ほら、あーん」

 次の席順が決まった直後に、エミリアが自分の昼食を手に、ユウの左隣に座った。

 そしてユウの口元に一口から揚げを差し出したのだ。


「ヤマトは寿司は好きか。そうか、それじゃあ、あーん」

 いつの間にかヤマトの左に陣取ったリザも、茶巾寿司をヤマトの口元に運んだ。


「美味しいです!」

「美味いっす!」


 こうなると二人は俄然やる気が出てくる。

 互いをつぶし合うというマイナスの思考ではなく、横で応援をしてくれている熟女たちにいいところを見せようというガッツが。


「ロンだユウ」

「ヤマトはさすがだな。ほら、から揚げも旨いぞ」

 感心したような表情でリザがヤマトの口元にからあげを運び、やっとリザのおっぱい攻撃を冷静に堪能できるようになったヤマトは、それをあーんしながら実力を発揮し始める。


「悪いねみんな、ツモだよ」

「見事な引きだねえ。ほら、カボチャの素揚げも体にいいからお食べよ」

 一方のユウも、エミリアの大人接待を楽しむ余裕が出てきたのか、少なくともエミリアにカボチャの素揚げを食べさせてもらいつつ自分の手牌には目が行くようになった。

 

 そうして頑張るとお姉さまたちからご褒美がもらえると気づいたユウとヤマトだったが、初戦のど素人のような振り込みっぷりから一転してまったく振り込まなくなった小町と千里に対しては、何ら疑問を持つこともなく、男二人で互いの点棒を取り合いながら、ジリ貧で局を進めていったのである。


 時計の針はまもなく十六時。

 場は親が小町、続けてヤマト、ユウ、千里の順。


「明日は雨が降るかもなの」

 突然小町が天気の話題を振り始めた。 


「傘を用意しなきゃね」

 千里も小町に同調するかのように言葉を重ねる。


 続けて洗牌。

「これもどうだい?」

「いただきます」

 エミリアがユウの口元に、三時のおやつ代わりにアリスが用意した一口チョコを差し出す。


「ヤマトもどうぞ」

「あ、どうもです」

 同時にリザもヤマトの口元にチョコレートを差し出してやった。


 この間、ユウとヤマトの視線はそれぞれが山を積んでいる卓ではなく、隣の美女に向かってしまった。

 続けてサイコロを振る番。

 ところが今度はユウとヤマトの耳にとんでもない悲鳴が届いてしまった。


「ゲンボクちゃん、ダメ!」


 反射的にユウとヤマトはゲンボクとアリスがいる隣の食卓に顔を向けてしまう。


「二なの」

 などという小町のさいころの目よりも、今はそっちの方が大事だ。


 二人の目に飛び込んだのは、ブラックタイトスカートで正座したアリスが、膝枕をしたゲンボクの耳掃除をしているところだった。

「動いちゃダメですよゲンボクちゃん」

「だって痛かったんだもん。もっと優しくしてよアリス」

 二人の会話に唖然とするユウとヤマト。


 なので当然、

「二だよ」

 などという千里の声は耳に届かなかった。

 

 次に配牌。

 気を取り直してそれぞれが千里の山から小町の山に向かって配牌を取り始めた。

 

「あれ?」

 小首をかしげる小町。

 

「どうしたの小町ちゃん」

「なんだい、もしかしたらアガっているのかい?」

 ゲンボクとアリスのイチャイチャに気を取られてしまったユウとヤマトは、その場を取り繕うかのように冗談を飛ばす。

 しかしそれは冗談ではなかった。

 

「あがっているの。天和テンホウなの」

 それはこの日の勝負終了を告げる一言だった。

 こうして約束の十六時を迎えた。


「それじゃ帰ります」

「今日はありがとう」

 ユウとヤマトは玄関に向かう。


「おう、また遊んでやってくれよな」

「こんな格好で失礼しますね」

 ゲンボクは膝枕のまま。

 アリスもゲンボクを膝の上に乗せて耳かきをゲンボクに刺したまま。

 だが、その方がユウとヤマトにとってはありがたい。


 なぜなら玄関でエミリアとリザに見送られた後、小町と千里が車まで二人の手を引きながら送ってくれたから。

 二人はゲンボクの視線を気にすることなく、最後にJCとJKの手の感触を楽しんだ。


「また遊んでほしいの。あ、ジュースありがとうなの!」

「また来てよね! 今度は違うゲームもしようよ!」

 

 農道を降りていく彼らに向かって手を振る二人のお見送りは、ユウとヤマトを満足させるには十分すぎるものであった。


 それは帰りの軽自動車の中でのユウとヤマトの会話。

「麻雀、負けちゃったね」

「ああ、ケツの毛を抜かれたな」

 結局ユウとヤマトは仲良く三万円ずつ負けた。

「最後の天和、まさかとは思うけれど『二の二の天和』じゃないよね」

「まさか」

 ヤマトの否定に当のユウも同意する。

 ど素人の小町と千里が、そんなコンビ打ち最高峰の積み込み技を使いこなせるわけがないのだ。

 漫画の世界じゃあるまいし。

 

 しばらく無言が続いた車内で、まずはヤマトが声を発した。

 

「なあ、ユウ」

「なんだいヤマト」

「実は俺、今日は負けた気にはなっていないんだ」

「なんだ、ヤマトもそうなのか。実は俺もなんだ」


 確かに二人は麻雀には負けた。

 そして三万円ずつ置いてきた。

 ただし、物は考えようなのだ。


 今日は朝十時から夕方四時まで六時間、ニューゲンボクハウスで過ごすことができた。

 いきなりの目の保養から始まり、小町と千里の喜怒哀楽を堪能し、アリスの手の感触を堪能し、エミリアとリザのお色気を堪能しながら。

 昼食もこれまで食べたことがないような美味しいものだった。


 ユウとヤマトは考える。

 今日の出費は六時間で三万円。

 これは時間あたりにすると五千円だ。


 女性は五名、しかもどの女性も個性たっぷりの粒ぞろい。

 さらにロリ系二人の美少女はチラリズムと楽しい会話付き。

 セクシー系の美女二人は胸と太腿の接触サービス付き。

 正統派美女も他人の彼女にサービスされるような背徳感がたまらなかった。


 これって、その辺のキャバクラに出かけるよりもよっぽどお得ではないだろうか。

 

「なあユウ」

「なんだいヤマト」

「今度は泊りで来たいなあ」

「そうだね、お酒も飲みたいしね」

「ゲンボクさんに宿を借りる必要があるかな」

「テントを持って行ったらどうだろう」

「ところでユウはだれが良いか決めたか?」

「ヤマトこそどうなんだい?」

「難しいなあ」

「難しいよね」


 二人の会話はいつのまにか弾んでいる。

 そう、考えようによっては、彼ら二人は「勝ち組」なのである。


「また来ような」

「そうだねヤマト」

「ただし、このことは他の連中には内緒だぞ」

「僕だって美味しい思いは独占したいさ」

 こうして二人は真っ暗な農道を走り、夜の街に帰っていったのである。


 おそろいの満足げな表情を浮かべながら。

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