どうぞどうぞ
当日は自称サバゲーマニアが大挙してやってくるだろうということで、全員で早めに登庁することにした。
とはいっても、受付にはエミリア、販売所には小町と千里、そして受付後ろのちょっと偉そうな席に俺と、合計四人なのだが。
予想通りマーガレットたちは七時半には役場前に到着し、彼女を先頭に、二種類の迷彩服を着た屈強な男たちがぞろぞろと降りてくる。
さすがメリケンは車も身体もでかい。
ダッチだかタッチだか知らねえが、千里のハイ○ースよりも一回りでかい車が合計5台到着した。
これで本当にサバゲーしかやらないとしたら、こいつら頭おかしいだろ。
「ゲンボクサン、ヨロシクオネガイシマス」
石ころを見るような目つきでヨロシクといわれても何の誠意も感じないが、まあいい。
「それでは案内しますが、車はどうしますか?」
「チカクニトメタイ」
「はいわかりました、それでは誘導しますからついてきて下さい」
俺はエミリア達に後ろ手で手を振ると、車列の先頭に立ち、そのままフィールド近くまで誘導していった。
「ここからは徒歩になりますが、案内は必要ですか」
と、さも面倒くさいようにマーガレットに行ってみる。
すると簡単に釣れた。
マーガレットは「ココカラハワタシガアンナイシマス」と言い出したのだ。
恐らく彼らとしては、さっさと俺を追っ払いたいのだろう。
「わかりました、それでは昨日お送りした条件の通りお使いください」
「ワカリマシタ」
「17時になっても戻らない場合は署長に連絡しますからね」
「モドリマス」
「それではお楽しみください」
その後俺は大型車から再びぞろぞろと降りてくる男たちには興味なさげに、その場を後にした。
役所に戻ったら、誰にも見られないように念のため二階の会議室に移動する。
続けて全解除。
するとアリスとリザが俺の隣に姿を現した。
「で、どうだったリザ」
「男どもの身のこなしは本職の軍人だな、恐らくは化学班か何かだろう」
「マーガレットは?」
「あの娘は素人だ。少なくとも軍の人間じゃない」
「アリスの方はどうだ?」
「車内からは各種分析機器の反応がありました。目的は間違いなくゲンボクちゃんの予想通りでしょう」
そう、俺達は最初から自由の国の連中がこの辺りの捜索に来ると踏んでいた。
但しその手段が分からなかったのだ。
まさか軍隊が堂々とやってくるわけはないだろうし。
マーガレットは恐らく上手いこと俺達を騙したと思っているだろうが、俺達からすれば彼女達の方が飛んで火に入る夏の虫なのだ。
こうして好きなだけ調査し、少なくともこの辺に残がいは見当たらないという報告を軍の上層部に上げてくれればそれでいい。
それで俺達の平穏は担保される。
「それじゃリザ、練習の成果を披露してくれよ」
「任せてくれゲンボクちゃん」
リザが心に念じると、会議室の机上にぽんっとモニターが一つ出現した。
「それでは接続するぞ」
リザの合図と同時に、モニターに地球の姿が映る。
画面が何度か切り替わり、拡大を繰り返しながら、ある場所をズームしていく。
「お、いたいた」
そう、リザはブラックホークの一部である光学衛星との通信システムのみを出現させることに成功していた。
この成功により、これまではリザしか見ることができなかった光学衛星からの映像を皆で確認することができるようになった。
ヒントをくれたのは小町。
「千里が冷凍庫を見てオプション追加できるのなら、逆に分身の一部だけを出現させることもできるはずなの」
これは千里とリザには盲点だった。
その後リザは練習を重ね、見事光学衛星通信システムのアウトプット部分だけを出現させることに成功したのだ。
それではじっくりと観察させてもらうとしよう。
一方のマーガレットたちは、いかにもサバイバルゲームを開始するといった風情で、中央フラッグを挟んで向かい合わせに2チームが並び、隊長らしき男が最後のブリーフィングを行っている。
「調査エリアはこの地点を中心に北・東・西それぞれ10マイルまで行う。村がある南側は無視していい」
仮に鷹が村民に目撃されていたとしたら、日本政府から何らかの問い合わせが入っているはず。
しかし日本政府に動きは見られない。
ということは日本政府もまだ事態を把握していないはずだ。
機体の最終処理についてはどのみち日本との交渉になるだろうが、その前に機密部分は確実に回収もしくは徹底的な破壊を行わなければならない。
隊長は続ける。
「機体の発見もそうだが、このエリアで鷹が何らかのトラブルに見舞われたのは間違いない、それでは捜索開始!」
隊長による号令の元、隊員たちはモデルガンやサバゲーアイテムに偽装した地質分析機器などを携え、山中へと足を踏み入れていった。
さて、捜索中マーガレットは村民に怪しまれることなく時間つぶしをしていなければならない。
山奥の田舎だからと期待していなかった携帯の電波が、驚くことにアンテナ三本で通じているので、スマホいじりで暇をつぶすことはできる。
しかしそこは自由の国の民。
日本人のように、一日中部屋に引きこもっていても壊れない強靭な精神は持ち合わせてはいない。
しかし危険だからと隊長であり兄でもあるマイケルから山中に足を踏み入れるのは禁止されている。
結局何事もないまま、午前中の探索は終了した。
隊員たちは昼食前にわざとらしくサバゲーフィールドのフラッグ付近でモデルガンを撃ち合い、午前中のゲームも終了させた。
「それでは昼食後に引き続き探索を行う、それでは休憩」
隊長の号令の元、それぞれが車両からサンドイッチやらヌガーバーやらを取り出し、旨そうに食べ始めた。
「ねえ兄貴」
「何だいマーガレット」
「午後は私も山中に入っていい?」
「危険だから駄目だ」
いつもの優しい兄とはちょっと異なる雰囲気に押されるも、退屈しきっていたマーガレットは続けた。
「だって退屈なんだもん」
「ならば村役場か駐在所にでも遊びに行けばいい、顔つなぎにもなるしな」
「いやよ、なんで私が田舎臭い男や野蛮な爺さんに愛想笑いをしなきゃならないのよ」
「とにかく危険だから駄目だ」
そうこうしているうちに昼食の時間は終了してしまった。
「マーガレット、頼むからおとなしくしていてくれよ」
隊長は社内の妹に沿う言葉を残すと、隊員たちを統率するために再びフィールドの中央に向かった。
さてこちらはマーガレット。
「山中でなければいいよね」
そうつぶやくと、彼女は兄貴たちが山中に消えたのを確認してから、冷蔵庫からコークのペットボトルとチョコバーを取り出し、さらに山奥に続く道沿いを登ってみることにした。




