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意気投合

 翌朝のこと。


 珍しく最初に目を覚ましたのは俺、それと隣のアリス。

 その他四名はいまだ爆睡中。

 それはそうだ、麻雀の練習中に仲良く寝落ちしたのは夜中の一時過ぎだもんな。


 時計の針は午前六時を指している。

 それでは、たまには小町もエミリアもぎりぎりまで寝かせてやることにするかね。


「ほれアリス、お前もたまには手伝え」

「あの、私は何をすれば……」

「別にお前に料理をしろとは言わないよ」

 食卓の準備をしてくれればいいさ。

 ということで、本日の朝食は久しぶりに俺が担当したんだ。

 せっかくだから小町がいつも用意してくれる朝食とは趣向を変えてみよう。

 

「寝坊してごめんなさいなの」

「いけない、早く洗濯機を回さなきゃ!」 

「おはよー!」

「もしかしたらご主じ、ゲンボクちゃんが私を寝所まで運んでくれたのか?」

「おう、朝食ができているからとりあえずお前ら座れ」

「オムレツが美味しそうに焼きあがっておりますわ。ゲンボクちゃん、朝食はまだですか?」


 朝食を早く食べたくて仕方がないんだなアリス。

 そんなアリスの声を合図に、それぞれが自らの席に着いた。

 朝食に用意したのは人数分のプレーンオムレツと野菜サラダ、それからじゃがいもを細切りにしてバターで焼き上げたガレット。

 それではいただきます。


 すると小町が朝食を見つめながらこんなことを聞いてきた。

「ゲンボクちゃんは和食じゃなくても大丈夫なの?」

「なぜ小町はそう思ったんだ?」

「最初の買い物が和食に使う食材ばかりだったから」

 ああそうか。

 最初に買い物に行ったときは主に魚介類や米や味噌を買い足したんだっけ。

「俺は中華も洋食も好きだし、何より小町の料理が一番好きだ」


 この一言で、小町は顔を真っ赤にし、アリスは俺の尻をつねった。

 一方でエミリアと千里とリザは小町にお構いなしに俺の料理を美味しいとかっこんでいる。

 どうやら三人の態度に小町の火が付いたようだ。

「今日のお昼からは無国籍なの」

 それは楽しみだ。

 

 あ、そうだ。

「リザ、これをやるから手荷物をしまっておけ」

「こんなに素敵なバッグをいただいてしまってもいいのか?ゲンボクちゃん!」

 俺が彼女に手渡したのは普通のショッピングモールで買い込んでおいた「ワンショルダーボディバッグ」

 肩にかけてもいいし、たすきにして両手を空けることもできる機能性重視の優れもの。


 そうか、そんなにうれしいかリザ。

 って、お前いきなりそうするか?

「どうだ、似合うか?」

 リザの奴、早速バッグにモデルガンを括りつけやがった。

 ボディバッグが一気に物騒なシロモノになったぜ。


 ところがこの姿にすかさず反応したのがエミリア。

「ああ、格好いいねえ。ねえ、ゲンボクちゃん」

「待てエミリア」

 お願いの内容は何となく想像がつくから後にしろ。

 千里もリザの自動小銃を物珍し気に眺めてはいるが、ツボにはハマっていないようだ。

 ちなみにアリスと小町は心底どうでもいいらしい。

 それでは朝食の後片付けをしてから村役場に出勤するとしようかね。

 

「あの、私も同行させていただいて構わないだろうか」

 当然だリザ。

「お前も小役人として働く約束だから」

 ところでリザは国籍にこだわりはあるのかな?

 やっぱり自由の国人がいいのかな?

「別にどこでも構わんが、どういうことだ?」

「お前の住民票を捏造するんだよ」

 それではリザのかあちゃんが自由の国出身だったということにしておこう。


 いつものアスファルトを六人で歩いていく。

 頬を撫でる風は冷たさを増し、そろそろ冬が訪れることを示している。

 冬の対策もそろそろ考えなければいけないだろう。

 こいつらの冬服も用意してやらなければならないな。

 

 役所に到着すると、これまではアリスと小町が座っていた役場受付と販売所の席に、エミリアと千里が座ったんだ。

「アリスはゲンボクちゃんのフォローがあるから、これからは私が受付に座るとするよ。掃除の仕事が入った時は代わっておくれ」

「小町はお惣菜の仕込みがあるし、エミリアとボクのところにお掃除の仕事が毎日入るわけじゃないからね」

 へえ、ちゃんと分担を考えているんだ。


 ちなみに小町はそのまま給湯室に行ってしまった。

 今朝は時間がなかったので、小町は弁当におにぎりだけしか用意できなかったのだ。

 なので俺たちの昼食のおかずも一緒に作るらしい。

 水光熱資産の横領をいまさら気にしても仕方がないし販売所担当の役得ということにしておこう。


 それでは俺が「リザの住民票ねつ造」と「役場職員の採用稟議」をこしらえておく間に、アリスからリザに役場のざっとした業務を教えてやってもらうことにする。

 

 書類を整理した俺は、アリスとリザを伴っていつものように議員さん宅三軒と村長の婆さんのところを順番に廻っていった。


「これで職員は六人になったのかい?」

「おう村長。すげえだろ」

 ちなみに俺もさっき知ったのだが、リザは英語も使える。

 バイリンガルを採用している村役場なんぞ、そうそうないからな。


「そうかいそうかい。他の娘たちも頑張ってくれているみたいだから、冬の賞与はちょっと気張らないといけないねえ。ゲンボクや、事前に金額を計算してあたしのところに持っておいで」

 村長はうれしいことを言ってくれる。


 そうか、六人前の給与と賞与を計算することになるのか。

 我が家は「収入二人分ダブルインカム」どころか「収入六人分セクスタプルインカム」ということになる。

 村役場といえど公務員六人分の収入って、よくよく考えてみるとすごいことだなこれは。

 

「まさか私も村役場で雇用していただけるのか?」

 どうやらリザは村役場から他の仕事を斡旋あっせんされると思っていたらしい。

「そうだ、今日からお前も天狗村役場の小役人だ」

 リザの表情がぱあっと明るくなった。

 こいつはこんな素直で可愛らしい表情もできるのだな。


「それでは給与もいただけるのか?」

 リザの質問にはアリスが割って入った。

「私たちは全額ゲンボクちゃんにお渡ししておりますけれどね」

「そうなのか」

「全額渡したくないというのでしたr、家賃と共益費並びに食費の計算は済ませておきますから、いつでも私に聞きなさい。別に別居してもかまわないのですから」

 なし崩し的にアリスが我が家の財務大臣と化している。

 確かに最近は通帳の消込やクレジットカード使用金額のチェックもお願いしちゃっているから当然と言えば当然か。


「いや、私も全額ゲンボクちゃんにお渡しするとしよう、ただ……」

 もしかしたらモデルガンの代金についてかな?

 ところが今度はアリスがリザに対してフォローをいれた。

「全額お渡しするのであれば、貸し借りをいうのではなく、ゲンボクちゃんにおねだりすればよろしいのです」

「そうなのか?」

 そうなのか?

 リザの声と俺の心の声が一致しちゃったよ。


 まあいいか。

 アリスは得意げに俺の左腕に絡みついてきたし。

 ここで小町達ならば空いた右腕争奪戦になるのだが、リザはまだ躊躇しているようだ。

 それでは役場に戻るとしよう。

 

 リザはとりあえずエミリアのサポート担当ということにして、受付の隣にもう一つ机を用意することにした。

 その後ろに俺とアリスの席を新たに設置する。

 販売所はこれまで陳列台として使っていた事務机を取っ払い、大きめの会議テーブルを二階の会議室から降ろしてきた。

 これなら普段から小町と千里が並んで座れるし、お惣菜以外にも商品を並べることができる。


 今日のお惣菜は「自然薯と青海苔のお焼き」だそうだ。

 自然薯をすりこぎでトロトロにしたものに調味料と青海苔、さらに別に小さなサイコロ状に切っておいた自然薯を混ぜいれ、油をひかないで両面をこんがりと焼いたこの料理は、冷めてもおいしく食べられる。

 青海苔の風味もいいし、途中で加えられた自然薯ののサクサク感も楽しい。


 ちなみに自然薯は山の手入れついでに爺さんたちがたくさん掘ってきたので、まだまだたくさんあるとのこと。

「これが今日のお昼のおかずなの」

 しばらくは山芋三昧を楽しめそうだ。


 昼食は鮭と梅のおにぎりに味噌汁と漬物、そして自然薯と青海苔のお焼きを六人で囲む。

 目の前のおにぎりを真剣に見つめた後、おもむろにほおばり、その度に幸せそうな表情を見せるアリス。

 テレビの特集に釘付けになりながら、美味しそうにお焼きを口に運んでいるエミリア。

 どこから引っ張り出したのか、古い麻雀雑誌の「次に何を切る」を前にして、二人して勝手なことを言い合っている小町と千里。

 これがいつもの風景。

 そして今日からそこに、すっかり漬物のファンと化したリザが、たくあんをカリカリやりながら、エミリアのテレビ解説を熱心に聞き入っている風景が加わった。

 本当に面白れえなこいつらは。

 

 リザもアリス達とすっかりなじんできたようだし、そろそろ彼女に聞いてもいいかな。


 なぜブラックホークは堕ちたのかを。

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