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サウザンド ローズ ~転生侍女は、推しカプの尊さを語りたい~【番外編16「『時のはざま書店』にようこそ」完結☆】  作者: 壱邑なお


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侍女の日記8

 ◇◇◇

 ご無沙汰してます、ユナです!

 いやはや、危ない所でした。

 まさか、まさかわたしの知らない間に、『ケネスルート』が、始まっていたなんて……!


 ケネス・パンテラのモデル(推定)は――とにかく歌の神様に愛されている、自信のかたまりの俺様キャラ、でも小動物と子供には甘々の――4番目に年長のメンバー。

 ケネス自身は、前世でいうイタリア出身で、まだ赤ちゃんの頃に、家族でサウザンド王国に移住。

 父親と同じ料理人の道を選んだけど、オペラ歌手になる夢を、ずっと抱き続けていた。


 そんな時に、シャーロット様と出会い、恋に落ち、ついには二人で祖国に駆け落ち。

 ケネスは歌手として舞台に立ち、大成功を収める……という、中々胸を打つストーリー。いやいや――! 『ウィルフレッド様ルート』には、かないませんけど!(鼻息)



 ウィルフレッド様といえば――わたしが、お嬢様のエプロン姿に見とれているとき、ダダダッ……と、大きな足音が響き、モーニングルームに駆け込んで来たのは、兎穴の領主様でした。

「ウィル、フレッド様――なにかございましたか⁉」

 ただならぬ様子に、あわてて二人で、中に入ると


「シャーロット……」

「はい――! 何でしょう⁉」

「……ずるい」

「はい?」

 きょとんとした、お嬢様の肩を、両手で掴んで


「ずるいよ――そんなに可愛い姿を、まだ隠していたなんて!」

「あの……きゃっ!」

 ぎゅっと抱きしめてから、そっと身体を離し、まじまじと見つめて


「可愛い……」

 口元を右手でおおい、天をあおいで、感動に耐える領主。

 わ・か・る。

 頬を染めてあわあわと、助けを求めるように、こちらを見るお嬢様も、ソーキュート……


「――ぉい!」

 ほわ~っと、見とれている最中、肩をつつかれて振り返れば。

 ミカエル・ドッゴことミックが、死んだ目で、わたしとウィルフレッド様を、眺めていた。



 時をさかのぼること数分前……裏庭に面した書斎(前回の事件で割れた窓ガラスは、修復済)で、せっせと書類作業をこなしていた、領主と従者。

 ふと、窓の外を見たミックが

「あれっ? 見慣れないメイドがいると思ったら、シャーロット様がエプロンを……」

 と、つぶやいた途端、あるじが部屋をダッシュで、飛び出していったらしい。


「もうっ……恥ずかしいから、脱ぎますわ!」

「そこを何とか――お願いだよ、ロッティ!」

 結局、領主の懇願に負け、しぶしぶとエプロン姿のまま、お茶を入れたお嬢様。


 カップ片手に、ご満悦まんえつの領主は、

「はい、戻りますよ! 仕事はまだ山積みですから!」

 と、そのまま従者に、連れて行かれてしまいました。

 もっといちゃいちゃ見たかったのに、残念……。



 通常のドレスに着替えたシャーロット様と、少しだけ残念そうな、ウィルフレッド様の晩餐ばんさんの後。

 使用人食堂に夕食を取りに行くと、厨房ちゅうぼうから響き渡る、歌声のお出迎えが。


『誰も寝てはならぬ、誰も寝てはならぬ――姫君、あなたも……♪』

 ご機嫌な料理長が歌う、この曲、聴いたことがある……。


 前世のバイト先のデパートでは、営業時間中にインスト音楽が、店内で流れていた。

 気に入ったメロディがあると、音楽全般に詳しい先輩に、曲名を教えてもらって、後でスマホで探して……懐かしいな。


 これは確か、呪いのかかった姫君の、三つの質問に答えて、真実の愛を勝ち取る王子――のオペラ曲。

『夜よ去れ、星よ沈め――夜明けとともに我は勝つ♪』

 あぁ、いい声だな~って……まだ全然、ケネスルート問題が、片付いてなかった!


 疲れた顔で、夕食を食べに来た、ミックを捕まえて、

「この後、時間ある? ちょっと相談したい事が」

 食後に対策を、一緒にねろうとしたら

「今日は無理――残業だから」

 あっさりと、断られてしまった。

 昼間も忙しそうだったし、仕方ないか……。



 しょんぼり、エマ達と『ローストビーフにマッシュポテトと焼き野菜の付け合わせ、クルミ入りマフィン、チーズクリームのトライフル(カスタードやスポンジケーキ、フルーツ等を重ねたデザート)』を食べていると

「何だか今日のメニュー、豪華だね!」

 ジェインが嬉しそうに、声を上げた。


「料理長、ご機嫌で歌ってるし」

「あのね――」

 エマが、声をひそめて

「キッチンメイドの友達に、聞いたんだけど……料理長、恋人が出来たらしいよ?」


「ごふっ……!」

「ユナ、大丈夫!?」

「だいじょぶ、だいじょぶ」



 そういえば『千バラ』の、ケネスとシャーロットが出会うシーンでも、ライバル(ウィルフレッド様の従姉妹)に、ドレスを汚されたお嬢様が、それを隠すためにエプロンを付けて、メイドと勘違いされたんだっけ。


 あの悪役令嬢っぽいライバル(確か『アナベラ』とかいう名前)、他のルートでも、ちょこちょこ出て来たけど……お嬢様とウィルフレッド様の恋を邪魔するヤツは、このユナ・マウサーが許さー-ん!!((こぶし)

 まぁこちらの世界では、名前すら聞かないから――許す。



 ケネス問題に加えて、『ウェディングドレス総選挙』の準備もあるし……身体があと二つ、いや三つ欲しいっす(涙)


 とりあえず、明日から頑張ろう!と心に誓って……

 おやすみなさーい。


(ユナの日記より)


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