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サウザンド ローズ ~転生侍女は、推しカプの尊さを語りたい~【番外編16「『時のはざま書店』にようこそ」完結☆】  作者: 壱邑なお


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1章 エピローグ

◇◇◇

 ボーン、ボーン……朝日が射し込む使用人棟に、6回、時計の音が響いた。


「ん――もぉ朝かぁ……」

 目をこすりながら、ベッドから置き上げる。

 奥方の間はバスルーム付だけど、こちらは個室ごとに上下水道完備――とはいかないので、水差しから洗面台にそそいだ水で、顔を洗う。


 シンプルなロングワンピのような、寝間着ねまきを脱いで、ドロワーズとキャミソールの、白い下着姿に。

 その上から、コルセットを付ける。

 お嬢様ほどきつくはしぼらないけど、綺麗にドレスを着るためには、がまんがまん。

 前でぎゅっとヒモを結び、ストッキングを膝上で留めて、ペチコートを付け、やっとドレスにたどり着く。


 新しく作ってもらった、白いえりとカフスの付いた、タンポポのような黄色と緑の、花柄のドレス。

 ハウスメイドの制服は、午前中は、屋敷内の掃除等があるので、ざぶざぶ洗える、プリント柄のドレス。

 午後は来客に備えて、黒いドレス、と決まっている。


 侍女職は上級使用人に入るので、メイド用の制服を着なくても良いのだけど、わたしはあえて、皆と同じ服装をしている。

 そのほうが距離が縮まって、『仲間』になれる気がするから。


 そういえば、お嬢様のウェディングドレスの修復は、ヘア村の仕立て屋さんに加え、針仕事が得意の、村中の奥さんやお嬢さんが総出で、手伝ってくれるらしい。

 どんなドレスになるのか――めちゃめちゃ楽しみ!



 ドレスの前ボタンを留めて、かかとの低いブーツをはく。

 鏡台に座り、淡いベージュブラウンの髪を手早く編んで、ピンでまとめた。

 せっかくなら、シャーロット様と同じ、銀髪になりたかったけど……でも自然にウェーブが付いたこの髪も、結構気に入っている。

 毛先がくるんてなって、一つにしばっただけでも、可愛いの!


 鏡にうつる目を見て、昨日の、お嬢様の言葉を、思い出した。

『あらっ――あなた達、瞳の色がそっくり!』

 ミックの緑っぽいハシバミ色と、わたしのヘーゼルナッツ。

 思わずしげしげと、お互いの目を見つめ合った。(なぜかミックは、すぐにそらしたけど)そんなに、似てるかな……?



 それにしても、昨日の『収穫祭』は、楽しかったなー!

 ナイフ投げの後、ウィルフレッド様が迎えに来たお嬢様と別れてから、また皆と合流して、あちこち見たり食べたり。

 最後にメイン天幕をのぞいたら、おばあちゃんとミセス・ジョーンズが、楽しそうにお茶を飲んでいたのにびっくり!


「あらっ、ユナ――知らなかったの? あの二人は近頃、毎日一緒にお茶するくらい、仲良しなのよ?」

 と得意げに教えてくれる、シャーロット様の左手薬指には、バイオレット・サファイアの指輪が、さんぜんと輝いていた。



「お、おおお嬢様――その指輪は!?」

「さっき、ウィルフレッド様から頂いたの」

 ほんわりと頬を染めて、嬉しそうに報告する公爵令嬢。


 ウィーズルがさがしていた、兎穴の奥方に、代々伝わる家宝。

 こちらに来る直前に、前領主夫人からゴート卿が預かり、ウィルフレッド様が受け取った後は、肌身離さず持っていたらしい。

 あんなヤツに盗まれなくて、本当に良かった!

(ちなみにお嬢様は、犯人に聞かれるまで、家宝の存在すら、知りませんでした……名女優爆誕‼)


 それよりなにより――何でその、指輪を渡す現場イベントを見逃した、わたし! 

 ばかばかばか――‼

 よしっ、今日一日かけてお嬢様から、隅から隅まで、じっくり聞き出そう!



 ぴしっとアイロンをかけた、真っ白なエプロンを付け、レースのリボンが後ろにれる、小さなモブキャップを、まとめた髪に付ける。

 鏡から見返すのは、きりっと顔を引き締めた侍女。


 これがわたし、ユナ・マウサー。



 鏡に写った自分に、にっと口角を上げて、エプロンのポケットに、ハンカチ、小さな鉛筆とメモ用の紙等が、入っている事を確認。

「行ってくるね、〇〇〇」

 枕元の丸椅子に座る、前世の子と同じ――お嬢様そっくりの『推し』の――名前を付けた、テディベアに声をかけて、部屋を出る。



「あ、おはよーユナ!」

「おはよう!」

「おはよー!エマ、ジェイン!」

 メイド仲間と笑顔で、朝の挨拶をかわす――映画ならここで、エンドロールが流れ出すシーン。


 きっとこれからも、色々な事が、あるかもしれないけど、シャーロット様とウィルフレッド様は、もうすぐ結婚式をげて、お二人はいつまでも幸せに……



 待って。


 『攻略対象者』――まだ3人も、残ってる!!



 ……それはまた、次の機会に。




(ユナの日記より)


1章完結しました。

拙いお話ですが、読んでくださって、本当にありがとうございます。

ブックマークや評価(ページ下部の☆☆☆☆☆)も、よろしくお願いいたします。

感想も、お待ちしてます。


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― 新着の感想 ―
[良い点] 第一章を読み終えて…… 正直に告白しますと、私乙女ゲームをプレイした事がありません。自分に甘く囁かれると、つい爆笑してしまうのです。 で・す・が。 ユナの目線。主人公を推しとして見る…盲点…
[良い点] 第1章までお読みしました! テンポが良くて読みやすかったです! ナイフ投げやってみたい…笑(的じゃなくて隣のおじさんに突き刺さりそう…) [一言] 続けて読みたいと思います!
[気になる点] 良いエンドロールでした(涙を押さえつつ) ミックのお株を奪うシャーロットお嬢様、良いですね。惚れてしまう。ユナのお友達として、ひそかに対抗意識を燃やしていらっしゃるのでしょうかなにそれ…
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