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サウザンド ローズ ~転生侍女は、推しカプの尊さを語りたい~【番外編16「『時のはざま書店』にようこそ」完結☆】  作者: 壱邑なお


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続大ピンチ

 時計の音を聞いた途端、さっと、マントのフードをかぶったシャーロットが、ユナをかばうように、おおいかぶさった。


 次の瞬間――ガシャン! ガシャン! ガシャーンッ……‼

 外から投げ込まれたレンガで、窓ガラスが、次々とられる。

「ひいっ――‼」

 降り注ぐガラス片から逃れようと、頭を抱えて、しゃがみ込む犯人。


 バターン!

 勢いよく扉が開いて、従僕達がなだれ込む。

 抵抗する間も無く、ナイフをもぎ取られた犯人は、あっという間に押さえ込まれた。



「シャーロット様、おケガはございませんか?」

 合鍵を、上着の内ポケットにしまいながら、心配そうに執事が、声をかける。

「ユナさんの周囲のガラスは、よけるよう、固く申しつけておきましたが」


「大丈夫よ。ユナは? ケガはない!?」

 こくこくとうなずく侍女に、ほっとしたように微笑んで

「作戦、成功ね」

 公爵令嬢は、ガラスまみれのマントを、肩から外した。



 シャーロットが、ユナの口元の布を取り、手首のヒモに手をかけたとき

「ユナッ! 無事か――!?」

 ミックが、書斎に飛び込んできた。

「うん! ごほっ……大丈夫」

 口元に残る、薬品の匂いに、咳き込みながらの返事。


 それを聞いて、眉をひそめた従者は

「シャーロット様、俺――いえ、私がほどきます」

 手首をしばったヒモを、小ぶりのナイフで、慎重に切り出す。


「ごめん……助けるのが遅れて」

「こっちこそ、勝手に行動してごめんなさい。それから……」

「ん?」

「メッセージ、ありがと――ジョン」

「えっ、俺がワトソン……!?」

 くふっと笑い合う二人を、シャーロットの紫の瞳が、不思議そうに見つめていた。



「シャーロット様も、本当にありがとうございます。でもお嬢様を、こんな危険な目に合わせるなんて――侍女失格です」

 自由になった手首をさすりながら、しょんぼりとユナが頭を下げる。

「何を言ってるの? ユナは――」

 公爵令嬢の言葉を、さえぎるように――わっ!と、部屋の奥で、声が上がった。


 あわてて三人が目を向けると、降参したふりで油断させた犯人が、従僕達を振り払い、机に飛び乗る姿が。

 ベルトの後ろから取り出した銃を、天井に向けて一発。

 ダーーンッ……‼



 何とか近寄ろうとする、周りを威嚇いかくしながら

「シャーロット、こっちに来い!」

 領主の婚約者を、興奮した声で呼ぶ。

「お前なら、隠し場所を、知ってるだろ!?」


「――何の、隠し場所ですか?」

 落ち着いた声で返す、公爵令嬢に

「伯爵家のお宝、『バイオレット・サファイア』だよ……!」

 犯人が叫んだ。



「バイオレット・サファイア……」

 軽く曲げた人差し指を、口元に当てて、少し考えてから

「もちろん、知っていますわ」

 にこりと、シャーロットは微笑んだ。


「お嬢様――行っちゃダメです‼」

「そうです、危険過ぎます! あいつは、銃を持ってるんですよ!?」

 口々に止める、侍女と従者に向かって

「大丈夫」

 にっこりと、レースで飾られた右手首を、ひらりと振って見せる。


 はっと、目を見開くユナに、ひとつうなずいて

「分かりました。今、そちらに参ります!」

 公爵令嬢は、りんとした声で、犯人に告げた。


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