表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
サウザンド ローズ ~転生侍女は、推しカプの尊さを語りたい~【番外編16「『時のはざま書店』にようこそ」完結☆】  作者: 壱邑なお


この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

15/155

乳母の暴走と謎の従者

「ドレスのそでにナイフを仕込んだのも、ジェル兄様のアイデア。ばあやに相談したら『それは良いアイデアです! 不届ふとどきものの兎がいたら、目に物見せてあげましょう!』って、大乗り気で用意してくれたわ」

「おばあちゃん……」

 知らぬ間の祖母の暴走に、侍女は今度は、両手で頭を抱えた。


「申し訳ございません、お嬢様――! おばあちゃんは若い頃、先代の領主夫人、おばあ様にお仕えしていたとき、おじい様からも、たいそう良くして頂いたらしくて」

「ばあやが結婚して、一時辞めた時。夫婦で店が持てるように、手を貸したって聞いたわ」

「はい。そのご恩故ゆえに、『兎穴=敵』と、しっかり思い込んでしまって……」

「――わたくしも、ずっとそうだと、信じてた」

 静かな声で、シャーロットがつぶやいた。



「さっきウィルフレッド様が、『村の方には、行かないように』って、言ったでしょう?」

「はい、『道が悪いから』って」

「ヘア村のお年寄りの中にも、わたくしとの結婚を、反対してる人が、多いらしいの……だからよ?」

 きゅっと辛そうに、唇を引き結んだあるじを見て、ユナが口を開く。



「実は……こちらにお供すると決まった時、わたしも少し、怖かったんです」

「ユナも?」

「はい。でも、いざ来てきみたら。ミセス・ジョーンズも、エマも、他のメイドたちも――皆さん、良い人ばかりで」

「それは――ユナが『良い子』だから、よ?」

「は……?」

 ふわりと微笑まれて、ぴきんと、かたまる侍女。


「『良い子』のユナの周りには『良い人』が、自然と集まるんだわ。皆に好かれて、すぐに、お友達も出来て……」

 だから、『うらやましい』って。


「そっ、それは……お嬢様こそ、です!」

 真っ赤な顔を上げて、ユナが言いつのる。


「エマも、他のメイドや従僕たちも皆、『あんな、おキレイで優しい方、見たことない!』って、言ってます! 村のお年寄り達だって、お嬢様のことを少しでも知れば、反対なんて……! 何より、ウィルフレッド様が――あんなにお嬢様に、夢中じゃないですか⁉」

「夢中……?」

 頬の赤みが、侍女から移ったような顔を、そっとカーテンでかくして。


「それは、勘違いよ……」

 ぽつりと、公爵令嬢がつぶやいた声は、わっと、中庭から上がった歓声かんせいにかき消された。



 何事かと見下ろすと、従僕たちが囲んだ輪の中に、ジェラルドと、一人の挑戦者が向かい合っている。

「あのひと……!」

 はっと息を呑んだユナを見て、目をこらすと確かに、見覚えのある顔。


「確か、ハルの兎カゴを持ってきた……」

「はい。あの時の、従者じゅうしゃさん――ですよね?」


 なぜか張り詰めた、ユナの口調を気にしながら、窓の下に目をやると、

 他の人が持っていた物より、倍近く長い木の棒を、両手で、斜め上に構えた姿が。


「変わった『かまえ』……初めて見たわ」

「あれは――け」

 侍女が驚いた声で、何事かを告げたとき、



「こてぇぇ……っ‼」

 奇声を上げた従者の棒が、同じように構えたジェラルドの、手首をねらって、振り下ろされた。


評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
[良い点] な、何者!??Σ( ˙꒳˙ )
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ