36話:<エヴォリューション・オブ・オールティングス>
2021/10/12 16:00公開
スキル名どうにかしたいです。
2022/8/29 大幅改稿更新
ジェニスの父、バルトンに例の建築を任せたところで、再びダークエルフの村に向かうとしよう。
スキルチェックのアイテムがあるらしいからな、俺のスキルを知るチャンスを逃すわけにはいかない。
一人で行くのは心細いので、ここは霞にも一緒にきてもらう。
霞はどこにいるか見渡すと、すぐに見つけることができた。
ベヒーモスが水を当てられて満足そうにくつろぎ、水を当ててる霞も楽しそうだ。
「霞、村に行くから付いてきてくれないか?」
「主よ、村に向かうのか」
「ああ、族長に会いに行くから、霞も一緒にきてくれ」
「わかった」
「キ」
おずおずとアトラがやってきたが……。
「すまない、アトラはベヒーモスたちとここを守っていてくれるか?」
新しく張り直された結界を、魔物であるアトラたちは通ることができない。
なのでここで待っていてもらうしかないのだが……少しアトラたちが気の毒に感じる。
だが出来ないものは仕方ない。またすぐに戻ってくるんだ、少しの間だけ我慢していてもらおう。
「キ……」
よしよし。ぽんぽんとお尻部分を軽く叩いてやる。頭よりも手が届きやすいので、触れやすい部分だ。お尻なのか背中なのかは分からないが、多分お尻部分だろう。
「アルやエリザベスたちも、作業してる人達を魔物から守ってやってくれ」
「クエッ!」
「ピィ」
二人は無難に仕事をこなしてくれるだろう。あとは――
「アスラは……寝てるのか」
目を瞑ってじっとしている。そっとしておいてやろう。多分大丈夫だ。
「じゃ、行くか」
霞を連れてダークエルフの村に出発だ。
▽ ▽ ▽
村に到着して早々に、待ち構えていたダークエルフたちに族長の家まで案内されたわけだが、俺がこなかったら、あのダークエルフたちはずっと待ちぼうけをくらっていたんだろうな……。
あれよあれよと気づけば、あの長い謁見の間にやってきていた。
昨日と違うのは、段差の上にいた二人の姿がなく、目の前に豪華な装飾が施された台座が置かれていた。
台座の高さは腰くらいで、その上にあるクッションに水晶玉が乗せられているが……水晶玉だよな? 確か霞は宝珠と言っていたが、これでスキルチェックを行うのか? 台座の隣にはシーリアが鎮座しているが、彼女が何か行うのだろうか。
なんにせよ、既にここまで用意周到とは恐れいった。
「キョータロー殿、よくぞ参られた」
「本日は私のためにご用意していただき、ありがとうございます」
族長に声をかけられてから、それっぽい返事を返して頭を下げておく。
「ではさっそく、キョータロー殿のスキルチェックを執り行いたいと思うが、よろしいだろうか?」
「はい、よろしくお願いします」
無駄話や長話が無いのはいいな。族長にはとても好感を持てる。
「それではキョータロー様、こちらへ」
立ち上がったシーリアに促されたので、俺も立ち上がって、言われるがまま宝珠の前までやってきたが……。
「この玉でどうやってスキルを見るんだ?」
「キョータロー様の魔力を流し込めば、透明な球体の中に文字が浮かび上がります」
なるほど、そういうタイプか。だが待てよ、文字って当然この世界の文字だよな?
俺は読めないんじゃないか? まぁ霞かシーリアが教えてくれるだろう。
「わかった、やってみよう」
テイムミートを作るときを思い出して手をかざすと、魔力が宝珠に流れ込んでいく。
――魔力が流れ込んだ宝珠は淡く光だし、その光が収まるとともに、宝珠の中に文字が浮かび上がった。
文字は当然日本語ではない――いや違うな、よく見ると日本語のカタカナっぽい文字だ。カタカナを崩した記号のようなデザインに見える。
一瞬で読み解くことはできないが、時間をかけて見れば読めそうだ。なんか一気に異世界っぽさが失われた気がするな……。
だが今はそんなことよりも、肝心なのはスキルだ。
数行に分かれているということは、スキルは一つだけじゃなさそうだな。
「……これは」
シーリアが目を見開いて驚いている。複数持っていることが珍しいのか?
それとも、珍しいスキルがあったか。
「シーリアよ、なんと出た」
「はい。一つ目は<クリエイト・テイムミート>、二つ目は<モンスターカーニバル>、三つ目は……<エヴォリューション・オブ・オールティングス>と出ています」
族長の問いにシーリアが答えたが、俺が持っているスキルはどうやら三つのようだ。
少ないように思えるが、俺も経験値を得て成長すれば増えるのか?
「なんだと!? <エヴォリューション・オブ・オールティングス>だと……!?」
それまで物静かだった族長が狼狽えるように立ち上がったが……何か特別なスキルか?
エヴォリューションは進化という意味だったと思うが、オールティングスってなんだ?
「間違いではないのだな?」
「はい……」
「そうか……」
再度確認して落ち着きを取り戻した族長は、難しい顔をしながら座った。
なんだこの反応、凄いのか、危険なのか、はたまた両方なのか……聞いてみる必要がありそうだな。




