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余り語られない撮影所のあれこれ  作者: 元東△映助
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余り語られない撮影所のあれこれ(91)リテイクT-5 「フィルム時代の予告編」

★リテイクT-5「フィルム時代の予告編」


●フィルムとビデオの時代

私が東映京都撮影所にアルバイトとして入ってから東映東京撮影所へ仕事場を移した80年代終わりから90年代は、一部の作品がフィルム撮影からビデオ撮影に切り替わり始めた時期でもありました。

しかし、まだまだ「デジタル化」の波は到来しておらず、以前からフィルム撮影であった現場は、それまでと同じくあい変わらずフィルム撮影でした。

でも、ビデオ撮影での撮影現場が徐々に増え始めて、フィルム撮影の撮影現場もビデオ撮影に切り替わってしまうのだろうかと薄々でも感じる時代でもありました。


そんな時代の過渡期に於いて、テレビドラマのフィルム撮影の晩年に作られた「予告編」に注目して、リテイクしてみたいと思います。


尚、例によって情報のほとんどが約30年前ですw

今となっては変わっていることや、無くなっていることもあります。また、記憶の内容が30年の間に美化されたり劣化してしまっているものも存在しますwwその点をご理解の上、あらかじめご了承下さい。

そして、ここでの意見は、あくまでも個人的な意見です。

東映をはじめとした各社や映像業界の直接的な意見ではありません。その点も予めご理解ご了承下さい。


●フィルムはコマ単位で大切

ビデオ撮影への移行期であった80年代後半から90年代と言っても、まだまだテレビドラマは、特撮番組に限らずほとんどが16mmフィルムで撮影されていました。

そんなフィルム撮影に参加する場合、私達助監督にとっては同時録音かどうかが一番の関心事でした。

それは、同時録音用のカチンコを打たなければならないのかどうかということでした。


フィルムでの撮影の場合は、フィルム自体が高いモノだし、一巻き(1本)のフィルムケースでの撮影時間は限られるしで、特に同時録音の際のカチンコのフィルムの使用はコマ単位でケチられましたw

同時録音でなければ、シーンナンバーやカットナンバーを書いたカチンコが1コマか2コマ、フィルムに映っていれば良かったので、カメラの前にカチンコを差し出して「カチンコ、お願いします」と言ってコマ撮影して貰えば良かったのです。

カメラ助手の方がピントや画角までカチンコに合わせて頂き、至れり尽くせりで本当に楽でした。

コレが同時録音になると、カチンコをカメラ前で叩いてコマ単位で直ぐに引っ込めてフレームアウトさせなければなりませんでしたし、叩き方によってはキャストのお芝居を台無しにしかねない重要な仕事でした。


一巻きのフィルムのフィート数=撮影可能時間が限られるからこそ、「後、○○分ぐらいしか残っていないから、このカットは収まりませんよ。先に短いカットを撮りますか?」といった様にフィルム残量との兼ね合いも出て来てしまうのです。

フィルム残量の調整は、予算に直結するからでもありましたから撮影可能時間を減らす「ヘタな同録カチンコ」は、イレギュラーなフィルムの「尺減らし」と考えられていました。

ですから、同時録音の際のカチンコには特に気を使いました。


●フィルム撮影のチェック

当たり前の話ですが、フィルムでの撮影の場合は、現像しなければ確認が出来ない為に、その場で撮影した内容を見直すことなどできません。

ビデオ撮影やデジタル撮影の場合は、「チェック」と言われる撮影直後の内容の見直し作業が必須となっていて、その場でチェックして撮り直しも出来ますが、フィルム時代は、現像されたものでないとチェックできなかったので、フィルム撮影ではソレが出来ないのです。


フィルムは撮影後に現像にまわされます。

ですが、現像はフィルム1本単位で行わなければならないので、OKカットでもNGカットでも一度に現像されてきました。

中にはOKだと思っていたカットが、現像してみると変なものが写り込んでいたり、被写体自体に問題があったりしてNGになる場合もありました。

ですから、NGになったカットはスケジュールさえあれば、もう一度撮り直し「リテイク」する事になります。


しかし、どんなに「リテイク」したとしても既に撮影されたフィルムは、ソレがOKカットであろうがNGカットであろうかは関係なく、二度と撮影出来るフィルムとして帰ってきません。

それに対して「ビデオテープ媒体」や「デジタル記録媒体」では「上書き」が可能でした。

本当に必要であれば「上書き保存」をする場合もありましたが、基本的には撮影現場で巻戻し等の行為を含めて「上書き保存=消去」は行っていませんでした。


●「予告編」の映像は貴重品

さて、本題の「予告編」ですが、フィルム時代の予告編は、貴重なカットの宝庫です。

本編では使われていないカットがほとんどだからです!

なぜなら、OKカットのフィルムは本編にもって行かれる訳ですから、予告編を作る段階ではNGカットのフィルムしか残っていないからなのですw


ですから、基本的には「NGカットや未使用カットの繋ぎ合わせ」が予告編ということになります。

テイクを重ねる(撮り直しを繰り返す)と、芝居が少し違うが本編とほとんど変わらないNGカットのフィルムができます。

この様なNGカットが、撮影の全編に出て来たら予告編作りも楽です。

その分、予算はパンクなのでしょうがww


という事で、フィルム時代の「予告編」の殆どは、本編で使用されないフィルムで構成される「本編の予告と云いながら本編と同じカットは殆ど無い」という不思議なモノとなっているのですw

そして、それは「本編の編集が完成してからでなければ、予告編は作成し始められない」モノであるということでもあるのです。


●NGや未使用のカットだけじゃない

「本編と同じカットは“殆ど”無い」とはどういう事かといえば、予告編は「NGカット」や「未使用カット」のみで作れるモノでもないという事なのです。


例えば、撮影に1発OKが出て、しかもそのカットが予告編的にどうしても欲しいカットの時は、現場で「予告用にもう1テイクお願いします!」とお願いする場合もあります。

基本的に予告編はセカンド助監督が編集していますから、現場で直ぐにお願いする事が出来るのですw

予告編用とはいえ本編と同じ様に撮影されますが、そもそも予告編用ですから長いカットまでは必要なく、予告編用に必要な部分だけを撮影することすらありました。


だからといって、予告編用に撮り直しする事が困難なカットもあります。

爆発等の一発撮りのカットがソレです。

予算的にも「予告用にもう一度お願いしま〜す!」なんて言えませんww

そんなカットが予告編用にどうしても欲しいとなると「コピー(複製)」しかありませんでした。

フィルム撮影は、フィルム式のアナログ写真と同じくネガを作成する形式が一般的でしたから、写真の焼き回しと同じくネガさえあれば複製が可能なのです。

金額的には、一発撮りのカットを再度セッティングして撮影し直すよりは安くなりますが、普通のカットを撮影している現場で、予告編用に撮り直して貰うというよりは高くなりますので、多用は出来ません。

ですから、予告編に光学合成カットや爆発カットは殆どありません。

もしも予告編にそんなカットがあるのであれば、たまたま爆発カットを撮り直しをした場合とかコピーとか位なのです。


●ビデオ撮影作品とデジタル撮影作品の予告

ビデオ撮影の場合は、本編用の映像をコピーして予告編用に使用できましたから、フィルム撮影とは比べるまでもなく容易に作成できました。

コピーですから、NGカットは使用されていません。

ましてや本編に使用されていないカットなどは、殆ど使用されていませんでした。

たまに、アングル違いのカットをたまたま撮影していて、更にたまたまキープしてあって、それがたまたま予告編用に使用するカットに合いそうだ。ぐらいのたまたまで使用するぐらいでなければ、本編で使用していない映像が予告編に使用されることなどありませんでした。


これがデジタル時代になっても、ビデオ撮影と同じく予告編は本編用の画像のコピーだし、そのコピー作業がフィルムと比べれば労力も予算もかけずに簡単に出来ますから、本物の爆発カットやCGを使ったカットだろうが使い放題です。

まぁ使い放題までは言い過ぎですが、予告編がフィルム撮影時代とは比べ物にならないくらいに作成し易くなっているのは確かですw


●「予告編」は修業

さて、文字通り予告編用の映像を、本編映像が作成された後に「探して切って繋げて出来たフィルム」で出来た予告編ですが、それだけでは完成ではありません。

予告編用ナレーションが必要です。

時にはキャスト達の声も入れて貰わなければなりませんでした。

つまり、この予告編専用に台本が必要なのです。

基本はセカンド助監督が予告編用アフレコ台本も書きます。

そして、本編用アフレコの時に同時にアフレコします。

これで予告編は、やっと完成ですww


予告編は、次回も番組を観てもらえるようにする重要なファクターです。

それだけに、助監督の重要な修行の場でもありました。


過去のフィルム時代の作品を観て頂けるのであれば、予告と本編の違いをチェックするのも面白いですよww


●あとがき

実は、「本編にも使用されてない未使用カットでありながら、NGカットでも無いのに、予告編に使用されているカット」などというモノも存在します。

これは、フィルム撮影の時代でも無い訳ではありませんが、ビデオ撮影やデジタル撮影の時代になると少なからず存在しましたし、現在でも存在します。

簡単に言えば「新(規)撮(影)カット」なのですw

つまり、「予告編用に特別に新規に撮影されたカット」が存在するのです。

フィルム撮影の時代では、フィルムという特性上、この様な「予告新撮」カットは殆どありません。

ビデオやデジタル撮影の際でもなかなかありませんが、フィルム時代よりもテープ残量やデジタルのメモリー残量を余り気にしないで良かった分、新撮のカットを撮影し易くなっていたのは確かです。

「先週の予告で観たカット、本放送であったかな?」という感覚で見てしまうでしょう。

但し、予告編用に撮り足すのに本当に意味があるカットで無ければ、カメラマンをはじめ他のスタッフ達からも納得した返事が返ってこないと思われます。

何せ、本編で使用することの無い、撮影する必要のないカットをわざわざ撮影しようというのですから。

そんな事が出来るとすれば、余程事前に予告編のカット割りを考え、根回しし、文句の出ない状態に持っていける優秀な助監督がいるのだと思いますww


そんな、NGカットや新撮カット等の「レア映像」を探して予告編を観るのもまた面白いかもしれませんww

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― 新着の感想 ―
[良い点] 今回も貴重なお話しをありがとうございます。 「帰ってきたウルトラマン」の「怪獣使いと少年」で、本編になかった、よりショッキングなカットを予告編で見て、なぜ本編でそのシーンが出てこなかったん…
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