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余り語られない撮影所のあれこれ  作者: 元東△映助
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余り語られない撮影所のあれこれ(68)「打ち上げ」と「宴会」と「飲み会」

★「打ち上げ」と「宴会」と「飲み会」


●撮影終了のその後は…

2時間ドラマ、時代劇、連続ドラマ、特撮ヒーロー番組だって撮影の一区切りはやってきます。

そんな撮影終了の一区切りの時には「打ち上げ」という宴会が付き物なのです。


「密を避ける」という事から宴会なんていう集団での飲み会が避けられる昨今の、更にクリスマスや忘年会、新年会といった本来ならば宴会続きになる時期に、「打ち上げ」という関係者以外立入禁止の領域のお話を語ってみましょう。


尚、例によって情報のほとんどが30年前ですw

今となっては変わっていることや、無くなっていることもあります。また、記憶の内容が30年の間に美化されたり劣化してしまっているものも存在しますwwその点をご理解の上、あらかじめご了承下さい。


●打ち上げって何時するの?

「打ち上げ」は、基本的に作品の撮影が終了した時に行われる宴会の事を指します。

単発の2時間ドラマやVシネマ等は、撮影している作品以外に同じスタッフやキャストが何度も揃うことはありませんから、本当に撮影が全て終了してから、改めて場所を設定してオールキャスト、オールスタッフで「打ち上げ」を行いました。


しかし、1年を通じて撮影を続けている連続ドラマの場合は、何時になれば「打ち上げ」をするのでしょうか?

1年間の撮影が全て終了(オールアップ)した時に「打ち上げ」をするのは、当たり前のようにするのですが、30年前には、1人の監督が担当する2本の担当回(基本的にこの時の監督の名前を取って◯◯組と呼ばれていました)の撮影が終了する度に「打ち上げ」は行われていました。

撮影が終了するのを昼過ぎから夕方になるようにスケジュールを調整しておいて、なるべくキャストが多く揃う撮影日を選んで予定が組まれます。

といっても、そんなに都合良く撮影台本が全て撮り終わる日とキャストが揃う日と撮影が夕方より前で終わり、しかも撮影所でのセット撮影なんて日が重なる事などありません。

ですから、撮影が全て撮り終わらなくても撮影が撮り終わりそうな日程で、スケジュールをわざわざ調整して「打ち上げ」を行っていました。

以前にも書きましたが、天候調整の必要上でセットでの撮影は、撮影スケジュールの後半に固められていましたから、その後半のセット撮影で比較的早く撮影が終わりそうな日程が「打ち上げ」として予定されたりしていました。

但し、そんな日に限って撮影が長引いたりするのは良くあることで、更には撮影の最終の時点ではスーツアクター以外のキャストのシーンを撮り終えていたり、スタッフだけになってしまうなんて事すらありました。

勿論、スケジュールの問題で「打ち上げ」が行えない場合すらありました。


●打ち上げって何処でするの?

「打ち上げ」の予算は、制作費から出てきます。

中には、出演キャストやスタッフ、関係会社等からの差し入れ等も加わる場合もありました。

単発の2時間ドラマやVシネマ等は、撮影が全て終了した後で、オールキャスト、オールスタッフで行われる場合が多く、撮影所内に場所を設けたり、会場を別に設定して宴会場を借りる事すらありました。

また、キャストやスタッフの計らいで「ビンゴ大会」とか「カラオケ大会」とかの余興がついてくる場合もありました。

「打ち上げ」自体の予算規模の問題なので、酒の種類や質や量、食事や肴の種類や質や量はマチマチでした。


連続ドラマの場合の「打ち上げ」は、監督毎に行われる為に回数も多くなり、1回当たりの予算も少ないモノでした。

ですから、場所も撮影所内のミーティングルームという名前のプレハブ小屋の2階に折り畳みテーブルと折り畳み式のパイプ椅子を並べただけの場所が定番でした。

更に料理もファストフードやお弁当屋のおかずやおにぎり、肴も所謂「乾きモノ」が紙皿に分けられて出される場合が多かったと記憶しています。

勿論、酒も瓶ビールと缶ビールが基本で、日本酒や焼酎等は一升瓶のまま出て来て紙コップで受けるというのが定番でした。

お酒を飲めない人の為のジュースやウーロン茶も、瓶やペットボトルで出て来て紙コップでした。


そんな状況はまだ良い方で、中には連続番組全ての撮影終了(オールアップ)としての「打ち上げ」以外の「打ち上げ」を記憶しない連続ドラマの現場もありました。


●打ち上げ以外の飲み会

業界は、本当にアルコール好きの人間が多く、「打ち上げ」以外でもその日の撮影が終了する毎に酒を飲みに居酒屋に行ったり、その後にカラオケスナックに流れて行く、なんていうのもありました。

「消えモノ」と呼ばれる小道具さんが用意する撮影用の飲食物が大量に余った時等は、スタッフルームに「消えモノ」を持ち込んで、酒は自分達で日本酒や缶ビール、ホッピー等を持ち込んで小宴会をやっていました。

特に「おでん屋」のシーンの撮影があった後等は、「消えモノ」としてのおでんが大量に余る為に狙い目でしたw

これが本当の「スタッフが美味しく頂きました」ですww


この「打ち上げ」以外の普通の飲み会には、スタッフだけではなくてスーツアクターやキャストが加わる場合すらありました。

単なる同僚の集まりといった感覚の飲み会でした。

勿論、キャスト達も居酒屋へ一緒に行きカラオケで歌いました。

ある意味、こうした事がスタッフとキャストの親睦を深め絆を強めていくのではないかと思えるくらいでした。


●地方ロケの飲み会

地方のロケ地等に行き、ホテルや老舗旅館が宣伝を兼ねての撮影場所提供(タイアップ)を行ってくれる場合は、大抵はタイアップ先で「歓迎会」と言われる大宴会が開かれました。

費用はタイアップ先持ちで、先方のお偉いさんと監督や主役のキャスト達の顔合わせの為の飲み会といった方が良い内容でした。

タイアップ先の旅館やホテルの社長や支配人はもとより、地方議員さんや町長や市長等が同席する場合すらありました。

私達下っぱは、単なる豪勢な食事に豪勢な酒で浮かれて有り難がっていましたw


地方ロケの場合、スタッフやキャストが一緒に食事をすることが多くなり、夕食等はその後の撮影がなければ酒も入って宴会形式となってしまうこともありました。

そのキャストに芸人さん等が居た場合等は、キャストさんが面白がって芸を見せてくれる事すらありました。

伊豆のロケで「ケーシー高峰」さんの話芸を生でかぶり付きで見られたのは、役得でしたw


また、地方ロケならではとしては、主役大御所キャストとぺーぺーなスタッフが宿泊先の近くのカラオケスナックや居酒屋で一緒に飲むなんて事もありました。

1990年に近藤正臣さんと松本伊代さんの主演ドラマで、地方ロケに行きました。

歓迎会という名の大宴会の後、近藤さんに誘われて数人のスタッフと宿泊先に併設されたカラオケスナックに行き飲んでいました。

すると、近藤さんが伊代さんを呼びに行かせ、一緒に飲ませカラオケで伊代さんを歌わせた事がありました。

勿論、曲は「センチメンタルジャーニー」w

伊代さんは、ヒロミさんと交際し始めたばかりだったようでしたが、それを近藤さんがいじって恥ずかしそうにする伊代さんが印象的でしたw


地方ロケでは、船越英一郎さん達当時の若手キャストと若手スタッフで花火大会と称して市販の花火で遊んだ夜もありました。

また、お互いが特撮好きということを隠して旅館の一室で差し飲みをした手塚昌明(当時はチーフ助監督)監督との事は、今では悔やまれますw


●飲み会での話

ほとんどの飲み会での話は、会社への愚痴もありますが、落ち着いた話をし始めると、スタッフでは撮影方法や仕事の段取りの反省等、キャストでは演技論や演技での悩み等になります。

このような事は、普通の会社の飲み会と内容は違えど変わりはないかと思います。

キャストとスタッフとの話では業界歴の長さによって状況が変わってきます。

スタッフの方が業界歴が長いのならば、撮影時のキャストの心得や注意点を。キャストの方が長いのならば、スタッフの心得や注意点を教わる事となる訳です。

これは、同じスタッフ同士やキャスト同士とは違った角度からの話となるので、興味深い話となるのです。


●あとがき

Vシネマの打ち上げで泉谷しげるさんの目の前で泉谷さんの持ち歌の「春夏秋冬」を歌ってしまったり、別のVシネマではビンゴ大会の景品で京本政樹サイン入り「京本コレクション・ウルトラマングレート」のフィギュアを手に入れました。


そんな「打ち上げ」は楽しくもあり、作品を締めくくる別れの合図でもあります。

普段見られない笑顔を見せるスタッフやキャストが見られる「宴会」や、普段聞けない心の声が聞ける「飲み会」も思い出として残る程の強烈な印象がありました。


現在では「打ち上げ」自体が開きにくい状況となっていますが、「区切り」として、次へのステップとしての「打ち上げ」は必要だと思うのです。

たとえリモートとしても……

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