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余り語られない撮影所のあれこれ  作者: 元東△映助
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余り語られない撮影所のあれこれ(169)「撮影所の恋愛事情」

余り語られない撮影所のあれこれ(169)「撮影所の恋愛事情」


●出会い

撮影所の中には男性も居ますし女性も居ます。

勿論、異性が好きな方が大半ですが、同性を好きな方もいらっしゃいました。

但し、狭い狭い撮影所の中では出会える人の数も限られています。

ですから、恋愛もその狭い撮影所の中の世界か何らかの外界との接点によるものでした。

今回は、撮影所という煌びやかな様で色恋の舞台とは縁遠い「撮影所の恋愛事情」を語ってみたいと思います。


尚、例によって情報のほとんどが約30年前です。

今となっては変わっていることや、無くなっていることもあります。

また、記憶の内容が30年の間に美化されたり劣化してしまっているものも存在します。

その点をご理解の上、あらかじめご了承下さい。

そして、ここでの意見は、あくまでも個人的な意見です。

東映をはじめとした各社や映像業界の直接的な意見ではありません。その点も予めご理解ご了承下さい。


●男女比

現在では多くの女性が撮影所の中に入ってきていますが、30年以上前では撮影所の中の女性の割合は著しく低く、「記録さん」「メイクさん」「衣装さん」といったところが女性で、他の役職の殆どが男性でした。

私が居た時代でもたまに「装飾さん」や「制作進行」に女性が居た事は有りましたが、それでも男女比は4対1でひどい時には5対1でした。

現在では「装飾さん」や「制作進行」は勿論、「撮影部」や「照明部」にも女性スタッフが入られていて、男女比3対1ぐらいにはなっていると思われます。


30年以上前のスタッフは、そんな男女比でしたから、結婚適齢期の女性スタッフは男性スタッフからのアプローチも多く、そのあしらい方も心得ていて、どちらかというと気の強い女性が多かったと記憶しています。

まぁ、そんなモテる女性スタッフは、男性スタッフからだけではなくて、男性キャストからもチヤホヤされていました。


●スタッフvsスタッフ

先に書いた様に男女比に大きな開きがあるにせよ、同じ作品を長時間かけて創って行くスタッフ同士ですから、少なからず恋愛感情が生まれる事もありました。

特撮作品の様に1年間を掛けて撮影する作品は稀ですから、殆どの作品は2〜3ヶ月で撮影を終了します。

時には1ヶ月ぐらいで撮影を終了してしまう作品までありました。

そうは言っても、撮影の準備段階や撮影終了後の編集作業を含めると、前後で各1ヶ月づつの期間が足されて、短い作品でも3ヶ月、通常でも半年近くを同じ作品で仕事をする為に顔を合わせる必要がありました。

更に、ひとつの作品の撮影期間が終了しても数ヶ月後にまた顔を合わせるといった「運命の出会い」を連想させる様な出会いが出てくると「恋愛感情」は大きくなって来ます。

つまり、同じ作品のスタッフ同士という究極の「吊り橋効果」によって「恋愛」へと発展し、一般の会社であれば社内恋愛と呼ばれる様な状況になって行きます。

そして、大抵は結婚へと発展するのです。


勿論、同じ作品では殆ど一緒に仕事をしていないにも関わらずスタッフ間で「恋愛」をするスタッフもいました。

撮影所で働くスタッフの多くは派遣会社に登録して撮影所の仕事を斡旋して貰う形式をとっていますから、派遣会社的には仕事を依頼される率の高い同じ制作会社の仕事が多くなります。

ですから、殆ど同じ作品で一緒に仕事をしていないとはいえ、撮影所内の何処かで何かの作品のスタッフをしている可能性は大きいのです。

更に「協力会社」として制作会社の撮影所内に営業所を構える「衣装部」や「メイク」は、少なくとも撮影所内の営業所に度々帰ってくる事になりますから、会える機会は多くなります。

まぁ、何にせよ個人の積極性の問題かもしれません。


撮影スタッフという特殊な仕事を理解して貰える同業者との「恋愛」と「結婚」は、大きな安心と飛躍に繋がって行きます。

仕事の時間帯が不規則になる理解や仕事内容に関する理解は、一般人と比べても大きく違ってきます。

また、結婚後も夫婦共に仕事を続けている場合が多いのも特徴的な事で、制作会社の社員ではない場合が多い撮影スタッフという職業の場合、どちらかが仕事をセーブする事で継続して結婚生活と仕事を両立させているご夫婦も少なくはありません。


実例の多くは「記録さん」「衣装さん」「メイクさん」の女性スタッフと他の部署の男性スタッフですが、これは前途した通り古くから女性率の高い部署と男性率の高い部署の組み合わせですから、撮影所内では一般的といえます。

現在では、男女比率の変化に伴って徐々に変わりつつあるのかもしれません。


●スタッフvsキャスト

男性スタッフと女性キャストや女性スタッフと男性キャストといった「恋愛」も撮影所にはあります。

キャストといえば、その殆どが美男美女と認識されますし、スタッフといえばむさ苦しい男性スタッフか地味な女性スタッフといった印象がありますが、世間一般的にみても「恋愛」には容姿の良し悪しだけでは語れない部分が存在するというのも不思議なモノです。


但し、大抵のスタッフ側からのキャストへの「恋愛感情」は一方的である事も事実です。

元々、スタッフがキャストのファンであったりする場合等は、スタッフ側が遠慮がちに一歩引いていたり、反対に熱狂的だったりしますが、引いていれば相手も意識せず熱狂的であればキャストの方が引いてしまうものですから、一般的に「恋愛感情」は一方通行となってしまうのです。

また、キャスト自身が若ければ、今後の仕事の事を考えて相手の一方的な「恋愛感情」を受け入れ難いと思う打算的な要素も絡んで来ます。

また、数ヶ月で離れ離れになってしまい、もう一度仕事を一緒に出来る機会があるのかさえも怪しく、更に「恋愛」に発展したとしても時間的に仕事の合間が噛み合うのかも怪しい「すれ違い」の日々がやってくるのも容易に想像できます。

しかし、一般人との「恋愛」よりは、お互いの仕事に対しての理解が少なからずあるのもまた事実ですから、その部分が大きければ一般人よりは長く「恋愛」や「結婚」関係を続けていける事も想像に難く有りません。


忙しい仕事というものは、個人の本質もさらけ出してしまう事もあります。

その本質を魅力的に感じるかどうかで「恋愛」に発展したりします。

また、そういった時だからこそ「優しさ」を感じる行動が、ほのかな「恋愛感情」を生むきっかけを作ってくれたりもします。

そういった意味では、撮影所という職場は、お互いの本質を見る場としては良い場所かもしれません。


実例としては、男性監督と女性キャストとの結婚が多く、近年では女性キャストとロケバスの男性運転手さんといった組み合わせも話題になりました。


●キャストvsキャスト

キャスト同士というのは、いわば同業者です。

しかし、スタッフ同士よりも出会いの機会は極端に少なくなります。

同じ事務所に所属していても大手の事務所であればあるほど直接会う機会は稀です。

そういった意味でも同じ作品のキャスティングに選ばれなければ出会いはありません。

これはスタッフ同士と同じです。

しかし、同じ作品のスタッフの様に殆どの撮影現場で顔を突き合わせるのとは違い、同じ作品にキャスティングされても、共演の機会が有るのかという更なるステップが存在します。

しかし、共演の機会が多いほど「待ち時間」という共通の時間が出来ますから、同年代のキャストであればあるほど男女を問わず喋ったりゲームをしたりして楽しく過ごす時間となり、それぞれのキャスト達の内面が見える事に繋がるのです。

勿論、「待ち時間」だけがお互いの内面を見る時間だけではありません。

キャスト達の友好を深める為の「食事会」や「カラオケ」、時には「飲み会」等も友好以上の親密性を持つきっかけとして作用します。

最初は集団で行っていた「食事会」「カラオケ」「飲み会」が、参加人数が減りお互いを意識する様になった後に二人きりに迄になれば、「恋愛関係」か「親友関係」の出来上がりという事になります。


これが数ヶ月どころか1年間以上も続く特撮作品等の場合は、打ち解け方がハンパないのですが、「恋愛」には発展しないのが一般的です。

それは「色恋」よりも「仕事」を優先する駆け出しの様な年齢の男女キャストが多く、「恋愛」に発展しそうな「恋心」が芽生えようとも内に秘めて表に出さなくしているという事もあります。

つまり、仲の良い「友人以上恋人未満」という関係に甘んじてしまい、そこから発展しなくなるという事なのです。

まぁ、中には人知れずキャスト同士が「恋愛」し、人知れず別れている場合も少なからずある…かもしれません。


しかし、キャストも年齢的に落ち着いて来て、前途した様に同じ作品で共演していれば「恋心」が「恋愛」として花咲き、ゆっくりと育む場合も出てきます。

キャスト同士の結婚の場合、「◯◯での共演がきっかけで…」と紹介される事は一般的になっていますが、確かに「恋愛」のきっかけとして「共演」は大きな要素なのです。


JAE(=ジャパン・アクション・エンターテイメント)、過去にはJAC(=ジャパン・アクション・クラブ)と称していたアクションをメインにキャストとして作品作りに参加するプロ集団ですが、ここは社内でのキャスト同士の「恋愛」「結婚」が多い様に感じられます。

作品の撮影中だけではなく、アクションの練習を含めて多くの時間を一緒に過ごし、更にはお互いのリスペクトまでも出来る関係性は、「恋愛」や「結婚」に発展しても仕方がない様に思われます。

勿論、社内での「恋愛」「結婚」だけではなく、アクションアクター・アクトレス以外のキャストとの「恋愛」「結婚」や、一般人との「恋愛」「結婚」も多く見受けられます。

身体を鍛えている男性は逞しく、女性は健康的に見えますから、男女共に人気があるのも仕方ないのかもしれません。


●vs一般人

スタッフの多くは一般人と「恋愛」をし、「結婚」をします。

出会いが少ないとはいえ、一般人との接点はキャストよりもラフに存在します。

勿論、一般人と言っても仕事関係で繋がりがある会社員という事もありますし、「元スタッフ」や「元キャスト」という場合すらも有り得ます。

つまり、元々はスタッフやキャストとして知り合っていた人物が、芸能界を去っただけという場合も有るのです。

コレはキャストの方にも同じ事が言えます。


キャストと、そのキャストのファンである一般人との「恋愛」は思った程多くありません。

その原因の多くは、ファンの想いが「熱狂的」過ぎる事もあるのですが、その想いのおかげでキャストの方が一歩引いてしまっているからという事に起因する場合が殆どです。


スタッフの場合は、キャスト程に興味を持たれる事は殆どありません。

スタッフ自身が有名な方ならば興味も持たれる可能性はありますが、そこまで有名になる前に「結婚」してしまっているのが一般的です。

もしも、若い頃に有名スタッフになったとして「未婚」であれば、有名キャストと同じ様にファンとしての一般人に周りを囲まれ「恋愛」対象として見られるのかもしれませんが、まぁ若いキャスト程ではないとは思います。


一般人との出会いの場は、キャストにしてみてもスタッフにしてみても余り多くはありませんが、一般人と接種しやすい「飲食店」「病院」「役所」「買い物店舗」等の一般的に本人が出向く先では、「出会い」が待っている可能性はありますし、前途した様に制作会社の本社や関連会社での「出会い」も考えられます。


「元スタッフ」や「元キャスト」といった一般人ならば、キャストやスタッフの仕事に対しても理解が得やすいでしょうが、芸能界に詳しくない本当の一般人であれば、仕事に対する理解が乏しく「恋愛」が長続きするかどうかは疑問が残りますが、そこは「愛があれば」なのでしょう。


●あとがき

スタッフやキャストも「恋愛」はしますし、「結婚」もします。

本当に狭い世界で日々の仕事をこなし、若い頃には仕事場と住まいとの往復だけで1日が終わり、たまの休みも身体を休めるだけで終わらせてしまうという悲しい生活を続けている撮影所の男性スタッフ。

その男性スタッフのひとりであった私にとっても、美人な若いキャストさんから優しく言葉を掛けてもらえたり、同じ職場の女性スタッフさんとの他愛もない会話が「癒し」であり、ほのかな「恋愛感情」を持つきっかけであったりしました。


私が京都撮影所で制作進行のアルバイトをした際に、当時アイドルから役者へ転向しようとしていた長山洋子さんとお仕事をご一緒して、東京撮影所で改めてお会いした際に「何でコチラにいらっしゃるのですか?」と声をかけられた時には、「こんなアルバイトだった冴えない男の顔をアイドルが覚えて下さっていた」と感動してほのかな想いを感じてしまいました。

また、ドラマでお仕事をご一緒した藤田朋子さんが、クリスマスのプレゼントをスタッフ全員に配られたり、私がウエストバッグに付けていたキーホルダーに興味を持たれて(サイレントメビウスの六芒星のマークのキーホルダー)話し掛けて来られたりして、「気さくで優しい明るい人」と憧れました。

確かに、上記以外にも美人なキャストさんはたくさんいらっしゃいましたが、近寄り難くて「憧れ」だけであり「片想い」の様な存在でした。


撮影所の中は、キャストという美男美女や個性的な人達が多い世界です。

それだけに、キャストを「推し」とする人々にとっては、ある種の「夢の国」だと思われます。

しかし、画面に映されない部分での顔は「百年の恋も冷める」かもしれません。

また、意外な一面を見せられて「ギャップ萌え」をしてしまうかもしれません。

それは何もキャストだけに限った訳ではありません。

キャスト以上にスタッフに対して「恋愛」を感じるかもしれません。

更には、撮影所内の業界人よりも一般人にこそ「安らぎ」を感じる方もいらっしゃるかもしれません。


いずれにしても、そこに「人と人」が居る限り、その二人の間には「引力」が働いていて、「引き合う」のか「反発する」のかを常に選択しています。

その「引力」が、「憧れ」なのか「片想い」なのか「恋愛感情」なのか、「友情」なのか「同情」なのか「苛立ち」なのか……

願わくば「良い関係性」である事を祈るばかりです。


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