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余り語られない撮影所のあれこれ  作者: 元東△映助
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余り語られない撮影所のあれこれ(154)「スタッフやキャスト達は、自分達が作った作品を観ているのか?」

余り語られない撮影所のあれこれ(154)「スタッフやキャスト達は、自分達が作った作品を観ているのか?」


●クランクアップ

映画やテレビドラマの撮影が終わると撮影スタッフの殆どは現場を去って行きます。

キャストも自分の出番となるスケジュールが全て終わってしまうと、いくら撮影期間中であっても撮影現場に戻ってくることは稀です。

撮影が全て終了し「オールアップ」したとしても、撮影された映像を編集しなければ完成作品にはなりませんから、監督や記録さん、編集さん等を除けば、作品が完成するまで作業に付き合うスタッフやキャストはよほど特別な場合を除いて殆どいません。

今回は、そんな自分達が撮影に関わった「完成作品」をスタッフやキャストは観ているのか?という疑問について語りたいと思います。


尚、例によって情報のほとんどが約30年前ですw

今となっては変わっていることや、無くなっていることもあります。また、記憶の内容が30年の間に美化されたり劣化してしまっているものも存在しますwwその点をご理解の上、あらかじめご了承下さい。

そして、ここでの意見は、あくまでも個人的な意見です。

東映をはじめとした各社や映像業界の直接的な意見ではありません。その点を予めご理解ご了承下さい。


●連続テレビドラマの試写

作品は完成すると試写が行われるのが一般的です。

連続テレビドラマでは、キャストやスタッフが同一の場合が多い為、キャストやスタッフの多くを呼んで試写を行います。

場所は試写室です。

勿論、撮影所内で撮影をしている合間に行いますから、その日に撮影に参加していないキャストは基本的には参加しません。ゲストキャストならば尚更です。

撮影自体は休憩扱いになります。ですから、昼食の食事休憩を取る食後時間を延長させる形か、撮影が早く終わる夕方を狙って行われていました。

「完パケ」と呼ばれる完成作品は、オープニングもエンディングも付いた映像であり、本放送時と違うのはコマーシャルが入っていないくらいです。

試写される話数の担当監督とスクリプターさんは、当日撮影に参加していませんが、当然の如く必ず参加します。


●2時間ドラマやVシネマの試写

連続しない2時間ドラマやVシネマも試写は行われます。

勿論、キャストはおろかスタッフも解散してしまっていますが、特別に招待や招集も行われません。

ですから試写を観るスタッフも限られた人だけになります。

コレは、観せない訳ではなくて仕事や時間の関係上仕方のないことであり、小さな撮影所内や制作会社の試写室での試写となってしまうので、定員的にどこまでのキャストやスタッフを招待するのかという難題があるからなのです。

したがって殆どのキャストやスタッフは、本放送や販売を待たないといけません。


●映画の試写

これに対して映画の試写は、関係者を招待して大々的に行われます。

クランクアップ後に作品から離れていたキャストやスタッフにも招集がかかります。

招待された者たちは、仕事の都合や時間の都合がつかないキャストやスタッフ以外は殆どが参加します。

中には、数ヶ月も経ってから開かれる場合もあります。

既に試写会というよりも「お披露目会」に近く、映画館を借り切って開かれる事もあります。

勿論、その様な場合は撮影現場に携わっていなかった制作会社の上層部の人達や業界関係者なども招待されます。


●本放送

テレビ放送される作品であれば、テレビ放送が初めての視聴というキャストやスタッフもいます。

勿論、連続テレビドラマなどは放送日や時間が確定していますから、撮影所で撮影をしている時間であれば、その場に居合わせたキャストやスタッフが撮影の手を留めて本放送を一緒に視聴するという事もありました。


2時間ドラマ等は一応の放送予定日はあるのですが、それでも放送日が変更になる事も度々ありました。

例え放送予定日に放送となり、それが撮影所で撮影をしている時間であったとしても、周りは既に件の2時間ドラマのキャストやスタッフ達ではありませんから撮影が留まる事もなく、観たくとも観られない状況という事もありました。

中には、作品が完成しているにも関わらず放送日未定等という場合もあり、何ヶ月も後になってから急に放送されたり、放送がいつの間にか終了していたりといった事もありました。


●録画

放送日が決まっている場合のテレビドラマ等は、録画しておいて仕事の合間や撮休日に視聴するという場合もありました。

スタッフが家で録画したビデオテープ(私の経験は1990年代初頭なので、記録媒体はビデオが主流でした)をスタッフルームのビデオデッキでかけてスタッフやキャスト達で観るという事もありました。


勿論、こういったキャストやスタッフが集まって録画を視聴する等という事は連続テレビドラマぐらいの出来事で、単発の2時間ドラマ等は前途のように限られたキャストやスタッフだけが試写を視聴するだけですから、試写を視聴出来なかったキャストやスタッフが個人的に録画して視聴する事の方が一般的でした。


会社単位で撮影に参加している「協力会社」や「協力スタッフ」等でも様々な「チェック」として録画されていて、単に視聴するだけでなく「資料」として保存されている場合もありました。


●販売

Vシネマ等の販売を最終形態としている作品の場合は、作品が販売されるのを待ってから初めて完成作品を視聴する場合もありました。

前途したように、キャストやスタッフはクランクアップ等を期に解散しますから、完成作品を試写すら視聴していない場合が多く、ましてや販売されても直ぐには購入しないキャストやスタッフもいらっしゃいます。

まぁ、年数が経ってから自分が携わった作品が販売されているのを知って購入して視聴する方もいらっしゃいます。


●公開

映画の場合は、前途したようにプレミア試写会等の関係者を招待しての試写会が開かれますから、殆どのキャストやスタッフは、その試写会で完成作品を鑑賞します。

試写会の日程的にどうしても参加出来なかったりするキャストやスタッフも勿論いらっしゃいますから、それでも完成作品が鑑賞したいと思えば、劇場公開を待ってから鑑賞する事もありました。


私の場合のように「セビリア万博 日本館出展映像」という現地の万博会場でなければ公開されない特殊な公開の場合もあります。

流石に現地までは行けませんから、試写会は必須でした。

しかし、その試写会も完全なモノではありませんでした。

なぜならば、この万博用の映画は1990年代初頭にしては珍しく多面スクリーンによる上映形式でしたから、現地万博会場でなければ完全な形での上映が出来なかったのです。


●レンタル

本放送や再放送の視聴も逃したり、録画も逃したり、公開されても鑑賞しなかったり、販売されても購入しなかったり、と色々と逃してしまっても「レンタル」があります。

レンタルビデオやレンタルDVDが助けとなります。

流石にテレビドラマ等のテレビ放送作品がレンタルされるまでは、ある程度の期間が必要だったり、レンタル自体がされなかったりしますから、全てがレンタルで視聴する事もできませんでした。


近頃ではネット配信というレンタル視聴という事も可能となっていますが、それでも何十年も経てばネット配信の中にも見付けられなくなる作品も多く存在します。

だからこそ、本放送や販売や公開時の作品鑑賞は、とても重要となるのです。


●再集結

人気のある作品であれば、数ヶ月後や数年後や数十年後に続編やスペシャルドラマが制作される事があります。

そんな場合には、過去作をもう一度視聴する場合があります。

制作会社に保存されていたりする録画を再視聴するのですが、これは過去作に参加していないスタッフ等に世界観の共有やキャラクターの再認識をするといった意味合いもありました。

勿論、録画を観ない場合もあれば、自分達の手持ちの映像を再視聴して、撮影に望む場合もありました。


全てのスタッフやキャストが過去作に携わっている訳ではありませんから、過去作品を観る事で、新たな作品を撮影する基礎とし、また新たな過去作品を作り出していくのです。


●あとがき

作品に携わったキャストやスタッフ達は、出来る事ならば自分達の作品を一度は視聴したいと考えていると思われます。

勿論、視聴する事を良しとしない関係者もいるのもまた事実です。


試写を視聴しているからと本放送は観ないとかと言うキャストもいましたし、試写を観ているにも関わらず本放送を楽しみにしているキャストやスタッフもいらっしゃいました。

特に新人のスタッフやキャスト達は、自分の関わった作品を故郷の両親や親族と観ている感覚を味わっていました。

勿論、テレビでの本放送だけではなくて、映画の公開やVシネマの販売開始等といった場合でも同じ事が言えました。


スタッフやキャストは、基本的には何らかの形で自分達の関わった作品を鑑賞する機会を得ることは出来ました。

それは重要な事だからに他なりませんし、出来る事ならば鑑賞すべきだと思います。

つまり、自分達の関わった作品を鑑賞する事は、自分達の仕事を振り返り、反省し糧とし、観る事で次回の自分の仕事の糧とする事も出来るからです。


まぁ、忙し過ぎて鑑賞したくても出来ないスタッフやキャストがいる事もまた事実です。

しかし、無理矢理にでも鑑賞して置くに越したこそはありません。

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