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余り語られない撮影所のあれこれ  作者: 元東△映助
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余り語られない撮影所のあれこれ(151) 参加作品のメイキングvol.8「『大予言〜復活の巨神〜』その2『天の巻』その1」

余り語られない撮影所のあれこれ(151) 参加作品のメイキングvol.8「『大予言〜復活の巨神〜』その2『天の巻』その1」


●「天の巻」「地の巻」

「大予言〜復活の巨神〜」は104分という尺ではありますが、便宜上「天の巻」「地の巻」の2巻に分かれた2部構成になっています。

しかし、販売形態では2巻に分けることなく、1巻の中での章立ての様な感覚でした。

撮影された時間では、倍とはいかないまでも編集後の上映作品として120分は楽に超えるだけの撮影材料はあったのですが、テンポや話の展開などによってカットされた箇所も多く、一応物語を下敷きに置いてはいますが、アクションや特撮に重きを置いた作品といった内容になっています。

尚、台本には「天の巻」「地の巻」の区別はなく、単なる1冊の台本でした。

今回は、作品の前半である「天の巻」のメイキングについて語ってみたいと思います。


尚、例によって情報のほとんどが約30年前ですw

今となっては変わっていることや、無くなっていることもあります。また、記憶の内容が30年の間に美化されたり劣化してしまっているものも存在しますwwその点をご理解の上、あらかじめご了承下さい。

そして、ここでの意見は、あくまでも個人的な意見です。

東映をはじめとした各社や映像業界の直接的な意見ではありません。その点を予めご理解ご了承下さい。


●作品データ

タイトル「大予言 復活の巨神」

1992年4月28日 東映・バンダイビジュアル

オリジナルビデオ作品

収録時間104分。(天の巻50分、地の巻54分)

主演 泉本教子

助演 坂上忍、加納竜、テレサ野田

監督 小林義明


●タイトル前

タイトル前の泉本教子さん=津島麗奈の電車の車窓脇のカット。

長野県内で撮影されたもので、セリフもないことからメインカメラマンでも小林監督でもなく、別班体制でチーフカメラマンと前嶋チーフ助監督と照明チーフと泉本さんだけという少人数ゲリラ撮影体制での撮影と思われがちですが、ちゃんとした本隊の撮影隊で撮影されています。

勿論、電車の会社には撮影許可は頂いています。

そのあとの線路が流れていくだけの撮影は、運転席横の電車先頭の中央窓からの撮影で、こちらも体制的には撮影隊本体なのですが、これこそメインカメラマンでも小林監督でもなく、別班の様な体制でチーフカメラマンと前嶋チーフ助監督だけの撮影でした。

お陰で、他のスタッフは立ち会わずに信州の緑濃き景色を満喫していました。

個人的には、この線路からトンネルに入って宇宙空間に抜けていく映像と音楽が気に入っています。

大風呂敷を広げて「レクトリウス星」を見せていますが、地表の様子はこの後も一切描かれません。

勿論、この宇宙空間のシーンは特撮研究所=矢島特撮によるお仕事であり、私などは完成作品になって初めて映像を観たほどでした。

小林清治さんの渋いナレーションも重厚さを持たせています。


●メインタイトル。

タクシーの中の麗奈。

タクシー内はカメラマンだけの同乗です。

雨は、雨降らしではなくて本物の雨です。

撮影スケジュール的に夜間撮影が雨となっても撮影中止とはならずに強行しました。

結果として最後の逢瀬を求める恋人達の心を映す雨となりました。

BARマ・ヴィー内もお店を借り切っています。

松原正さんのアコーディオン演奏は、アフレコ用も含めて何回か弾いて頂きました。

店内の坂上忍さん。

飲むウイスキーかブランデーは、撮影用に麦茶ですが、坂上忍さんは「本物でも良いけど?」とスタッフを苦笑させていました。

東映の御用達の東京無線タクシーから降りる麗奈。

このBARの前でのカットや雨の中を走る麗奈のカットは、BARの中でのカットを撮影した後で纏めて撮影しました。

単純に衣装が濡れてしまうからという理由でした。

BARに麗奈が飛び込むと、既に居ない謙介。

タバコの煙を作るのに苦労していました。

作成は前嶋チーフ助監督でした。

前嶋さんは、「不思議コメディシリーズ」で小林義明監督とも親交があり、監督も務める事もある豪快で優しい方でした。

私も前嶋さんとは「ナイルなトトメス」でご一緒した縁がありましたから仕事としては安心出来て楽でした。

走る麗奈。

足元も泉本さん御本人です。

通行人はエキストラです。

地下鉄の入口に降りて行きます。

駅は、東京地下鉄有楽町線東池袋駅。

勿論本物の駅と駅構内で、構内での坂上さんの車内への乗り込みは、駅には許可を取っていましたが、乗客には知らせない半分ゲリラ撮影でした。

坂上さんの後から乗り込む男性は、制作主任の内トラ=内部エキストラでしたが、乗り込みが自然です。内トラに慣れていらっしゃる。

車内での麗奈=泉本さんの隣の車輌への移動から謙介=坂上さんへの胸に飛び込むカットは、半分ゲリラ撮影であり、セリフは全てアフレコでした。

泉本さんが隣の車輌への扉を開けるカットは、2テイク目です。

NGカットでは、扉が重過ぎて開ける事が出来なくてもたついてしまっていました。

車窓に反射した形で、カメラを肩に抱えた松村カメラマンとカメラ助手が写り込んでしまっているのは、本来ならばNGカットなのですが、スケジュール的にリテイクが出来なかったので、OKカットとなりました。


●津島家

ゲーム画面は、スーパーファミコンの「ザ・グレイトバトル」です。

東映として持っている版権があるゲームというのが条件で、更には一目でゲームであることが分かるゲームらしいゲームという事が良いとの指示したので、このゲームとなりました。

尚、このゲームは私の個人所有物でもあります。

また、ゲーム画面は見せていますがスーパーファミコンの本体は画面に映していません。

これも版権問題を考慮しての配慮でした。

津島清孝役の渡辺博貴さんに実際にプレイして貰っています。

渡辺博貴さんは「不思議コメディシリーズ」に多数出演されていた子役出身の役者さんで、特に「おもいっきり探偵団 覇悪怒組」では主演を務めていらっしゃっていましたから、そこからの小林義明監督のキャスティングOKがすんなり通ったと思われます。

この時点では20歳で、渡辺博貴名義の役者としての最晩年と思われます。

麗奈だけがいない津島家。

娘が戻って来ないことを心配する普通の家族の会話が表現されていながらも、「ザ・グレイトバトル」の呆れる程の軽快な音が返って不気味さを醸し出しています。

自室に戻りベッドに座る母親=美也子=テレサ野田さん。

電話を手に取る。

妖しい彼女の後ろにはフランシス・デ・ゴヤ作の「我が子を食らうサトゥルヌス」が飾ってあります。

「食人鬼グール」としても知られる不気味な作品ですが、それが暗に彼女自身を象徴しています。

絵の大道具さんへの注文は、小林監督の指示でした。

それにしてもこの絵を寝室に飾る女性というのは、お世辞にも趣味が良いとは言えませんよね。


電話先は黒川。大杉漣さんの登場です。

この黒川役のキャスティングは、撮影期間に入ってから小林義明監督とプロデューサーが撮影現場で決定したモノでした。

「黒川、誰にします?」

「ポアトリンのダイジョーブ博士でどうだろう?」

「大杉さんですね。合いそうですね」

「余り出番や台詞も多くないから、他に出番だけでも増やしてあげないと気の毒だよね」

既に不思議コメディシリーズで数回に渡り出演経験があった大杉漣さんは、小林義明監督にとって印象的に残っていた様でした。

黒川の事務所は、ステージセットではなくて東映東京撮影所TVプロ本館の事務所内でした。

大杉さんの手の甲の印は「ボー一族」の証です。

コレが後の「裏切り者」の台詞に繋がります。

ジッポーライターの点火と同時に大杉さんの顔にライトが当たり、はっきりしなかった顔が見えます。

ジッポーライターが一発で点かずにテイクを重ねてしまって、大杉さんは苦笑いしていました。


再度、美也子の寝室。

電話の子機を置く手が多重露光の様にダブって行きます。

そして、鏡に映る美也子が本体とともに多重露光の様にダブって行きます。

ここは、美也子の不気味さを暗示するだけで終わります。

多重露光前は一瞬動作を止めていると、その後の多重露光が効果的なので、テレサ野田さんは普通と違う演技に少し戸惑い気味でした。


●黒川と謙介

黒川と手下が車で走って行きます。

手下はJAC(=現JAE)の御二方、井上清和さんと的場耕二さんでした。


麗奈と謙介、謙介の自室での逢瀬。

八ヶ岳の思い出を語る二人。

回想シーンの謙介のバイクからの見た目で麗奈を見つけるカットは、ゴープロなんて便利な小型カメラがある時代ではありませんでしたから、全て手持ちカメラによる撮影でした。

バイクの走る角度とカメラの角度、そして麗奈の立ち位置が難しく、できるだけバイクが泉本さんの傍を走らなければならず、泉本さんには少し怖い想いをさせてしまいました。

泉本さんは濡れ場とはいえ、胸の露出はNGでしたので、坂上さんに上半身を脱いでもらい、泉本さんには胸から下に肌色のボディスーツを着込んで貰って撮影しました。

肌色のボディスーツは見えてはいけませんから、坂上さんの身体の動きも泉本さんの身体の動きも制限されていました。

それでも濡れ場として成立させるのは、泉本さんの演技力もさることながら、様々な役をこなして濡れ場も経験している坂上忍さんの演技力があってのことだと思われます。

濡れ場が制限される分、キスシーンは少し濃厚になりました。


謙介の部屋の外で部屋を見上げるボー一族。

誰が演じられたのかは覚えていませんが、確実にJACの方だったと思われます。

顔が覗くフードの角度が難しく、そのままであれば麻を赤く染め上げて出来たフードは顔を完全に覆い隠してしまいますから、フードの端には針金を仕込んであって大きく開口し、その形を維持する様になっていました。


逢瀬の後、謙介の部屋を出ていく麗奈。

この時、謙介は上半身裸です。

麗奈を追いかけ追い着く間を、謙介が服を着る時間で稼いだという演出です。

大巨神の影を見る麗奈。

追いかけ追い着き、タクシーの停まる場所まで送ろうと付き添う謙介。


●あとがき

今回はアクションも特撮もほとんど出てきませんでしたし、「天の巻」の1/3にも達していませんが、キリの良さを考えてここまでです。


この映画は、この後の度重なる「人によるアクション」を見せてくれる「天の巻」と、「スーツによるアクション」を見せてくれる「地の巻」に別れています。

また、全編に漂う不気味さを暗さに求めた為に、ナイト撮影が多かった記憶があります。

それによって、昼の様な明るさのシーンが夜の様な暗さのシーンの間に挟まったりしていますが、話の流れや不思議さから誤魔化されています。


公開から30周年を過ぎて、こうした機会に見返していると細かなカットにも思い出が蘇って来て、テレサ野田さんのイントネーションの違和感を彼女らしさと捉えた事や渡辺博貴さんへの小林義明監督の優しさ、ジッポーライターが点いて喜び安堵する大杉漣さん、泉本さんの肌色のボディスーツを隠す様に腕の位置までも細かく配慮していた坂上忍さんの現場力も脳裏に焼き付いている事を改めて認識しました。

全てが良い思い出として記憶がブラッシュアップされている30年です。

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