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余り語られない撮影所のあれこれ  作者: 元東△映助
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余り語られない撮影所のあれこれ(112) 「撮休日〜撮影“は”休みの日〜」

★余り語られない撮影所のあれこれ(112) 「撮休日〜撮影“は”休みの日〜」


●休みの日

皆さん。正月休みはいかがお過ごしになられたでしょうか?

まだの方もいらっしゃるのかもしれませんね。

盆も正月も無さそうな撮影所にもちゃんと休みの日はあります。

勿論、30年前の撮影所にも休みはありました。

基本的に撮影期間中に撮影が休みになることを「撮休(=さつきゅう)」と呼び、その休日を「撮休日(=さつきゅうび)」と呼びました。

以前にもご説明しましたが、私達撮影所で働くスタッフの殆どは「派遣スタッフ」でしたから、もしも仕事自体を受けなければ、ずっと休日という事も可能でしたw

今回は、そんな撮影関係者の休日である「撮休日」に関するお話です。

しかし、「撮休日」と言っても撮影が休みになるだけで……


尚、例によって情報のほとんどが約30年前ですw

今となっては変わっていることや、無くなっていることもあります。また、記憶の内容が30年の間に美化されたり劣化してしまっているものも存在しますwwその点をご理解の上、あらかじめご了承下さい。

そして、ここでの意見は、あくまでも個人的な意見です。

東映をはじめとした各社や映像業界の直接的な意見ではありません。その点を予めご理解ご了承下さい。


●撮影と休日

一概に撮休日と言っても、撮影している作品によって意味合いが違ってきます。

本来の撮休日は、長期撮影スケジュールによる作品に於いて、労働基準法に定められている労働における休日であり、1週間に1日程度の割合で設けられることになっていました。

現在では、更に週の労働時間の規定に伴う週休の増加や労働環境の改善等もあり、30年前とは比べにならない程に休日=撮休日が増えたり、労働時間が制限されている様です。


では、それぞれの撮休日の種類を見ていきましょう。


●定休日

少なくとも私がスタッフとして東映東京撮影所に入っていた時代には、「日曜日」等に必ず休日になるという一般企業にある「定休日」はありませんでした。

つまり、7日間に一度の休日などという決まった休日はなかった訳です。

しかし、日数による「納期」が決まっているスケジュールに左右される撮影では、7日前後で一度リセットする意味でも撮休日が設定されていましたから、全く撮休日が定期的に無いという訳でもありませんでした。

でも、その撮休日がいつになるのかは多くの要素によって左右されますから、撮影スケジュールが発表になるまでは分かりませんでした。

そういった意味からも、撮影所内のスタッフ同士であったとしても作品が違えば撮休日が一緒になることもありませんでしたし、外部の友達とも休日を合わせることはなかなか難しい状態でした。


●レギュラー番組

一週間に一度のテレビ放送があるレギュラー番組の場合、30分の特撮ヒーロー番組では2週間程度で2本の作品を撮影するというのが撮影期限となっていました。

これが特撮ヒーロー番組ではないレギュラー番組の1時間ドラマであれば、特撮シーンが無い分撮影スピードが早くなりますから、同じ2週間で同じ2本分の作品を撮影するというのが定番の撮影スケジュールでした。

この2週間で2本の撮影の間が同じ監督の「○○組」になる訳で、準備期間も撮休日もこの2週間の期間を割り振りされました。(あくまでも撮影のみのスケジュールが2週間であって、編集やアフレコは別のスケジュールで進行していました)

ですから、撮影スケジュールの中間地点で一度の撮休日を置き、撮影スケジュールを全て終了(=オールアップ)した後にもう一度撮休日を置くというのが定例でした。

2週間で2本分の話数の撮影といっても、順番に撮影している訳ではありませんでしたし、キャストのスケジュールの都合やロケ地の借用スケジュールによっては、中間地点といっても8日目だったり6日目だったりしました。


また、本当に珍しい事ですが、天候が悪くてロケ地での撮影が無理で、更に撮影できる場所での撮影スケジュールも全て消化してしまっているという場合等は、急な撮休になる場合もありました。

殆どは、ギリギリまで撮影隊を待たせて様子見しますから、朝から撮休等という場合は先ずはありませんでした。

撮影スケジュールに余裕ができている場合などの稀有な好条件がある場合でしたが、それだけに余りお目にかかれる状況ではありませんでした。


●スペシャル作品

2時間ドラマやVシネマを含む長編作品の場合の撮影スケジュールは、一般的には1ヶ月間を有しました。

しかし、この1ヶ月間の内の最初の数日〜1週間は準備期間に充てられていましたから、実質の撮影期間は3週間程でした。

通常のドラマやレギュラー番組よりも余裕のある撮影スケジュールではありましたが、殆どの場合、遠方への長期ロケーションといった場合が多く、そこまでたっぷりと時間があるといった状況でもありませんでした。

更に、撮休に当たっては、ロケ地で撮休日を作る訳にはいかず(宿泊費や食事代が、キャストやスタッフを含めた撮影隊の人数分かさむのが最大の要因)、長期ロケーションから帰ってきてからの翌日から1日〜2日間が撮休日になっていました。


●Vシネマと映画

私自身は映画の現場に参加したことは殆どありませんし、参加したのも「操演助手」としてが1回と「助監督」としてが3回だけでした。

「操演助手」などのイレギュラーのスタッフの場合は、撮影スケジュールによって呼ばれて仕事をしますので、呼ばれなければ準備期間ですし、撮休日と同じ様なモノでした。

余談ですが、メインスタッフ以外の仕事をすると、メインスタッフとしての撮休日が貴重なモノであり、撮影がある事が有り難い事だといった様な様々な事を気付かされる事がありました。


映画の撮影スケジュールは、殆どが長期に渡りました。

1ヶ月間で終わる訳も無く、2ヶ月間や3ヶ月間も当たり前でした。

私が助監督として参加した映画は、予算の乏しい「教育映画」と「地域紹介映画」、国の費用で撮影する「国際的な映画」の両極端な映画でした。


「教育映画」と「地域紹介映画」は、映画とは言いますが1ヶ月間で撮影を終える撮影スケジュールの上に、全編ロケーションで、ステージセットを借りての撮影等は一切無く、ロケセットも民家を借りての撮影でした。

そんな強行軍の様な撮影スケジュールでは、撮休日という状況は望める筈もなく、撮影スケジュールが数日短くなっていた位でした。


それに引き換え「国際的な映画」は、30分程度の上映時間しかないにもかかわらず、地方ロケーションから都内ロケーション、更に余裕があるのか撮影スケジュールの都合なのか、1ヶ月間以上の撮影期間の上に、撮影期間の途中で準備日や撮休日を入れるという状況でした。

アニメーションと実写映像との合成作品という側面や70ミリフィルムでの撮影という特殊条件もありましたから、最初から通常よりも余裕を持った撮影スケジュールで撮影期間を設けていたのかもしれません。


テレビ作品でも劇場映画でもない作品にVシネマがありますが、この作品の撮影期間も通常は1ヶ月間程度でした。

但し、例外もありました。

2ヶ月間を撮影期間に使い撮影したVシネマがあったのです。

それは、予算を潤沢に使い、こだわる監督によって作られた作品でした。

どうも周囲から多くの意見が出て、可哀想な作品になってしまった様でした。

この作品の場合も、深夜ロケーションや拘束時間が長くなり過ぎた翌日に、臨時で撮休日になってしまった場合もありました。


映画館で上映されている映画は、通常は2ヶ月間〜3ヶ月間程度の撮影期間を取る様ですから、撮休日も1日単位でなくて数日単位という事も考えられます。

但し、そんな「名目上の撮休日」も、撮休日にしない事が昔の映画撮影の現場には多々ありました。


●撮休日に撮影は無いけれど

確かに「撮休日」は「撮影“は”無い」のですが、撮影が無いということがそのまま休日とならないのが、昔の撮影現場でした。

基本的には休日ですから休んで良いのですが、自主的に次の撮影に備えて「足りないモノの買い出し」や製作が間に合っていない小道具類の「作成の手伝い」などを行っていました。

撮影に入ってしまえば撮影現場に付きっきりになりますから、「買い出し」や「作成の手伝い」等といった現場から離れなければならない仕事はできません。

更に、その「買い出し」や「作成の手伝い」が無ければ、撮影が進められず作品の完成自体がままならない状況が出てくるので、ある意味「撮休日」は、「ありがたい」インターバルだった訳です。

ですから、スタッフの一部では「撮休日」を「準備」に替える事が当たり前にまでにもなっていました。


現在では、スタッフの分業化が進んだ上に「撮休日」をキッチリ取る事が求められる様ですから、「(服や小道具の)買い出し」や「(服や小道具の)作成」は撮影に参加していない他のスタッフが行う様にまで分業化されている様です。


●年末年始と長期休日

流石に年末年始は、期間内に撮影が入ってしまっている一部のスタッフを除いて「撮休」でした。

勿論、年末年始に撮影を続けている作品もありましたが、その様な作品は本当に稀でした。

レギュラー番組の場合の休日期間は、だいたい年末年始を含んで1週間から10日間位でした。

映画やスペシャル番組の撮影ならば、年末年始の仕事を調整すれば、年末も早くから休みに出来ますし、年始に開始する撮影作品のスタッフ入りの遅い作品を選べば、年始もゆっくりと休む事ができましたから、休日期間はマチマチというのが正直なところでした。


私の場合は、東京撮影所で働いた後に京都撮影所で年末に撮影を終了する作品に参加して、撮影が終了した翌日には四国の実家に帰るというスケジュールで年末年始を迎えた事がありましたが、少し余裕のある年末年始の「撮休日」を過ごす事ができました。


また、長期休日としてはゴールデンウィークや盆休みもあります。

しかし、祝日多量のゴールデンウィークは、祝日も日曜日も関係無い撮影現場では、決まって撮休になるという事もありませんでした。

更に盆休みに至っては、各地方毎に休日期間がマチマチですし、忙しいレギュラー番組の撮影の最中では、纏った休日を設ける事すら難しい状態でした。

そして、仮に盆休みを設けても年末年始よりも明らかに短い期間しか休日は設定できないでしょうね。


勿論、現在の状況は分かりません。

もしかすると、現在ではゴールデンウィークも盆休みもちゃんと休日を設けている可能性もあります。  


●あとがき

今回は、レギュラースタッフの立場からの「撮休日」の感覚でした。

そして、それは決して長い休日ではありませんでした。

しかし、実のところ撮影日であってもその日の撮影スケジュールが全て終了すれば、早い時間であってもその日の撮影は終了となりました。

極端な話、午前中に撮影が終了してしまう場合すらありました。

撮影が終了すれば我々スタッフは、翌日の準備を開始しますし、それが終わればその日の仕事は終了でした。

早く終わる事は嬉しい事ですが、例えばエキストラの方々等は、拘束時間を含めて日給で雇われているので、撮影時間が早く終了することは、時給が跳ね上がる事になるので密かに喜んでいらっしゃいましたw


殆どの場合は、30分や1時間程度の早期の終了といった程度の状態でした。

この様な事は「撮休日」には含まれませんが、休日ではなくて「早期終了」が多かったと言っても良いかと思います。


私の様な30年前のスタッフは、そんな「早期終了」や「撮休日」であっても撮影所内で撮影準備をしていたり、撮影所までやって来てスタッフの仲間と他愛もない話をしていたり、撮影所内で遊んでいたりしている人達が多く居ました。

大抵は、スタッフ同士で撮影所近所の居酒屋で酒を飲んだり、たまにはキャストを含めてカラオケに行ったりして「短な休み」を謳歌していました。

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