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余り語られない撮影所のあれこれ  作者: 元東△映助
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余り語られない撮影所のあれこれ(108)「車輌部〜運搬車輌のプロ〜」

★余り語られない撮影所のあれこれ(108)「車輌部〜運搬車輌のプロ〜」


●車輌部

とりあえず「車輌部」と区別し呼称されていましてが、厳密には車輌の所持及び運転手は、東映等の制作会社と契約を結んだ企業から提供される派遣状態でした。

今までにも書いて来たように、この様な「制作会社」の社員ではない外部企業からの派遣という状態が撮影所のスタッフのほとんどを占めていましたから、「車輌部」と言っても例外ではないということなのです。

そして、他のスタッフ達と同じ様に、同じシリーズや制作部の仕事には、同じ車輌部の面々が参加するのが通例でした。

さて今回は、そんな運搬車輌のプロである車輌部さん達のお話です。


尚、例によって情報のほとんどが約30年前ですw

今となっては変わっていることや、無くなっていることもあります。また、記憶の内容が30年の間に美化されたり劣化してしまっているものも存在しますww

その点をご理解の上、あらかじめご了承下さい。

そして、ここでの意見は、あくまでも個人的な意見です。

東映をはじめとした各社や映像業界の直接的な意見ではありません。その点を予めご理解ご了承下さい。


●スタントではありません。

最初に断って置きますが「車輌部」と言ってもカースタントやバイクスタントの担当はしません。

あくまでも「運搬車両」の運転を主に行うことが業務でした。

スタッフを運ぶマイクロバス「通称:ロケバス」や照明機材、小道具機材、ヒーローや悪役の着ぐるみ等を運ぶジュラルミンボックス型のトラック「通称:機材トラック」を主に運転してくれていました。

但し、アクションを伴わない車両の運転業務も兼任していましたから、ヒーロー特有の車両等の特殊車両を除く撮影用劇用車も手配してもらっていました。

アクションを伴う可能性のある車両の運転は、あくまでもカースタント等の別のスタント会社のスタッフが担当していましたが、「ちょっと移動して」とか「走るだけだから」と言って馴染みの「車輌部」スタッフに動かしてもらう場合もありました。

何といっても我々一般の人間よりは、少なくとも「運転」に関しては格段に「信頼」がありましたから、単なる車両移動等の際にはお手伝いをして頂く場合があったのです。


●マイクロバス

「ロケバス」は、ロケーション先に移動する為のマイクロバスを総じて呼ぶ呼び方です。

単なるマイクロバスではあるのですが、天井部分には足場の付いたルーフキャリーが載せられていました。

このルーフキャリーには、レール用ドリーのレールとドリーを載せたり、6尺イントレ等を折り畳んで載せていました。

と、言っても常時に載せている訳ではなくて、その日のロケーションに必要な際にだけ載せて行くといったスタイルでした。

まぁ、イントレに関しては常時載せてあるロケバスも見受けられました。

更に、ルーフキャリーには人が数人乗る事が出来ましたし、そのルーフキャリーの足場にカメラ三脚を立てて撮影する事もありました。

そして、そのルーフキャリーに登る為のハシゴも車体に設置されていました。


搭乗定員20人ぐらいのマイクロバスが通常でした。

宿泊が伴う様な長距離のロケーションの場合には、大型バスを使用する場合もありましたが、マイクロバスとしてのロケバスも一緒に同行しましたし、実際の撮影の際にはマイクロバスの方を基本的に使用していました。

搭乗するのはスタッフだけではなくてキャストも一緒でした。カメラマン、監督、助監督✕2〜3、記録、メイク、衣装、制作進行助手、照明部✕3〜4、コレにキャストが数名でしたから、私が撮影所に居た時代には20名乗りのロケバスでどうにか同乗出来ていました。人数が本当に多い時には、補助席を倒すぐらいでした。

流石にロケーション先でアクションシーンがあって、JAC(ジャパン・アクション・クラブ 現:JAE)さん達(アクション監督含む)が一緒に乗るとなると1台では座席数が足りなくなる場合がありましたから、そういった場合はもう1台ロケバスが出ました。この場合のロケバスは、スタッフのロケバスと区別する為に「JACバス」と呼ばれる場合がありました。

尚、撮影部の助手は撮影機材を載せた専用の車でロケ地へ移動していました。


コロナ禍の状況下では搭乗定員も半減としていた様で、スタッフの中には自家用車で撮影現場へ行く人もいたのではないかと思います。


●撮影隊の中心

ロケバスは、スタッフやキャスト等の人員の移動だけの車輌ではありませんでした。

撮影現場に到着すれば、メイクルームや更衣室、そして楽屋や待機室として活用されました。

カーテンを閉めて更衣室。メイクの際にはキャストを補助席に座って貰うのが一般的でした。

夏場も冬場もカーエアコンのお陰で快適でしたから、スタッフやキャストの待機室としても活用されました。

そういった事から、撮影現場から遠く離れた場所にロケバスを停める事は、余程の問題が無ければしませんでした。

ですから、ロケバスは撮影隊にとってオアシスであり、集合場所であり、中心の様な存在でした。


そんな重要な車輌だけに、特殊なロケバスも存在しました。

公衆電話付のロケバスや、トイレ付ロケバスなどがそれです。

しかし、いずれも見て乗ったの1度きりぐらいの珍しさでした。

少なくとも東京撮影所では、トイレ付ロケバスは1度も見ませんでした。


尚、現在ではメイク台やメイクイスが設備として搭載されているメイクバスや、更にトイレまで付いたトイレ付メイク専用バスなんていう車輌まであったりします。

しかし、あくまでもこれらの車輌は車輌部さん達が所属する車輌専門の協力会社の所持する車輌ですから、貸し出しの際には通常のロケバスよりも高額なレンタル料金が必要になっているのは必至でしょう。


●機材トラック

私が撮影所に居た30年前では、2トントラック(ショート)のジュラルミン囲いのトラックが主流でした。

それ以前では、ジュラルミンではなくて布の幌トラックとかも活躍していた様です。


現在では変わってしまっているでしょうが、当時は小道具の機材を運ぶトラックとしての役割というのが本来でしたが、照明部の機材は常時積まれていましたし、大道具がロケ先で使用する大きなハリボテを載せて行く事もありました。


そして、何よりもロケバスと違うのは、この機材トラックが小道具会社の所有だと思われる点です。

なぜならば、ロケーションの無い場合でもステージセットの建物の横に移動してきては、そこから機材や小道具を取り出していました。

その移動の為だけに「車輌部」を雇う事はないでしょうし、車輌が「車輌会社」の所有ではレンタル料金が常時発生してしまいますから、機材トラックは、基本的には小道具会社の所有だったのではないかと思われるのです。

尚、流石に1台では足りない場合は、小道具も照明部も大道具(=美術部)も車輌会社に手配していましたし、所有している機材トラックであってもロケーションに出る際には、現場付の小道具さんとは別に機材トラック専属の運転手が手配されていました。


余談ですが、この機材トラックにはヒーローのマスクやスーツ、怪人のスーツや補修キット等も載せていました。

それは、30年前の頃はヒーローのマスクやスーツ、怪人のスーツの補修や準備は、小道具の会社が担当していたからです。

今は、キグルミやマスクやスーツ専門の部署がある様ですから、小道具さんの車輌自体が2トン車からハイエース位にまで縮まっていても良いのではないかと思います。


●撮影車輌

カメラは基本的には移動しません。

ドリー等の移動撮影であってもカメラマン自身が移動をさせる事はありません。

カメラマンはカメラ撮影に専念するのが通常です。

ですから、撮影部の助手がドリーを動かすべきなのですが、何故か演出部の助監督に役割が廻ってきます。

チーフ助監督かセカンド助監督の仕事の様になっていました。


さて、ではロケーション先で車輌の後ろにカメラを据え付けて撮影する場合ではどうでしょう。

第一に運転に信用が無ければなりませんし、急激なスタートやストップをする訳にもいきません。ですから「車輌部」の運転手さんにお願いする場合がありました。

また、カメラを載せている車輌に牽引する形で引っ張っている被写体の車輌を撮影する場合等は、基本的には牽引免許が必要になりますので、やはり「車輌部」さんへお願いする事が多かったと思います。


またまた余談ですが、牽引免許を持つ「車輌部」さんが牽引車輌と共に手配されてくる場合が基本なのですが、大抵はロケバスの運転手さんあたりが運転を務めます。

コレは、ロケバスの運転手さんが撮影現場を知っているし気心も知っているので、細かな指示がしやすいという利点がある為で、それが重なってくると経験値という更なる信頼になって行くのです。


●特殊

台湾でのロケーションドラマの撮影の際には、現地にマイクロバスはありましたが、マイクロバスを駐車出来る場所がロケ地には余りなく、ロケバスは基本的にハイエースとなりました。

と言ってもロケバスも機材トラックも全てがハイエースでした。


●番組専属

大抵の場合は、シリーズが続く限り同じ「車輌部」の顔ぶれが同じ番組シリーズを担当します。

コレは、カメラマンを含む撮影部や照明部や小道具、メイク、記録、演出助手(=助監督)、制作部も同じ事でしたから、別に珍しい事ではありませんでした。

アクションシーンにしか呼ばれない操演部よりは会う頻度が高いのが「車輌部」さんでした。

ロケーションになれば必ずお会いするのですから当たり前です。

同じロケ弁当を食べ、冗談も話し合う。

「車輌部」さんは、撮影現場では基本的には休憩です。

ですが、いざロケ地までの移動という仕事を「車輌部」さんがしている際や撮影所へ帰る際には、我々は基本的に熟睡ですw


勿論、ずっとロケーションが続く遠征ロケの場合等は文字通り寝食を共にします。

仕事内容的に一緒の撮影に同時参加はなかなかありませんし、シリーズでも無い作品であれば前から知っているという方である可能性も低いです。

それでも同じ作品を作っているスタッフなのです。

しかし、番組のスタッフクレジットに名前が載ることも基本的には現代でも無いようです。


●あとがき

私が30年前にロケバスの運転手としてお世話になった「木村さん(通称:キムさん)」が未だに現役で活躍されている事を先日知る事が出来ました。

少なくとも「仮面ライダーBLACK」を皮切りに「メタルヒーローシリーズ」を経て「平成仮面ライダーシリーズ」そして「令和仮面ライダー」に至る長い年月をロケバスの運転手としてスタッフ参加している筈です。

細い身体に長い髪を後ろで束ねて、口数が少なく物静かででも熱く語る人。

運転中はサングラス。コレが格好良い!

彼程「善人」という言葉が似合う人はいないと思っているし、濁点を無くして「仙人」という言葉でも似合う人はいないと、少なくとも私は思っています。

本人は、言葉少なに否定するでしょうけれどね。


キムさんに、そして縁の下で撮影隊を支えてくれている「車輌部」さんに今でも感謝しています。

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