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マイペース

「あらー?どうやら一成さんは世界の魔力を持ってはいなかったようですねぇ…?」


「しかしクレアさん。一成さんは教会内で魔法を使ってみせましたよ?」


「私の考えが間違っていたのでしょうか?」


「あれ?話聞いてない?」




 俺が目を覚ました時、外はもうすっかり暗くなっていた。

 見知らぬ天井に見知らぬ間取り。

 だが俺にかけられた布団の上に、さらに覆い被さるようにレインが寝ていた。

 その安らかな眠りを妨げないよう、優しく頭を撫でる。

 しばらくすると、部屋の扉がゆっくりと開いた。


「お目覚めですか、一成さん。」


 ルシウスが小声で俺に語りかける。

 その手にはブランケットがあり、それをレインに優しくかけてくれた。


「ここは?」


「教会内の宿泊室です。薬が入っていると分かった上で一気飲みするなんて、どうかしてますよ。」


 呆れた顔でルシウスは俺を見る。

 俺もそう思うよルシウス。


「だが俺は世界の魔力を持っていたんじゃないのか?お前の言葉を信じて俺は飲み切ったんだぞ?」


「責任転嫁しないでくださいよ……。しかしこの矛盾は説明がつかないんですよね。私も正直驚いています。」


 ルシウスは顎に手を当て、考える素振りを見せる。

 そうこう話していると、俺に覆いかぶさっていたレインが目を覚ましてしまった。


「んー……。一成さん?目が覚めたんですね……?」


 どうやらまだ眠気まなこのようだ。

 ふわふわした喋り方で俺に話しかける。


「心配したんですよ……。突然倒れるから……。」


 そこまで言って、また彼女は眠りについた。

 昨日も昨日、今日も今日でかなりハードな1日だったから、疲れたのだろう。


「そういえば、レインさんは世界の魔力をお持ちなんですね。それも不思議です。」


「その世界の魔力ってのはどうやったら扱えるようになるんだ?」


「それについては私からお答え致しますねぇ。」


 いつから部屋にいたのか、全く気配を感じなかった。

 部屋の隅で分厚い本を閉じてクレアがこちらに歩み寄って来る。


「世界の魔力は教会の人間が、長年の修行と継承の儀式を経てようやく扱えるようになるものです。ですが、ごく稀にその魔力を持っている人間が存在しましてねぇ。」


「つまりレインはそういう人間だという事か?」


「まずは巫女様。魔源自体が世界の魔力により構築されているものですから、その魔力を吸収する巫女様は生まれつき世界の魔力を有しておりますねぇ。」


 俺の質問はスルーされたが、巫女はソールだろう?


「同じ時代に巫女が2人居ることなんてあるのか?」


「次に元々世界の魔力を持った人間の血筋。教会関係者や巫女様の子孫などは持っている可能性がありますねぇ。」


「あれ?おーい?」


「一成さん。クレアさんは自分の考えを語りたい時マジで人の話聞かなくなるので、とりあえず今は聞きましょう。」


 俺は無言で頷く。

 スルーされてちょっと悔しい。


「最後に完全なる特異体質。初代の巫女、ルシア様がこれに該当いたしますねぇ。生まれ持った膨大な魔力の器と、神聖な土地で少しずつ湧き出る世界の魔力を吸収することにより、後天的に世界の魔力を扱えるようになった人間ですねぇ。」


「そういえばレインは俺と出会う前は神聖な山とか何とかに住んでいたな。」


「やはりそうでしたかぁ?という事は恐らく後天的に扱えるようになった方ですねぇ。」


「てめぇなんでこれだけ聞こえてんだよ。」


 都合の良い耳してやがるな。

 そう思いながら俺がタバコを取りだし火をつけると、クレアが俺のタバコを指さしてきた。


「その魔道具。それが何か関係していると思うんですけど、イマイチ分からないんですよねぇ……。」


 そう言い残すとトコトコとまた部屋の隅に行って分厚い本を読み始めた。


「あの人興味が無くなると本当に興味が無くなるんですよ。」


「同じこと2回言ってるぞ。」


「とりあえず今日はこのまま休んでください。あと、アーデルハイトと交わした契約は今回の裁判で正式なものとなりましたので、彼の資産は全て一成さんの物になってます。明日から大変だと思いますが、頑張ってくださいね?」


「あー、後のことなんにも考えてなかったなぁ……。どうしよう。」

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