審議
「それでは審議を始めたいと思いますねぇ。」
クレアは気の抜けた声で進行を始める。
目の前で人が殺されていることを全く気にも留めていない様子だ。
これが日常なのか?
「皆さんお顔をあげていただいて結構ですよ。」
そう言われるまで俺とレイン以外の周りの人間はずっとクレアに向かい手を合わせ拝んでいた。
ちなみに俺は足を組みながらタバコに火をつけていて、レインは周りが急に動いたことがよく分からずアタフタしていた。
「貴方が一成さん。こちらは貴方がアーデルハイトさん。お2人が今日審議されるということですねぇ。」
自己紹介した覚えはないんだが、真っ直ぐにこちらを見ながら言ってくる。
まぁ、他から聞いていたんだろう。
「私がした質問には、はいかいいえで答えてくださいねぇ。それ以外は認めませんのでぇ。」
クレアは書類のようなものに目を通しながら話す。
暫くしてまた俺の方に向き直した時、先程までとは全く違う目でこちらを見てきた。
吸い込まれるような漆黒。
聖職者の目とは思えない、光の無い目。
だがどこか機械的で、カメラのレンズを向けられているような感覚。
「まずは一成さんにお聞きしましょう。貴方は昨日、アーデルハイト邸に侵入、家主であるアーデルハイト氏を暴行後、契約書に無理矢理サインを書かせたということで間違いないですか?」
「いいえ。」
「貴様!!この期に及んで嘘を!!」
アーデルハイトではなく、後方の連中の1人が俺に食ってかかる。
だがその瞬間、クレアの付き人が動き、その男の頭が吹き飛んだ。
「審議中に私語は厳禁でございます。」
学ばねぇ馬鹿共だな。
余計な事を言わなけりゃいいのに。
「これは、全てが真実では無いという事ですねぇ。」
その通りだ。
俺は無理矢理アイツにサインさせた訳では無い。
アイツは命が助かるならと、自分からサインしたんだからな。
だが、さっきの返答で何故それが分かった?
「では、アーデルハイトさん。先程と同じ質問をしましょう。貴方は昨日、一成さんに屋敷に侵入、暴行され、契約書を無理矢理書かされた。間違いないですか?」
「そうだ!!俺はアイツに無理矢理!!」
「返答ははいかいいえで結構ですよ。答えは?」
「は、はい。」
「貴方、嘘を言ってますねぇ。どうしましょうか。」
すげぇな一瞬で嘘か誠か見抜きやがった。
これは多分何かしらの魔法だろう。
思うに見た人間が嘘をついているか見抜くことが出来る魔法ってところか?
「両者に聞いて、結論から言わせて頂きますねぇ。この提出書類には嘘偽りが書かれており、この審議では必要無いものとさせて頂きます。」
そう言ってクレアは恐らくアーデルハイトが提出したであろう書類をその場でビリビリに破いて捨てた。
そして一言。
「ここから先は、世界の魔力を使わせていただきますねぇ。」
世界の魔力?
俺の頭の上にハテナマークが浮かぶ。
それを悟ったかのように、ルシウスが横から呟いた。
「この世界には魔力が4系統存在します。上位のものから『世界の魔力』、『地脈の魔力』、『大地の魔力』、そして『大気の魔力』。今回貴方の審議に使われる『世界の魔力』は、何人も侵すことのできない聖域から持ち出された魔力の根源ということになります。詳しい話はこの審議が終わった時貴方が死んでいなければお伝えしますよ。」
「ルシウス。お話は終わりました?」
そう言ってクレアがルシウスを見つめる。
ルシウスはかつてないくらいに緊張した面持ちで背筋を伸ばし、膝において握っている手が震えていた。
「はい。失礼致しました。」
「よろしい。再開いたしますねぇ。」
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