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 帝国城内、討伐隊隊長室にて。


「大丈夫かしらね、一成達。」


「大丈夫ですよ。一成さんなら。」


「でも依頼主、あの死体集めが趣味のアーデルハイトでしょ?冒険者嫌いで雇った冒険者に無理難題押し付けることでも有名よ。」


「だからこそ一成さんに行かせたんです。アーデルハイト卿は黒い噂が絶えませんから。」


「アンタもしかして狙ってあの依頼受けさせたの?」


「私は少しジークさんに話をしただけですよ。あの依頼を一成さんに通したのは受付の方ですし、それを承認したのはソールじゃないですか。」


「アンタ、だから友達いないのよ。」


「ソールにだけは言われたくないですけどね。」




「お前ら、普通のグール共ならどうにかできるか?」


 危機的な状況の森の中、俺達はグリフォンの猛攻を躱しながら会話する。


「強力な個体が居なければ時間稼ぎ位はできるかと。」


「なら俺がグリフォンを殺るまでの間他のグール共を抑えてくれ。」


 俺にとってはグリフォンよりも、その後ろの連中の方が能力が未知数なので戦いづらい。


「お時間は?」


「タバコ1本吸い終わるまでだな。」


 そう宣言し、グリフォンと一気に距離を詰める。

 あえてグリフォンの注意をこちらに向かせ、一直線後方で控えていた他のグール共と距離を置かせた。


「よしよし、こっちだ!!」


 俺がグリフォンを挑発し、完全に引き離したのを確認した後、今度はランスがグールの注意を引きながらゆっくりと後退する。

 距離をじわじわと縮めてくるグールを、1体1体マーリンが炎の魔法で燃やしていく。

 しっかり連携が取れているので、安心してみていられるな。


「一成さん!!」


 レインの声が頭に響く。

 その瞬間目の前のグリフォンが大きな足を上げ、俺を踏み潰そうとした所をギリギリ回避できた。


「あっぶね!!」


 向こうに気を取られていて全然集中できてなかったな。

 レインには感謝しかない。


「さてと……。」


 グリフォンの振り下ろした前足の真横、死角になる位置で俺はゆっくりとタバコを取り出し火をつける。


 1吸い。


 2吸い。




「んで、なんでルシウスはそんなに達観してられるのよ。」


「エクスとの戦いの時、一成さんは一撃でエクスの盾を凹ませましたよね?」


「うん。あの一撃は確かに凄かったわ。」


「エクスはグリフォンと正面から戦っても勝てる実力者です。あの盾はグリフォンの攻撃でも平然と反射できるだけの強さを持った盾なんですよ。」


「つまり?」


「一成さんはあの段階で既に、グリフォンを超える力を持っていた。」




 俺が放った正拳突きは前足ごとグリフォンの巨体を平然と浮かせ、そのまま数メートル後方へ吹っ飛ばした。

 正直ここまで威力が上がっていると自分でも思わなかったので、俺もレインも、グリフォンでさえも驚いている。


 自分の握った拳を見つめながら、俺は少し物悲しくなった。


「成程な。俺の体は段々と、人間を辞めちまってるって事か。」


 当初はオオカミにすら苦戦し、何度も死にかけた。

 その後グリフォンに軽くあしらわれ、レインを傷つけられた挙句、ルシウスが来なければ間違いなく死んでいた。

 エクスには辛うじて勝ちはしたが瀕死の重症。

 エルフの女に殺されかけ、レインのおかげで一命を取り留めた。


 強くなっている自覚はあったが、俺の周りにはそれ以上に強い奴らがウヨウヨいた。

 この世界に来てたった数日。

 ただの力無い人間だった俺はいつの間にか、自分を遥かに超える巨体を持つ魔物を一撃で吹っ飛ばせるほど成長してしまっていた。

 生きるために、守るために。

 そしてその魔物を吹っ飛ばしてもなお、俺の体は今までのように動けなくなる事はなく、多少魔力を残した状態で立っていられる。


「一成さん……。」


 そんな俺の心境を知ってか知らずか、レインが呟く。

 俺が強くなれたのは本当にレインのおかげだ。


 そして俺が今手に持っているコイツ。

 ある意味では、百害あって一利なしなのかもな。


 俺はもう一度タバコを吸い、倒れたグリフォンに馬乗りした状態で今度は叩きつける為に拳を振り上げる。


「おっと、タバコの灰が落ちそうだ。


 ……灰か。


 今の俺の様だな。


 力では人間をやめ、心では化け物になりきれない。


 正義のヒーローになんてなる気もないが、悪魔になる勇気もない。


 白でも黒でもない。


 中途半端でどうしようもない。


 なら、そんな灰色の俺が今出せる最高の一撃がコレだ。」


 咥えたタバコの灰が落ちる。


 グリフォンにその灰が触れると同時に俺の拳もゆっくりと振り下ろされた。


 灰のように、重力に逆らうことなく、ただ落ちるように腕を振り下ろすだけの一撃。


 この世界に来て常に感じていた自分の非力さを押し潰す、圧倒的な力。


 白にも黒にも染まらない、燃え尽きるタバコの灰のような、俺が出した1つの答え。



 その衝撃で木々がなぎ倒され、鳥達が飛び立ち、大地が震えた。



「【灰の一撃】(グレースカッシュ)!!」

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