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我儘の代償

「2人とも、何してるんですか?」


 ルシウスが来るのがもう少し遅ければ俺は完璧にこの女にジャーマンを決められた。

 ソールは机の上から降りないし俺に謝罪する気もなさそうなので、背後に回り、腰に腕を巻き付け、そのまま持ち上げるところまでは行っていた。


「男子中学生ですかあなた達は。」


「はい、すみませんでした。」


 2人揃って椅子に座りながら足を組み、机に肘を置いているルシウスの前で正座させられている。

 暴れ回った結果ソールが片付けていた資料をバラバラにしたり、手を着いた拍子に本棚を1段へし折ったりしてたから怒られるのは当然だろう。


「さて、今回の騒動の被害と、得られた物を2人に話しましょうか。崩していいですよ?」


 俺たちは言われるがまま、椅子に腰かける。

 ライターが欲しい。


「あ、一成さん。これ、ミラさんからです。」


 ルシウスがひょいっとこちらに投げてきたのはたった数時間で完璧に仕上がったライターだった。

 何が完璧かって、表面のサビだけを落とし、凸凹や傷がついたままになっている事だ。

 ヒンジのところは流石にはんだ付けされているが、それ以外は完璧。

 火の付きも前より良くなっているし、ライターを開けた時の音もそのまま。ヤスリも回しやすくなっている。


「あの姉さん、いい仕事するじゃねぇか。」


「ミラさんは完璧な仕事をモットーにしてますから。」


「あれ?一成、蓋の付け根に着いてるそれ、黒曜石じゃない?」


 よく見るとヒンジの部分が黒く輝いている。

 ルシウスの剣やベリアルの棒などと同じ素材のようだ。


「どうやらミラさんは本当に一成さんを認めているようですね。」


「黒曜石か……」


 黒曜石

 ガラスのように美しい断面を持つ石。

 性質は非常に脆く、落としただけで割れてしまうほどである。

 しかし、その断面は非常に鋭く、割っただけでもナイフとして使える。

 金属加工が進歩したおかげで日の目を見る事はほとんど無くなったが、俺が元いた世界では今でも少数民族が伝統的な武器として使用したり、断面の美しさでインテリアとして使われたりしている。



「実は黒曜石は非常に魔力伝達が良いんです。魔道具を作る上では最高クラスの素材と言っていい。」


「んじゃあなんで隊長達しか使ってないんだ?」


「理由は単純。希少な事と、加工できる人間が極わずかしか居ないことです。卓越した加工技術を持つドワーフ族ですら片手で数える程しか加工できないんですよ。」


 それをあのオカマはやってのけたわけか。確かに帝国一の技術力だ。てかそんなもの俺に作って何が狙いだ?身体か?


「でもこれ脆いだろ?」


「普通の原石の状態だと物凄く脆いです。でも形状記憶の魔法を使えば問題無いんですよ。黒曜石にそれが出来る技術者が少ないって話ですね。」


 形状記憶魔法何てものもあるのか。

 だからルシウスもベリアルも武器をあれだけ振り回して問題無いんだな。



「さて、話が一段落着いたところで、今回の騒動の話です。」


 ソールは真剣な表情で膝に両手をつけながら、ルシウスは手元の資料を見ながら話し出す。

 そんな中俺は椅子に浅く座ってタバコを吸い、新しくなったライターをカチカチしながら適当に話を聞く。


「今回の騒動、結果的に死者3名、意識不明者10名。負傷者は私や一成さんを含めて約50名。全て帝国側の被害です。エルフ側の被害は……言わずもがなですね。」


「そんなもんで済んだのか。良かったじゃねぇか。」


「良くない!!3人の死者と10人の意識不明者を出してるのよ!?」


 机を叩きながらソールが怒鳴る。巫女としても皇帝の娘としても許せる事では無いのだろう。

 ルシウスはそっと資料を机の上に置き、続けた。


「ハッキリ言いましょう。死者の内2名は正門前の守護兵でしたが、残りの1名と意識不明者10名は正門前近辺のご高齢の方たちです。死因は魔力枯渇によるショック死。要は、レインさんの大規模な魔力吸収が原因です。」


「そうか。子供じゃなくてまだ良かったよ。」


「あんた!!」


「あなたは!!どうしてそう他人事何ですか!!私たちが、」


「もっと強ければ出さなかった被害か?お前は何も分かってねぇな。」


 俺はタバコの灰をその辺にあったコップに落とし、タバコのフィルターを噛み締めながら続ける。


「あの場でレインが来なければ、俺達は死んでいたかもしれない。今回の死者や意識不明者は言わば俺たちの身代わりになってくれたって訳だ。」


「なら尚のこと彼らに敬意を!!」


「物言わぬ死者に何が出来る。人々の先頭に立ち、魔物と戦えるか?世界の魔源を収め、世界が救えるか?死者に敬意を払うのなんて全部終わった後で良い。俺達がやるべきことは死んだ人間に報いる事だ。死んだ人間の数を数えて墓を立てることじゃない。」


「あなたが言っていることは正論かもしれない。でも、私はそんなに冷たくはなれない。」


 机の上の書類をグシャグシャに握りながらルシウスは悔しそうに顔を伏せていた。

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