世界の為、人間の為
「失敗したわねぇ。」
ソールに合わせて村を出たおかげでその日は野宿になってしまった。
今夜はラックが薪を集めて俺が火を起こし、ルシウスが調理するお決まりの流れである。
「ソールの言葉には感動しましたよ。あの場でいがみ合って申し訳ないです。」
「そうだな。俺もすまなかった。」
俺とルシウスは互いに謝罪し、自分達の大人気なさを後悔した。
「かっこよかったですソール。それにしても良い匂いですねぇ……。」
「もう少しで焼けるからちょっと待ってろ。」
レインはソールの隣でヨダレを垂らしながら丸太に腰掛け、今か今かと焼いている肉の方向を向いている。
「そういえば一成さん。こんなに高級そうな肉、どこで手に入れたんですか?パンや野菜類も沢山ありますし。」
「村の倉庫からパクってきた。」
「はぁあ!?何やってるんですか!!」
その場にいた全員が立ち上がり、俺を鬼の形相で睨みつけているが、俺は肉を焼くことに集中する。
「スマンが俺はお前達が思っているよりずっと冷たい人間なんだ。他人より自分達が今日食う飯の方が大事なの。」
「貴方にはつくづく呆れますよ……。」
全員が最早諦めている様子で、でも少し笑顔が戻ってきた。
その後俺達はパクってきた食べ物を容赦なく全て平らげ、満腹のまま床に就く。
疲れて全員すぐにぐっすり眠ったが、俺だけは目が冴えてしまって少し離れた場所でタバコに火をつけた。
「これが現実か。向こうの世界に居た時では考えられねぇな。」
「その通りだよ。それを見てどう思った?」
「……いつかのイマジナリー野郎か。」
3回目ともなれば振り返るまでもなく声だけでわかる。
存在しているように見えて恐らく存在していない人間。
「どう思うも何も、全部助けたいとかそういう感情は結局殆ど湧かなかったんだよな。」
「なら、見殺しにしたかった?」
「それも違う。ただ、結果として俺がやった事って先延ばしなだけで、いずれ村は同じ目にあうって思えちまってな。虚しさが強いかな。」
「虚しさ、か。」
少し寂しそうにイマジナリーは答える。
「んで、なんか用か?まさかそれだけ聞きに出てきたわけじゃねぇだろうな?」
「僕は君が道に迷った時、君を導く為に現れる。つまり君は今迷った訳だ。君は自分がこれからやる事の大きさに今更気付いた。」
「俺が何に迷ったって言うんだ?」
「世界の現状を見て、その世界に暮らす人間達を見て、命を懸けてまで世界を救うべきか迷ったはずだ。」
確かにイマジナリーの言う通りだ。
正直俺はあんな連中なら死んでも構わないとさえ思っていた。
「結論から言おう。死んでも構わない。有象無象は必要無い。君達さえ生き残っていればね。」
「正直で白状な奴だな。」
「僕が導くのは世界を救う道だ。ただ、僕が言っているのは構わないと言うだけだ。死を望んでいる訳では無い。」
「つまり結局のところ俺の判断に任せるって事か。」
イマジナリーはクスクスと笑い、俺の背中に背中をもたれさせた。
結論は平行線のまま、俺も溜息をつきながら次のタバコに火をつける。
「君達さえ無事なら全ての結論は正解、誰かが欠ける選択肢が不正解という事だ。君達の貴重な命と時間は世界を救う為にある訳であって、人間達を救う為にある訳では無い。」
「世界を救うことを優先しろ、と。」
「世界と人間達を天秤にかけた時、世界を最優先に考えるべきだ。そして君は迷わず世界を優先してくれるだろう。」
当然だろう。
世界がなければ人間達なんて存在できないのだから。
「この先また迷うことがあればその判断が世界の為か、人間達の為か考えてみると良い。」
それだけ言い残すとイマジナリーは立ち上がり、夜の闇の中へと溶けていく。
足音だけがしばらく聞こえたが、俺のタバコが吸い終わる頃には辺りは静けさを取り戻していた。
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