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死神少女とメイドとポトト  作者: misaka
●始まりの森にて

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○現状の把握は大切だと思うの

 雲一つない天の下。森を迂回するように草原を進むと、遠く向こうに町……というより村のようなものが見えて来た。見れば、森から村に続く1本の街道もある。鳥車が2台、どうにかすれ違えるぐらいの大きさだと思うわ。

 メイドさんと彼女に引きずられるポトトと私。3人で村を目指すその道中。私はメイドさんを質問攻めしていた。


「メイドさんって何者?」


 歩くたびに揺れる黒い前髪を払いながら、尋ねる。淡い赤色に染められた柔らかな生地の半袖。ポーション類をひっかける腰ヒモがいくつかついた茶色い短パン。そして全身を覆う、魔法使いの人たちが着ているような水色のローブ。それが、メイドさんが私に着つけた服だった。


わたくしはお嬢様の忠実な従者です。それ以上でも、それ以下でもありません♪」


 声を弾ませながら楽しそうにメイドさんが答える。彼女は変わらず黄緑色のワンピースにフリルをあしらった前掛け、腕には肘まである白い手袋というスタイル。先が絞られたフワッと膨らんだ半そでがより柔らかさを印象付けている。


「メイドさんも私と同じでホムンクルスなのよね?」

「はい、敬愛するご主人様に作られた、完全無欠のホムンクルスです♪」


 このメイド、自重もせず言い切ったわね……。彼女が作られたのは15年ほど前。“ご主人様”と彼の友人である“召喚者様”の共同合作らしいわ。召喚者を毛嫌いしているメイドさんが珍しく、親しみを込めて言っていたのが印象的ね。服装や見た目、『メイド』という名前もその“召喚者様”の影響を受けているみたい。


「今はいつ?」

「新暦349年、9月の11日です♪」


 歩くたびに揺れる白金色の背中まである髪や黄緑色のスカートに視線を誘われながら、彼女の返答を吟味する。


「そう……最初の召喚が行なわれてからもう300年以上になるのね」


 最初の召喚者による魔王討伐。その後の目まぐるしい技術革新によってフォルテンシアにある国々は、大きな経済的成長を遂げた。その時に歴史の転換点という意味で、新たな暦として『新暦』が生まれたらしいわ。


「確か私たちが今使っている共通語や文字、単位なんかもその時に生まれたものだったかしら?」

「はい。フォルテンシアに元々あった単語、言葉がニホン人が使うそれらに合わさったものが、共通語ですね」


 ポトトをはじめとした動植物の名前なんかはもともとフォルテンシアで使われていたもの。一方で、時間や単位、ひらがなや漢字、他にもソファやクローゼットなんかの「カタカナ言葉」と召喚者たちが呼ぶものは、この300年で浸透したものね。

 最初に教育機関を整備しようと言った過去の召喚者たちの功績だと思うわ。ニホンはきっと、みんなが博識でいい国なんでしょう。だからこそ、どうしてイチマツゴウのような人物が生まれるのかは、謎なのだけど。


「1年が360日。1日は24時間で……。そう言えば、今は何時ごろなの?」

「私の体内時計では11時25分になったところです。デアの位置からしても間違いありません♪」


 晴れ渡る青空に輝く恒星デアを見上げたメイドさんが自信たっぷりに答えてくれる。フォルテンシアは恒星デアを中心に宇宙を周回する惑星なのだと、召喚者たちが解明してくれた。そしてフォルテンシア自身もナールという衛星を持っている。夜になればデアに変わって、ナールが真っ暗な世界をほのかに照らしてくれるでしょう。まだ夜の景色を見たことが無い。どんな感じなのかしら。少し楽しみね。


「お昼時なのね。どうりでお腹が空いたわ……」

「それはいけません! ちょうど手ごろな()()があるので、早速、調理します♪」


 街道から少し外れた大きな岩のそばに移動した私達。日が当たらないために草が生えず、むき出しになった地面。その上にメイドさんが〈収納〉から薪や石といった焚き火セットと調理器具を取り出した。何もない場所から現れるそれらに私が改めて目を丸くしていると、包丁を手にしたメイドさんが食料――ポトトのそばに立った。

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