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死神少女とメイドとポトト  作者: misaka
●ちょっと長い寄り道 (リリフォン→ディフェールル)

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○スキルの話

 11月9日。朝9時30分。リリフォンを出た私たちは、昨日買って外に止めてあった鳥車へと乗り込んでいた。念のため、と言ってメイドさんが再度、鳥車を隅々まで見ている。……車輪の裏まで見る必要、あるのかしら? 几帳面過ぎる気もする確認作業を10分ほどで終えて、いよいよ出発。

 手綱はいつも通り私が握って、メイドさんが隣に。荷台にサクラさんという陣形ね。奮発した甲斐あって、今回は雨から荷台を守るほろ付きのものを買った。それだけじゃないわ。


「ゆ、揺れない……?!」


 車輪についた機構とメイドさんお手製のクッションのおかげで、荷台や御者台に伝わる揺れが軽減されていて、全然お尻が痛くない。これなら最悪、別荘までの長距離移動もどうにかなるんじゃないか。そう思えるほどに、乗り心地が良かった。

 だけど、こう、ぬるっと町を出発することになぜか違和感がある。どうしてか考えてみれば、今までは見送りがあったからだ。例えばポルタだとライザさんだったり、イズリさんだったり。ウルセウならアイリスさんね。その土地で縁を結んだ人たちがいたけれど、リリフォンではいない。せいぜい、ギルド支部の男性職員さんのハリガーさんくらい。


「なんだか、これまでとは違う意味で寂しいわね」

「んふ♪ 今回は、お嬢様が泣くこともなさそうで安心です」

「んな?! 私がいつ、泣いたっていうの?!」


 メイドさんと話しながら、霧のリリフォンを進んでいく。南北にまっすぐ走る巨大な道。時折、他の馬車や牛車とすれ違うけれど、数は少なそうね。


「ひぃちゃん、メイドさん。これからどこに行くの?」


 荷台から御者台まで身を乗り出して聞いてきたのは、サクラさん。旅は初めてだと言う彼女には荷物番という名目で、荷台で休憩してもらっていた。

 サクラさんの問いに答えたのはメイドさんだった。


「ディフェールル、という場所ですね。“魔法の町”とでも言いましょうか」


 手綱を握っているのは私だから、メイドさんはきちんとサクラさんと目を合わせて話している。最初は召喚者だから毛嫌いするものと思っていたけれど、意外とサクラさんに対するメイドさんの対応は物腰柔らかなものだった。

 そのおかげで、サクラさんの方の緊張も解けて、2人は打ち解けたと言っても良い関係になっていると私は思うわ。


「魔法! 異世界って感じ!」

「サクラ様も魔法は使えるかと思います。試しに初歩的な水の魔法【ウィル】を使ってみてはどうでしょうか?」

「あ、ひぃちゃんがいつも使ってるやつですね!」


 茶色い瞳を輝かせるサクラさんとメイドさんの話は続く。


「魔法って、スキルを基にわたしみたいな召喚者が作った物、でしたっけ?」

「いいえ。各地で使われていたものを召喚者が編纂へんさんした……まとめた物、というべきでしょう」


 指を立てて説明するメイドさん。実はメイドさんのこの仕草、何かを教えてくれる時の癖だったりするの。いつも澄ましたメイドさんが少し得意げにする姿は、可愛らしいと思う。

 目を閉じて、何かをそらんじるようにメイドさんが続ける。


「そもそもスキルは魔素まそと呼ばれる、フォルテンシアを満たしている物質によって発現します」


 これはステータスについて聞いた時に、少し触れた内容ね。その魔素との相性がステータスにある魔力の値に関係しているとか、何とか。また、魔素がステータスの数値を身体能力として身体に反映させているとかね。


「物が地面に落ちるように。高い所から低い所へ水が流れるように。スキルや魔法も魔素の働きを通して世界に様々な影響を与えるわけです」

「プログラミングとか、ゲームとか。そんな感じ?」


 サクラさんの質問に、少し悩む素振りを見せたメイドさん。


「申し訳ありませんが、ゲームについての知識しか持ち合わせておりません。ですが、わたくしを造られた召喚者様もそのようなことをおっしゃっていたような気がします」

「ほへ~。フォルテンシアは不思議な世界なんだね」


 間抜けな声を漏らしながら、ゲーム? のようだと言う説明で納得したサクラさん。

 私達としては、スキルを使えば事象が発生する。のだけど、チキュウではそうじゃないみたい。じゃあ、スキルという概念を地球に持ち込んで、ゲーム? にしたのは誰なのかしら。案外、フォルテンシアからチキュウに行った人が伝えたのかも。そうだとすると、サクラさんがチキュウに帰ることが出来る可能性があると言って良いんじゃないかしら。


 ついでに、スキルは同名だけど内容が全く異なることもあるわ。例えば私と、恐らくメイドさんも持っているだろう種族由来のスキル〈魅了〉。私達のものは相手に好感を抱かせる程度なのだけど、人によっては相手を意のままに操ることが出来るものもあるらしい。サザナミアヤセが持っていた〈魅了〉がまさにそれね。

 それに、私達の〈魅了〉はスキルを使用する・しないを選べない常時発動型に分類されるけれど、スキルポイントを使って任意で使用できる使用型のものもある。

 スキルはレベルと共に成長するもの。同じ名前でも、同じ効果を持っているとは限らない。スキルの奥深い所ね。

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