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死神少女とメイドとポトト  作者: misaka
●ウルセウにて

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○小さいポトト!

 最初に解決したのは、ポトトの厩舎きゅうしゃに関する問題だった。というのも――。


「『ポトト、わたくしの目を見て頂けますか?』」

『クル?』


 道路わきに鳥車を止めさせたメイドさんがポトトに尋ねる。そうしてポトトがメイドさんと目を合わせた瞬間、メイドさんの翡翠の瞳が輝いた。〈鑑定〉を使用したみたい。使われたときは緊張のせいで気づかなかったけれど、はたから見ていると美しい翡翠の瞳に幾何学的な模様が浮かんで見えるから、なお一層きれいに見える。


「レベルが低かったので、この3日間で7になっていますね。個体差はありますが……。『ポトト、小さくなれますか?』」


 メイドさんが後半の語気を強めて、ポトトに尋ねる。すると、首を傾げたポトトの体が小さくなっていく。やがて、その大きさは先ほど見た妖精族と同じ手のひらサイズ――20㎝ぐらいになった。


「な、何をしたのメイドさん?!」

わたくしは何も。〈意思疎通〉を使用して、ポトトに〈縮小〉のスキルを使わせただけです」


 〈意思疎通〉は自分の言葉を相手に届けるB(ランク)スキル。相手の言葉を聞き取る〈言語理解〉と対になるスキルね。いえ、そんなことより。……小さいポトト! 可愛いわ!


「ポトト、あなた凄いわ! こんなこともできたのね!」


 足元で小首をかしげる小さなポトトを両手で抱え上げて、褒めてあげる。うちの子、すごすぎない?!

 嬉しすぎて思わず小躍りする私を、咳払いをしたメイドさんがたしなめる。


「はしたないですよ、お嬢様。それに、多少個体によって差はありますが、どのポトトも使用できるスキルです」

「でも! これで宿でも一緒に居てあげられるわ! そうよ、それに食費だって少なく済むんじゃない?!」


 身体が小さくなったのだから、胃袋だって小さくなっているはず。事実、こうして体重は減っているわけだし。そんな私の天才的な閃きに、メイドさんは呆れたようなため息をついた。……主人に対して失礼じゃない?


「〈縮小〉のスキルは体の大きさを10分の1にするスキルです。が、それは体内に入れたものにも適用されてしまいます。こういえばお分かり頂けますか?」

「……詳しくは分からないけれど、どうせ同じ量の食事が必要だって言いたいのでしょう? メイドさんの態度をみれば分かるわ」


 相対的に食べものが大きくなったように見えて、たくさん食べた気にはなれる。けれど、結局お腹いっぱいになるには同じ量の食事が必要。そう言うことらしいわ。

 ふと気になった「人をくわえたポトトがスキルを使ったらどうなるの?」という私の問いには、人も小さくなるという答えが返って来た。


「じゃあ、小さくなった状態で吐き出された人間は?」

「んふ♪ 知的好奇心に目を輝かせるお嬢様も素敵です♪ 確か、ご主人様が持っていらした資料には――」


 そこから時間をかけて、懇切丁寧に説明してくれたメイドさん。けれど、難しすぎてよくわからなかった。ひとまず、ポトトの〈縮小〉の影響を受けたものは、そのポトトが元の大きさに戻らない限り、小さくなったまま。ポトトが何らかの理由、例えば気を失ったり、死んでしまったりでスキルを使用できなくなった場合も元の大きさに戻る。そういうことみたい。


「これを利用した家屋への侵入、窃盗被害があってからは――」

「ありがとうでももういいわメイドさん。分からないのに聞いた私が良くなかったわね」

「そうですか? かしこまりました」


 他にもポトトがくわえて小さくなった食べ物を人が食べるとどうなるのか、なんかも気になるけれどそれは今度にしましょう。

 残す課題は2つ。宿の捜索と、働き口の確保。日も暮れ始めている。差し当たっては今日の宿を探しに、私、メイドさん、手のひらサイズのポトトの3人でウルセウを巡ることにした。

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