第八話 シスコン が あらわれた!
ジャンル別歴史(文芸)で日間3位に入りました!
見間違いかと思って二度見しました。
たくさんの応援ありがとうございます!
誤字脱字を指摘して頂いた方々、ありがとうございます!
順次修正させて頂いております。
のぶあき は やじん から ひと に しんか した!
伸び放題だった髭もさっぱり剃って、ようやく人に戻りました。
利家くんから抜くのと剃るの、どっちがいいか聞かれて剃るの一択だったんだが、小刀でてくるとは!剃った後がスースーするのは髭がなくなったからだけではあるまい。
ちなみに利家くんは髭が薄くてちょいちょい抜くくらいでどうにかなるらしい。しかもまつちゃん手ずから抜いているとか。ごちそうさまです。
ちなみに利家くんの言っていた身形を整える、は主に服装と髪型のことだったらしい。そんな立派な髭を剃るなんて勿体ない!とまつちゃんと共に力説されたが、俺自身が気になるのだからしょうがない。どうせほっといたらすぐ生えるんだから、伸ばしたくなるまではさっぱりさせておくれよ。
取り急ぎ髪を結い上げ、身体を手拭いで拭き、服は利家くんの小袖を借りた。俺が身長177cm、利家くんの方が若干背が高いがほぼほぼぴったりだ。
まつちゃんからも太鼓判を頂いたので利家くんと連れ立って本丸を目指す。
その道中やたらとすれ違う人たちから視線を感じるんだよなぁ。
「なぁ前田殿。先程は似合っていると言ってもらったけど、やっぱりどこか変かなぁ?さっきからめっちゃ見られてるんだけど?」
そうきょろきょろしながら尋ねると利家くんは一瞬考える素振りを見せたがすぐに笑いだす。
「あぁ、それは俺と柳殿が連れ立っているからだな。柳殿は俺と背丈が変わらないからな。周りからすると壁が歩いているように見えるのではないかな」
そう言われてみて改めて周りを見渡すと、確かにみんな背が低い。俺より背の高い人は利家くんだけで、他はみんな160cmあるかないかだ。あれか、栄養事情とか西洋の遺伝子が入ってきていないとかかな?
そんな中180cm近い2人が並んで歩いていたらそれはそれは威圧感が凄いだろう。
道理で道往く人と正面からすれ違わない訳だ。
「三郎様も中々の偉丈夫ですが、柳殿を見た時の反応が楽しみだな。俺はちょっと前までは皆と同じくらいの背丈だったので、背丈を抜いてもあまり驚かれなかったのだ」
くつくつと悪戯小僧のような顔をして笑う利家くんを見て、15歳らしいところを垣間見たような気がした。
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本丸に着くと恒興さんがいて部屋まで案内してくれることになった。
「想像していたよりも到着が早くて驚いていますよ」
「勝三郎殿、聞いてくれよ。柳殿と並走していたら馬の方が先に疲れてしまったんだ。俺がいなかったらもっと早い到着だったろうよ」
それを聞いた恒興さんが目を細める。……なんか吟味されている気がするな。
数秒居心地の悪さを感じながら待っていると、恒興さんがにこやかな顔に戻り、ついてくるように言われる。
道中会う人会う人にギョッとされるのはもう慣れた。たまにガン飛ばしてくる人もいたけど、基本みんな避けていくな。
後で聞いたところによると、あんまり変な絡み方をすると利家くんがすぐにブチ切れて暴れるので、何か沙汰があるまでは客人は遠巻きにするのがこの城の基本対応だとか。利家くんヤンキー扱いじゃん!
部屋に着いたら10人ほどが既に待っていた。
礼儀作法?とりあえず礼に関しては利家くんの真似をしておくよう恒興さんから言われた。
曰く、市からも報せに走った兵からも「野人が来る」と情報が入っているらしく、礼儀作法はそれ程気にしなくて良いとのことだった。いや、気楽ではいいけどなんか複雑だな、おい。
信長を待っている間も恒興さんと利家くん以外の人からはビシバシ視線が飛んでくるし、無言の圧力も感じる。
早く!信長さん早く来て!おたくの部下たちからの視線が痛いのぉ!
それからどれくらい待っただろうか。
奥の襖が開くと明らかに他と雰囲気の違う若い男と、和装人形のような女の子が部屋に入ってきた。
ってか、あれ市か!?天使が女神にクラスアップしているじゃねーか!もう頭がどうかなりそうだ。ロリコンとか年下趣味とかそんなチャチなもんじゃあ断じてねぇ。もっと神々しいものの片鱗を見たぜ…!
信長そっちのけで市を凝視していると、その視線に気付いたのか市がにこやかな笑顔を向けてくる。尊い。
するとそれを見かねたのか、恒興さんが咳払いをして俺は意識を戻される。
「三郎様、こちらにいますのがお市様を不逞の輩からお救い、城への帰還に一役買った柳藤十郎信晃殿です。」
「で、あるか」
空気がひりつく。え、なんか怒ってる?
たった一言だけのはずなのに、周りの人たちも心なし顔が青醒め、身体が震えている。
え?ひ、ひょっとして威圧スキルとか持ってる?背筋が寒いとかいうレベルじゃねーぞ!
〜ステータス〜
名前:織田三郎信長
レベル:12
年齢:20
所属:織田弾正忠家
職業:戦国大名
称号:織田弾正忠
状態:健康
体力:70/70
気力:80/80
妖力:-
力 :18
頑強:24(24+4)
敏捷:14
器用:18
知力:21
精神:25
幸運:30
忠誠:-
技術:剣術(太刀、小太刀)、体術
〜装備〜
主武器:へし切り長谷部(攻撃力5+1)
副武器:なし
頭:なし
胴:木綿の小袖/肩衣(頑強+2)
腕:なし
腰:木綿の袴(頑強+1)
脚:木綿の足袋(頑強+1)
装飾品1:なし
装飾品2:なし
威圧確認できず!素の圧力です!うっそだろ、人にこんな圧力出せんの!?
「柳と言ったか。俺は織田三郎信長だ。此度は誠に大儀であった。市が無事に帰ってきたことは喜ばしいことだ」
絶対大儀とか思ってないよね!最早殺気だよこれ!
なんかドジ踏んだ?あ、市に対して無礼だったとか
?さっきの市の笑顔は女神の微笑みではなく、処刑人の嘲笑みだったのか?
完全に場の空気に呑まれた俺が混乱していると、ようやく市から救いの手が入った。
「兄上、そんなに藤十郎にあたらないでくださいまし。藤十郎がいたから妾は無事にここにいるのですよ?」
「む…そうだな…」
その言葉に殺気が霧散する。
お市様かっけぇぇぇ!この空気の中でよく言ってくださいました!あなたが地獄から俺を救ってくれる女神様や!
だが続く言葉でまた地獄に突き落とされる!
「なので褒美として藤十郎には妾の側付きとなってもらうというのはいかがじゃろう?」
これは名案と言わんばかりに手を合わせて満面の笑みの市かわいい。
「ふむ、柳殿。市に相当気に入られたな。この申し出、どうする?」
やべぇ、副音声がばっちり聞こえる。やっぱ信長さんガチシスコンじゃんよー!
このままではマジで殺されてしまう。いや、ステータス的に死なないかもしれないけど、それでも安心できない凄みが、信長さんには、ある!
ここは速やかに戦略的撤退を図らねば!すまん市、俺は自分の命が惜しい!
「あ、ありがたき幸せ。ですが、姫様を守るにあたり俺の力量もわからずに取り立てることは、他の家臣の方々の面目も立ちません!ですので今回は辞た「では御前試合をして、藤十郎の力を見せてもらうと良かろう?」いを、えええ!?」
のぶあき は にげだした! しかし まわりこまれてしまった!
ダメだ市の目が絶対に逃さんと爛々と輝いている!
「良かろう、皆のものこれより柳殿を我が家で召し抱えるための力試しを行う!相手は三左に務めさせよ!早急に支度をせい!」
「「「ははぁ!」」」
「ははは…」
畏る家臣団の声に隠れて俺の乾いた笑いは誰にも聞かれぬまま事態が進んでいくのであった。
ところで三左って誰?
サブタイトルって難しいですね。
一つの場面に絞ると本文が短くなるし、複数の場面をまとめると、どれにしようか悩みます。
全体一括りのサブタイトルだと長くなるし…
次話で第一章は完結予定です。
ちなみに投稿直後に改訂が入っているのは、まだルビのシステムをきちんと理解していなくて投稿後に確認してから修正している為です。




