第三十二話 はんらん の てんまつ
遅くなりました_(:3 」∠)_
週一ペースは何とか守りたいところです…
〜清洲城 御館〜
「以上が十郎左衛門殿から聞き出した内容となります」
御館の部屋には信長を筆頭に、集まれるだけの家臣団、そして怪我の重い一色左京大夫(斎藤義龍)の名代として、竹中半兵衛がいた。
叛乱を起こした信清は俺の手で清洲へと移送され、恒興さんたち諜報部隊による尋問が行われた。
移送されてから僅か5日でこうして織田家の中核メンバーに共有されているのだ。尋問の苛烈さは推して図るべし、だ。
今回の信清の叛乱は美濃一色右兵衛大夫義糺と結託したものだった。
信長を倒せば尾張の国の統治を信清に任せるという約定を取り交わしていた。
その為には武勇を誇る俺を信長から引き離し、その隙に美濃一色氏が尾張を制圧する手筈だったらしい。
俺を引きずり出す為には、溺愛している市を拐かし、一色家の者が尾張の外へ連れ出すことで時間を稼ぐつもりだったらしい。
「ということらしいが、竹中半兵衛殿、これは一色家の総意ということでよろしいかな?」
「いや、そんな事は!」
信長が問い質すと竹中半兵衛は慌てた様に弁明を始める。
「確かに右兵衛大夫(龍興)様の叛意を利用した策を立てました。遅かれ早かれ右兵衛大夫様は左京大夫様に叛旗を翻していたでしょう。それがこちらの予期せぬ機に起こされてしまっては対策がとれませぬ。ならばこちらの都合の良いように動いてもらうしかない」
まぁ大惨事にならないようにするにはガス抜きのタイミングをコントロールするのが一番だもんな。
「何故一色家の内部で事を済ませなかったのだ?」
信長の問いは尤もだ。いくら同盟を結んでいるとはいえ、他国は他国。
端から内紛を鎮められないとわかりきっている国との同盟など、続けていく価値などない。
今の竹中半兵衛の言葉は、一色家には最早同盟の価値はないと言っているのと同義だ。
「恥ずかしながら一色家内では尾張に対する融和派の左京大夫様に不満を抱く者が多いのです。真正面から強硬派の右兵衛太夫様とぶつかっても、我らが勝てる公算はどれだけ良くて半々というところでしょう」
そんな低いのか。史実では義龍は病死となっているが、実は暗殺されてたりしないよな?
龍興は龍興で放蕩息子のイメージが強いが意外と野心があったのか。
俺が内心驚いていることなど知らぬ竹中半兵衛はさらに言葉を続ける。
「幸にして尾張とは同盟を結んでいて、美濃との国境付近の松倉城にはあの柳藤十郎殿がおられる。故意に叛乱を起こさせて、柳殿に救援を頼み、右兵衛大夫様の制圧にご助力願おうと…」
「なんとも他人任せな作戦だな」
「返す言葉もございません。ですが、それだけ我らの状況は良くなかったのです。気付いた時には最早我らのみで事を治めるのは不可能な程、趨勢は傾いておりました。思えば道三様を討つ為に立ち上がった者たちも、その出自ではなく、尾張との姿勢に対して不満を募らせていたのかもしれませぬ」
ふむ、竹中半兵衛ってスーパー知略家ってイメージが強かったけど、戦専門だったのかな?それともまだ若くて内政まで手を広げられていなかったのかな?ちょっとお粗末な展開だよなぁ。
「左京大夫殿とお主が大怪我を負ったのも策略の一つか?」
「いえ、私の怪我は想定のうちですが、左京大夫様は想定外でした。仕えるべき主君にあの様なお怪我を負わせてしまったのは不徳の致すところ。この上は腹を切って詫びる次第」
「お主が腹を切ろうが切るまいが我ら織田家には預かり知らぬことよ」
信長のその言葉に家臣一同から同意の空気が流れる。
俺として今後の歴史を考えると是非考え直して欲しいものである。
竹中半兵衛への興味も失せたのか、信長が立ち上がり、家臣団に檄を飛ばす。
「此度の信清の叛乱は一色右兵衛大夫が裏で糸引いていたのは間違いない。これより我らは美濃を攻める。手を出す相手を間違えた事を骨身に叩き込んでやるわ」
「「「ははぁ!」」」
「既に柴田権六郎率いる一軍が美濃に向かっている。俺たちも合流し、一色右兵衛大夫を討つ!但しこれは一色左京大夫殿の為の戦ではない。美濃は我らがいただく。竹中半兵衛よ、左京大夫殿と今後の身の振り方を考えておけ」
「ははっ」
さて、斎藤義龍が尾張と融和策を打ち出した上に生き残り、竹中重治が美濃方にいない。この状況で斎藤龍興がどこまで耐えられるかな。既に俺の知ってる史実とは少しずつズレが出てきているが、どうなるか気になるところだな。
「藤十郎、貴様は清洲に残れ。市を救った事で、拐われたことに関して処罰はせんことにする。だが此度の戦への参加は許さぬ。お主はここ清洲で留守役を務めよ。松倉城は美濃攻めの為に使わせてもらう」
「承知つかまつりました」
これに関しては俺は文句を言う立場にいない。下手人の信清は尋問によって、最早やり返すに値しない状態にあるだろう。
最低限のやるべき事はやったし大人しく市と共に信長の帰りを待つとするか。
会議が終わり、部屋を後にした俺の元に恒興さんがやってきて声をかけてきた。
この人とも直接話すのは実に1年ぶりくらいかもしれない。
「藤十郎殿」
「勝三郎殿、お久しぶりです。どうされました?」
「何、此度の戦では松倉城には私が入る事となりましたので、何か家臣たちへ伝える事があればと思いまして」
「遊撃隊の面々を勝三郎殿が率いるのですか?」
「ええ」
うーん、うちの隊は普通の隊とはだいぶ毛色が違うからなぁ。通常の戦の指示で上手く立ち回れるかな…?
まぁ恒興さんは柔軟に対応してくれる人だし、利定くんたちと上手くやってくれるか。
「であれば、決して諦める事なく、石にかじりついてでも生きて帰れ、と」
「戦に送り出す言葉としては中々斬新ですね」
「そうですか?死んでしまえばそこで終いですが、生きている限り経験を積み強くなれる。生きているからこそ享受できる戦後の時間がある。戦に勝とうが負けようが生きて帰ることが真の勝利であると、私は考えているだけですよ」
「ふむ。中々興味深いお考えですね。貴方とはまた話す時間が欲しいところです。言伝の件はしかと伝えておきます」
「よろしくお願い致します。お話合いに関してはいずれ」
「では、また」
挨拶を交わすと恒興さんは戦の準備に、俺は市の元へと向かって行くのだった。
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市の部屋へと行くと、帰蝶さんだけでなく、まつちゃんも呼んでの女子会の体を成しており、身の置き場のない俺は御館に用意された客室で時間を過ごすことになった。
どうもまつちゃんが松倉城に来た時に仲良くなったらしいんだが、頭領の嫁と一武将の嫁が会うのって許されてんのかな?いや、市が望んだとしたら許されるのか。帰蝶さんも市のこと大好きだからなぁ。
手持ち無沙汰になってしまったし、犬山城で出たクエスト報酬でも確認するかな…
武器名 :与一の弓
武器種 :弓
攻撃力 :4
耐久値 :250/250
技術 :弓術 >熟練度 0/100
習熟特典:器用+1
必殺技 :鷹の目 >熟練度 0/300
習熟特典:器用+1
おぉ!ついに報酬で弓が出たか!
今までは消耗品や投擲物、刀などの近接武器が殆どだったが、ここに来て念願の遠距離武器だ。
しかし何でこのタイミングなんだ?
今までのクエストと違う点はなんだ…?
今までのクエストは人の移送やお使い、建物の修繕、素材の納入などだ。
対して今回のクエストは退路を確保すること。
確かに今までに受けたことのないイベントだったけど、それだけか…?
うーん、それ以外に必要なこと…必要なこと………そうか、クエストに必要だった物か!
今までのクエストは近接武器で達成可能なものばかりだったけど、今回のクエストは遠距離武器がないと達成不可能だ。
櫓の上にいる敵なんて普通は弓矢や鉄砲でもない限り倒せないもんな。丸太をぶん投げてクエスト達成なんてシステムメッセージさんの予想の外だったってことか。
しかしこれで俺もようやく遠距離スキルを取得する時が来たか。普通の弓だとスキル取得まで耐久値が持たなかったんだよな。
スキル取得は1つの武器でやり切らないといけないし、力をセーブしすぎると熟練度が上がらないんだよなぁ。
美濃攻略戦って、確か年単位でかかるんだよな。竹中半兵衛がいないにしても攻城戦に数ヶ月はかかるだろうし、暫くは新しいスキル習熟に時間をかけるとするか。
改稿にあたって色々ご意見あるかと思いますが、改稿の意図と今後の方針を簡単に活動報告に記載しておきます。
後半、左京大夫と右兵衛大夫が入れ替わってたので修正しました




