第三十一話 いぬやまじょう けっちゃく(改稿版)
改稿版第2話です。
投稿の不備で前話も本日再投稿しております。
天守に入った後も信清の家臣が俺を待ち受けていたが、数はそれほど多くない。
通常の攻城戦とは違い、突然の襲撃であることと、俺の侵攻速度が早すぎたのでまともに篭城戦の用意ができなかったんだろう。
狭い天守内で槍を振り回すわけにもいかず、敵兵も皆太刀を手に向かってくるが、雑兵だろうと一角の武将だろうと今の俺にとっては然程の差はない。
幸にして、犬山城にいるのは信清方の人間ばかりで、信長方の兵はほとんどいない。
今や一つの織田家とはいえ元は伊勢守家と弾正忠家。信長の姉を嫁がせて同盟関係を結んでいる他家と変わらない。
だからこそ今回の反乱を感知できなかったわけだが、鎮圧する上では楽なことこの上ない。
立ち向かってくる敵兵を膾切りにして最上階へと登っていく。
そうして辿り着いた先には手を縛られた市と、信清達がいた。
信清の側には数人の鎧武者が控えており、刀を抜いて臨戦態勢だ。
「まさかこれ程早く来るとは、一体どういう絡繰だ?」
「そんなことはどうでもいい。今すぐ市を離せば、三郎様の前に生きて引っ立ててやるぞ?」
俺の怒気を受けて、信清は一瞬怯んだような素振りを見せたが、すぐに気を取り直し市を盾にするようにして、俺を見返してくる。
「ふん、余程お市が大事と見える。それはそうか、三郎からの信任の証でもあるからな。出自も知れぬ貴様からしたら大事な後ろ盾だものなぁ」
「もう一度だけ言う。市を離せ」
「会話をする気もないとは、これだから出自の怪しい者は………今の状況が分かっていないようだな」
そう言うと信清は市の髪を掴んで、首に刀を当てる。
「お市の生き死にを握っているのはこの儂だ。儂の機嫌を損ねた瞬間、刀が此奴の首に刺さる。わかったか?此奴の命が惜しければ刀を捨てそこに跪け」
今の俺なら市をよけて信清の頭に苦無を当てる事も可能だろう。だが急激な筋肉の収縮により市の首に刀が刺さるかもしれない。
そんな博打をここで打つわけにもいかない。
俺は愛刀を捨て、言われた通りに床に跪く。
すると信清の側にいた鎧武者が近づいてきて俺の頭を押さえつける。
「はっはっはっ、鬼柳などと言われていても人の子だったな。女子一人でこうも簡単に膝をつくか」
「そりゃあ貴様のような外道とは違うんでな。愛する者のために自らを擲つのは当たり前だろうが」
「ほざくな!」
俺の言葉に激昂した武将が俺の頭を床に叩きつけるが、頑丈値の高い俺には痛くも痒くもない。
「貴様!織田家の真の惣領に対して無礼が過ぎるぞ!」
尚も武将は暴行を繰り返してくるが俺は反撃の機会を伺う。そうしてひたすらに暴行を受け続けていると、気が緩んだのか市の首から刀が離れた。
「雪!今だ!」
その声に応えて雪が信清の手に噛みつき、信清が刀を取り落とした。その隙に市が信清の手から逃れる。
また俺を嬲っていた武将たちがその様子に気を取られた。その瞬間を逃さず、俺は全身のバネを使って跳ね起き、"回し蹴り"で武将達を吹き飛ばすと、床に落ちた愛刀を拾い信清を蹴倒し、刀を向ける。
「形勢逆転だな」
「っ、一体何をした!?」
「それを貴様に言う必要はない」
言ったところでこいつらに雪は見えないし、理解もできないだろうしな。
当の雪は市を守るようにして信清との間に陣取っている。
「さて、正直市に手を出した貴様など、即座に切り捨ててやろうと思ったんだがな。万一黒幕がいた場合、そいつも逃すわけにはいかん。情報を全て吐け」
「ふざけるな!誰が貴様の言うことなど!」
信清が脇差に手を伸ばすが、胸に押し付けた足を強く踏み込むことで動きを抑える。
「余計な真似はするなよ?」
「ぐっ、貴様に話すことなど何もないわ!」
「はぁ…だろうと思ったよ。なら三郎様の前で話すんだな」
鞘で顔面を殴り、信清を気絶させたところで市が駆け寄ってくる。
「藤十郎!」
「市、怪我はないか?」
「ええ、私は大丈夫」
手早く市の拘束を解き、状態を確認するが、申告通り怪我はないようでホッとする。
「こんなことになってすまない。怖かったろう」
「私は武家の娘よ?このくらいのことは覚悟しています」
そういう市の肩は震えている。
無理もない。いくら覚悟をしていたとは言っても、まだ13の女の子が初めて戦場の空気を感じ、敵に拐われたのだ。普通でいられる訳がない。
「そうか………市、俺は信清を届けに清州に行く。市も来るか?久々に三郎様や帰蝶様にも会いたいだろう?」
「………ええ、そうするわ」
「さて、そうと決まれば早速行くとするか」
「待って、姉上が牢に捕われているの。一緒に連れて行って」
「犬山殿か。となると流石に俺一人じゃ無理だな。喜太郎達を待つとするしかないな。輿はあるかな」
市ひとりなら俺が抱えていけば良いし、信清は馬の後ろに荷物として積んでいけば良い。だが犬山殿となれば輿がいる。
「あら、姉上は馬に乗れるわよ」
「はぁ?なんで姫様が馬に乗れるんだよ?」
「それは、ほら、何かあったときに馬に乗れないと足を引っ張ってしまうでしょ?」
「そんな理由かよ!いや、まぁわからんでもないけど…」
いざ逃げるってときに輿や徒歩じゃあ騎馬にすぐ追い付かれてしまうしな………ん?
「おい、まさか市も乗れたりするのか?」
「え?え、えへへ………」
「遠乗りの時に乗れないって言ってたのは何だったんだよ?」
「そ、それは、そっちの方が藤十郎とくっ、くっついていられるから………」
「お、おぅ………」
何この嫁かわいい。
いや、たしかに遠乗りするときは俺の馬に横乗りしたりしてたけどさ。
そんな理由で嘘ついてたとは思わないじゃないか。
「じ、じゃあ全員馬に乗れるなら喜太郎を待たずに行けるな。あいつらとは途中で合流すればいい」
「わかったわ」
・・・・・・・・・
・・・・・・
・・・
〜side 斎藤軍〜
「な、何があれば城がこの様に壊れるのだ…!」
氏家友国直元は犬山城を見て慄いていた。
表門から本丸までの道筋が、まるで嵐が来たかの如く完膚なきまでに破壊されている。
その破壊の仕方は今までに見た事のないものだ。人は自らの理解できない物に対して恐怖を感じるものだ。
「氏家様!どうされますか!?」
「織田家を崩すための重要人物の引き渡しと右兵衛大夫様から聞いているが、この状況は聞いていない!」
「ではどうされるのです!」
「決まっておる!撤退だ!城をこんな状態にする相手と貴様は戦いたいか!?」
「す、すぐに撤退します!」
こうして市を引き取りに来た部隊は目的を達成することも、交戦することもなく犬山の地から去ることになる。
怒れる鬼と相見えなかったことが、氏家直元の人生と斎藤家の命運を大きく変えることになる。
のぶあき は いぬやまじょう こうじょうせん に しょうりした!
『クエスト「退路を確保せよ」を達成しました。経験値と報酬を手に入れます』
〜ステータス〜
名前:柳藤十郎信晃
レベル:30 (906/3000)
年齢:26
種族:人間
所属:織田家
職業:遊撃隊大将
称号:鬼柳
状態:健康
体力:270/290
気力:290/290
妖力:81(80+1) ↑2
力 :92(76+16) ↑3
頑強:82(70+12) ↑2
敏捷:73(71+1) ↑2
器用:78(70+7+1) ↑2
知力:70 ↑2
精神:77(74+3) ↑3
幸運:58(52+6) ↑2
技術:剣術(全般)、槍術、無手格闘術、忍術(刀)、斧術、体術、急所突き、投擲術、解体、超集中、隠密、気配察知、夜目、飯綱の法、抵抗
必殺技:剣術 / 二連撃 ★★★★★、回転斬り ★★★★★、圧し切り ★★★★★、霊切 ★☆☆☆☆
槍術 / 二連突き ★★★★★
無手格闘術 / 正拳突き ★★★★☆、回し蹴り ★★★★★、後回し蹴り★★★★★
忍術 / 鎧貫き ★★★☆☆
斧術 / 兜割り ★★★☆☆
〜装備〜
主武器:矢薙ぎ兼近(攻撃力4+2)
副武器:忍刀・無銘(攻撃力2+1)
頭:鬼面前立の兜(頑強+3)
胴:仏胴(頑強+3)
腕:竹筒備えの玉滑りの籠手・仮(頑強+2、器用+1、妖力+1)
腰:佩楯(頑強+2)
脚:脛当て(頑強+2)
装飾品1:市のお守り(幸運+5)
装飾品2:ウサギの後ろ脚(幸運+1)




