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第二十五話 おけはざま の たたかい 2

いつも拙作をお読み頂きありがとうございます。

また感想、評価、誤字報告もありがとうございます。


青母衣衆→遊撃隊へと変更しました。

詳細は後書きにて。

敵兵がこちらを認識して足を止めるのと俺が戦闘態勢に移行するのはほぼ同時。


銀狐との戦いで上がったステータスの真価を見せる時だ。


俺は大地を踏みしめ、バネのように身体全体を縮め、力を溜めこむ。






そして大地が弾けた。






景色が飛ぶように後方へと流れ、200m程の距離が一瞬で0になる。


目の前に現れた俺を見て、鉄砲を持った敵兵が呆けたような顔をしているが、その隙を見逃すような真似はしない。


"回転斬り"で周囲の敵兵の首を撥ね、"回し蹴り"で残った胴体を蹴り飛ばし、右側の敵兵をなぎ倒す。


「雪!」


「キュウン!」


左手の籠手に括り付けた竹筒を反対側に向け、気力を込めた"飯綱砲"を放つと、まとめて20〜30人近くの敵兵が吹き飛んでいく。

"飯綱砲"はどれだけ気力を込めるかで威力が変わる。今回は50程の気力を込めたのだが、十分に運用範囲内だな。


一瞬にして50人近い兵を無力化した俺を見て今川軍に動揺が走る。雑兵クラスは既に及び腰だ。


浮き足立つ雑兵達に今川軍の騎馬武者が喝を入れながら近付いてくる。


「貴様ァ!何者だ!」


「織田家遊撃隊大将、柳藤十郎信晃だ!鬼柳に食い散らかされたくなければ武器を捨てて投降しろ!」


「何ぃ!?大将が単身でこの人数差に突っ込んでくるとは、所詮大うつけの家臣だな!今川が家臣、一宮(いちのみや)一郎太(いちろうた)宗是(むねこれ)が討ち取ってくれる!」


そう言うと一宮某は槍を手に騎馬で突っ込んでくる。


「悪いな。お前に手間取っている暇はないんだ」


すれ違い様に"圧し切り"を放ち、一宮某は馬ごと両断されて地に落ちていくが、俺はそれを見届ける事なく火縄銃を手にした別の一団へと躍りかかる。


一瞬にして阿鼻叫喚の地獄絵図が出来上がる。鉄砲隊も弓隊も、同士討ちを恐れて為すがままにある者は斬られ、ある者は吹き飛ばされ、今川軍の前線は崩壊を余儀なくされた。


そうして遠距離、特に火縄銃を主体とした部隊が壊滅したころ、俺から遅れた混成遊撃部隊が突撃してくる。

俺の活躍(蹂躙)によって引き気味だった前線はこれを迎え撃つことが出来ず、次々と戦線を押し込まれていく。




佐々隊と千秋隊が俺を追い越して行くのを見送ると、利定くんと小姓が俺の馬を連れて合流した。


「相変わらずお見事です。これで鬼柳の名は今川・松平家中に鳴り響くことでしょうね」


「名前だけで敵が退いてくれれば楽なんだけどなぁ」


「そこまでいったらもう戦自体が起きませんよ」


利定くんが揶揄うように言ってくるのを聞きながら、俺は自分の馬から太刀を補給する。


「奥の方までは見えんが、少なくとも10,000はいそうだな。権六郎(柴田勝家)殿が合流するまでに5,000まで減らしておきたいところだが」


「400やそこらで5,000を討ち取るとか、普通は気でもふれたかと言われますよ?でも我々なら出来るだろうと思ってしまうあたり、私も相当藤十郎様に毒されてきましたね」


「言ってろ。喜太郎も前に出て良いぞ?少しは手柄を上げてこないとな」


「いえ、右近の面倒も見ないといけないので、柴田様が合流されるまでは後ろにいますよ」


そう、今回俺の馬の面倒を見ているのは俺の小姓、前田(まえだ)右近(うこん)秀継(ひでつぐ)。利家くんの末の弟だ。

浮野の戦いで出世した俺が身の回りの世話役を探していたところ、利家くんが弟である秀継くんを小姓にどうだ?とねじ込んできたのだ。

なお利定くんは身の回りの世話役から解放され、純粋に仕事の補佐役として変わらず俺に仕えてくれている。


秀継くんは現在14歳。今回が初陣である。

正直かなり厳しい戦の為悩んだのだが、利家くん(お兄ちゃん)の強い要望で連れて行くことが決まった。

本人もやる気だしいいんだけどね。


「又左の大事な弟だし、致し方ないかな。右近は流石にこの乱戦だと初陣は厳しいだろうし、暫く後ろで戦場の雰囲気に慣れておいてくれ」


「はっ!藤十郎様のお働き、しかと目に焼き付けさせて頂きます」


「藤十郎様の働きは参考にならないので、他の方を見ていなさい。佐々殿は…前に出過ぎて見えませんね。あの方の槍捌きならかなり参考になるかと思ったのですが…」


あぁ、小豆坂七本槍(神セブン)ね。

ぶっちゃけ個人的には利家くんの方が余程槍の扱いは上手いと思うんだけどね。

まぁ俺が参考にならないのは確かだし、この隊で槍のお手本となったら彼か。


「んー、じゃあちょっと佐々殿が見やすいように、周りの敵兵を掃除してくるか」


「そうしたら更に奥に行きそうですけどね」


そう溢す利定くんに、俺は然もありなんとため息を吐き、秀継くんは目をキラキラとさせながら俺を見送るのであった。






再び最前線に戻ってきた俺の目に飛び込んできたのは、いくつかの刀傷を受け、致命傷半歩手前といった様子の佐々政次の姿であった。


「佐々殿、無事…ではなさそうだな。ここは俺に任せて下がった方が良い」


「なぁに、まだまだ身体は動く。お主のような若造に心配される謂れはない!」


いやどう見てもヤバそうですけど。成政の兄だから助けたい気持ちもあるけど、正直イキリオヤジ感が強くて面倒くさくもある。


「そうですか。千秋殿は?」


「彼奴の姿は暫く見ておらぬ。あちらの方にいるはずではあるが」


おいおい、ちょっと目を離した隙に大将クラスが片や瀕死で片や行方不明とかやめてくれよな。


「はぁ、取り敢えず一旦この辺の敵は片付けるので、その間に退がるなり、態勢を整えるなりしてください。内蔵助(佐々成政)に戦死報告する役目は受けたくないので」


「なんじゃと!?退く訳がなかろう!貴様人を舐めるのも…」


佐々政次が文句を言い終わる前に俺は周囲の敵兵を必殺技で斬り倒し、飯綱砲で吹き飛ばしていく。

戦場で俺の周りだけポッカリと穴が空いたように敵兵がいない空間が出来上がる。

それを見て政次が引き攣ったような顔でこちらを見てくる。


「お主、本当に人間か…?」


「えぇ、一応人間ですよ。あぁ、人が触れずに吹き飛んでいくアレを言っているのであれば、陰陽術の類だと思っていただければ。昨年三郎様が上洛された際に、縁あって身に付けたものですので」


「お、おぉ…?」


佐々政次は理解不能といった表情だ。まぁいいさ、ここで説明している時間はないし。


「さて、そろそろいいですかね?私は敵を狩りながら千秋殿を探します。佐々殿もどうかご無事で」


そう言うと俺は先程佐々政次が指し示した方向に向けて進んでいく。

佐々政次が生き残れるかどうかは彼次第だ。




敵を薙ぎ払いながら進むと、千秋季忠が敵に囲まれて槍を突き付けられている。こちらはまだ無事のようだな。


俺は周囲の敵兵を片付けると呆然としている千秋季忠に歩み寄っていく。


「千秋殿、ご無事か?」


「柳殿か、助かった…」


「千秋殿、隊の者は?」


「皆、散り散りになり、私に着いてきていた者たちも討たれてしまった…」


「そうですか…この先どうされますか?一度退いて私の隊に合流するか、権六郎殿率いる本隊に合流するか、後はお勧めはしませんが、このまま単身奮戦して果てるのか。先の二つを選ぶのであれば援護しますよ?」


「最後のものを選ぶ者がいるのか…?今更本隊に戻っても扱いに困るであろう。私は柳殿の隊に組み込んで頂きたく」


いるんだなぁ、それが。


「承知しました。では道を拓くので遅れずに着いてきて下さいね」


いやー、話のわかる人で助かったなぁ。中島砦では佐々政次に影響された気の迷いだったと信じよう。


あとで聞いたことだが、上機嫌になりながら、草木を払うが如く敵兵を切り捨てて行く俺を見て、千秋季忠は決して俺とは敵対すまいと心に決めたとか。






千秋季忠を遊撃隊まで送り届けた俺は、信賢の指示に従うように言い含めて、敵の数を減らす事にした。


遠目からでも俺の姿を視認した事がある兵は進路上から逃げ出し、初めて俺を見た敵兵は軒並み刀の錆となる。


俺が持参した刀は殆どが折れ、残るは腰に下げた愛刀のみになっていた。しかしこの刀も耐久値は10を割っており、実質折れたも同然。


その辺の刀を拾おうと思った時、周辺に武器がなく、遠巻きにされている事に気が付いた。

前を見れば見るからに大将といった具足の武者が火縄銃の銃口をこちらに向けていた。


「この化け物め!今川家一門衆、蒲原(かんばら)宮内少輔(くないしょうゆう)氏徳(うじのり)!が撃ち殺してくれる!」


一門衆ってことは親戚筋か。中々に位の高そうなやつが出てきたってことは、そろそろこの軍も終わりが見えてきたかな?


火縄銃が火を噴くが、超集中(スローな世界)を発動した俺は慌てずに手甲で玉を弾く。


「たかが火縄銃一挺で俺を倒せると思うなよ?」


「ひ、ひぃ!化け物!」


蒲原氏徳は火縄銃を放り捨てると一目散に逃げ出した。

それをきっかけに今川軍は脱兎の如く逃げ出して行く。




視界から逃げ出した敵兵が見えなくなった頃、柴田勝家率いる本隊がようやく合流した。


「藤十郎か。また見事にやったものだ。少しは残しておけと言っただろうに」


「権六郎殿。いやぁ、思ったより敵大将が腑抜けでしたね。6,000くらいの敵兵が同じ方向に逃げ出したので、恐らくその先に義元がいるのでしょう。まだそちらが残っているので、そちらの一番槍も大将首もお譲りしますよ」


「手柄を譲られても嬉しくないわ」


「いやいや、俺は俺で右近の世話があるので、余程のことがない限りは前に出ませんよ?」


「そうか。であれば遠慮なくいただくことにするか」




こうして本隊と合流した俺たち遊撃隊は今川本陣へと向かって進軍を開始するのであった。

青母衣衆→遊撃隊の変更についてですが、藤十郎が信長の肝いりであること、今回の桶狭間の戦いの作戦に関わるところで青母衣をつけてもらうことにしていました。


ただ確かに本来の母衣衆の在り方とは違うこと、一つの戦の為とはいえ他の母衣衆を率いるというところに無理があるというところから、ご指摘頂いた通り遊撃隊へ変更した次第です。

それに合わせて過去の該当部位も話の流れが変わらない程度に小変更を入れていますり


ご指摘頂いた犬やねん様、ありがとうございました<(_ _)>


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― 新着の感想 ―
[一言] 普通に考えればこの時点で義元を討ち取ってないと戦力が集中して撤退以外選択肢は無い が退却した6千人が藤十郎の姿を見れば…義元本陣は超大混乱 ヘタすりゃ 6千人の逃亡=6千人の突撃 で1番の戦…
[一言] 大将が単独で吶喊って、どこのジェノサイドだw
[良い点] なかなかテンポ良くて楽しいです [気になる点] お市の方に対する喋り方 ここ2話で遊撃隊と青母衣衆と入り混じってます 一気に読んだので、青母衣衆がいきなり出てきてびっくりしました
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