第二十二話 くじょう ぜんこう
長くなったので2話に分けます。
そう言えば一応前話でタグは全部回収しました。
〜京都 織田家京屋敷〜
第六天魔王。
信長の渾名として最も有名なものの一つだ。
もちろん俺が仕える信長は仏教を弾圧もしていないし、武田信玄の洒落に返信をした訳でもない。
だが目の前にいる男はまごうことなき魔王の形相だった。
「で、あるか。お主は九条禅閤のその戯けた申し出を受けたと?」
「いえ、受けてはいません」
だからその圧力を収めてください。気弱な人間ならこれだけで死ぬよ?
「だが陰陽道を修めるには数年かかると聞く。それを修めるまで帰さんとは取り込み以外の何でもあるまい」
「まぁ向こうの意図としてはそうかも知れませんね」
俺がしれっとした顔で答えると信長は深いため息を吐き、それと共に殺気も霧散していく。
「お主は飯綱の法とやらを修めたのであろう?それで目標は達せられているではないか」
「いえ、確かに飯綱の法は私が求めていた力の一端であることは事実です。ですが俺が本当に求めていたものではなかった。なので時間の許す限り学びたいと思っています」
そう、結局のところ妖力が解放されていない時点で俺の目的は達せられていないのだ。
「勝算があるのか?数年かかるものを数日で修める自信があると?」
「こればっかりはやってみないことには何とも」
「修められない場合は公卿との約定を反故にして逃げると?」
「そうならない事を祈りますけどね。三郎様にはなるべくご迷惑をかけないようにはしますが、最終的にはどんな手を使っても市の所に帰りますよ」
「ふん。九条禅閤も公家とはいえ出家した身。当主ならいざ知らず、坊主が武家の家臣に逃げられたからといって大したことは出来んわ。お主が帰ってくる気なら細かいことは言わん。市を泣かせることだけはするな」
「御意」
俺は頭を下げると信長の自室を辞するのであった。
自室に戻った俺は竹筒から雪を呼び出す。
「キューゥ?」
筒から出てきた雪は俺の指に巻きつき、つぶらな瞳で俺を見上げてくる。そこ、気に入ったの?
いやぁ、しかしコイツかわいいな。市に会えない時の新たな癒しだわ。
「そういや妖怪ってステータス見れんのかな?」
〜ステータス〜
名前:雪
レベル:2
種族:管狐
術者:柳藤十郎信晃
称号:なし
状態:支配
体力:20/20
気力:40/40
妖力:24
力 :3
頑強:2
敏捷:5
器用:4
知力:4
精神:3
幸運:3
必殺技:飯綱砲
ほう、動物と違って妖怪はステータスが見れるのか。
人とは違ってステータスの項目が少ないな。妖怪の場合、気力体力以外の総合力が妖力として表されてるのかな。
「お前も経験値表示があるってことはレベルアップして強くなれるのかな」
「キュキュッ!」
「ははっ、やる気があるなら結構。俺は厳しいぞ?」
「キューゥ」
そう言って耳周りを撫でると雪は目を細めて気持ち良さそうな顔をする
しかし気になるのはこの"支配"という状態だ。これは俺の支配下にあるということなのか、比較対象がないから何ともわからんなぁ。
わからない事はどうしようもない。その後も雪に芸を仕込めないかなど色々と試行錯誤しながら夜は更けていくのであった。
・・・・・・・・・
・・・・・・
・・・
〜京都 御所内九条邸〜
翌朝九条邸を訪れた俺は到着するなり用意されていた襖に着替えることになった。
「ほ、よう似合っておるな。急ぎ用立てた甲斐があったものよ」
〜ステータス〜
名前:柳藤十郎信晃
レベル:19 (1048/1900)
年齢:24
種族:人間
所属:織田家
職業:側仕え/遊撃隊大将
称号:急成長
状態:健康
体力:180/180
気力:160/180
妖力:-
力 :68(52+16)
頑強:52(46+6)
敏捷:48(47+1)
器用:53(46+7+1)
知力:48
精神:52(49+3)
幸運:41(35+6)
忠誠:100(織田市)
90(織田三郎信長)
技術:剣術(全般)、槍術、無手格闘術、忍術(刀)、斧術、体術、急所突き、投擲術、解体、隠密、気配察知、夜目、飯綱の法
必殺技:剣術 / 二連撃 ★★★★★、回転斬り ★★★★★、圧し切り ★★★☆☆
槍術 / 二連突き ★★★☆☆
無手格闘術 / 正拳突き ★★★★☆、回し蹴り ★★★★★、後回し蹴り★★★☆☆
忍術 / 鎧貫き ★★★☆☆
斧術 / 兜割り ★★★☆☆
〜装備〜
主武器:無銘・直江志津兼近(攻撃力4+2)
副武器:なし
頭:烏帽子(頑強+1)
胴:絹の襖(頑強+2)
腕:(絹の襖)
腰:絹の指貫(頑強+2)
脚:絹の足袋(頑強+1)
装飾品1:市のお守り(幸運+5)
装飾品2:竹の小筒
うへぇ、フル絹製とか金かかっているなぁ。
しかも俺用のオーダーメイドだ。藤色の襖に、白い指貫は心なしか三郎様よりも上等な作りに見える。
ん?ステータスに新しい項目が追加されている。
種族:人間って、あぁ、そういや昨日雪を見た時に管狐って書いてあったな。
人間以外の種族のステータスを確認したから追加されたのか。
はは、ステータスもまだまだアンロックされていない要素が沢山あるのかもな。今後も積極的にステータスオープンをかけていくとしよう。
そう思い、ここまで案内をしてくれた女中のステータス鑑定をして俺は目を疑った。
そして九条禅閤のステータスを改めて確認する。
「九条禅閤様、一つ聞いてもよろしいでしょうか?」
「ほ。なんじゃ?」
思えばおかしいところはいくつもあった。
陰陽術と飯綱の法を納めながら通力の説明に齟齬があった事、飯綱の法の大家であるはずなのに誰もが思い付きそうな事を試したことがないと言った事、そして何よりも、雪と違って寒気すら覚える余りにも禍々しい気を纏っていること。
「九条禅閤様。いや、お前は何者だ?」
「何のことかな?」
「惚けるなよ?お前、人じゃないだろ。そこの女中もな」
そう俺が断定すると九条禅閤の形をした者は目を細める。そして嗤った。
「ほう、たかが人間の分際で我の正体を見抜いたか。どういう絡繰だ?」
「はっ、態々教えると思っているのか?本物の九条禅閤はどこだ?」
「ふん、それこそ教えてやると思ったか?」
ピリピリとした空気が部屋を覆う。
女中は腰が抜けているようだ。こいつも人ではなかったが、小物なのか、はたまた敵ではないのか、今はどうでもいい。
「本物が生きているのがわかれば今はいい。お前を叩きのめして、居場所を聞き出すだけだ!」
「ほざけ!矮小な人間の分際で我に楯突いた事を後悔させてくれる!」
そう叫ぶと九条禅閤だった者の口が裂け鋭い牙がのぞく。頭には耳が生え、指からは長い爪が伸び、袈裟の裾からは尻尾が飛び出る。
そう、その姿は半人半妖。人を騙す狡猾な知能を持つ妖。
〜ステータス〜
名前:銀狐
レベル:24
種族:妖狐
術者:なし
称号:なし
状態:通常
体力:240/240
気力:240/240
妖力:72
力 :60
頑強:55
敏捷:59
器用:47
知力:52
精神:49
幸運:38
ぎんこ が あらわれた!
「シャアァッ!」
袈裟姿とは思えぬ素早さで銀狐は飛びかかって来る。
その鋭い爪を俺は刀で受け止め、爪と刀の間で火花が散る。
くっ、レベルが高いだけある。力は勝家のおっさんより上だな。
怒涛のような連撃を受けていると、刀が悲鳴を上げる。このままじゃ折れる!
爪の一撃を避けた俺は"回し蹴り"で距離を取ると、愛刀を投げ捨てアイテムボックスからへし切り長谷部を取り出す。
「今度はこちらからだ!」
"二連撃"を爪で受けた銀狐に"後回し蹴り"を見舞う。人間なら胴の骨がバラバラになってもおかしくない俺の蹴りを受けても奴は足を床につけたままずり退がるだけだ。
そのまま俺は"圧し切り"を放つ。
俺の刀が受けようとした銀狐の爪を纏めてへし折り、その腕を切り飛ばそうとするも、腕を半ばまで斬り裂いたところで堅い感触に止まる。
くっそ!俺の力でもへし折れないってどれだけ硬いんだ!
しかし爪をへし折られたことでやつも警戒したのか、互いに相手の出方を伺うような形で場が膠着する。
そこに至ってようやく九条家の人間も騒ぎに気付いたらしい。
「何事だ!?」
侍に囲まれた如何にも貴人という風体の男が問いかける。
だがそれに俺が答える前に銀狐がその男たちに襲いかかる。
「「「うわあぁぁぁあぁぁぁ!」」」
侍たちも応戦するがそもそもの身体能力が違いすぎる。銀狐が腕を一振りするとまるで枯れ枝のように折られ、吹き飛ばされてゆく。
「く、来るなああ!」
残る貴人に銀狐の爪が届かんとしたところで何とか俺は割って入る。
「ひ、ひぃ!」
「おい、よく聞け!俺は柳藤十郎信晃、九条禅閤様に呼ばれて来たんだが、そいつは見ての通り偽物だった!本物の禅閤様は生きておられるようだが、まずはやつを叩きのめさなければ居場所を聞くことすらできん!」
貴人に言い聞かせている間にも銀狐は襲いかかってくる。それを捌きながらも貴人に話しかける。
「くっ、邪魔だな!あのクソ狐をどうにかしたいんだが、俺の刀じゃ力不足らしい!何か良い手は九条家にないか!?」
正直期待はほとんどしていない。だが少なくとも化けの皮が剥がれる前の九条禅閤のステータスには陰陽術と飯綱の法が入っていた。
そこに僅かな目がないかと思ったのだ!
「そ、それならばこの刀を使え!これは九条家に伝わる小狐丸という!稲荷明神の加護を得ている刀であれば邪な狐も切り裂けるに違いない!」
そういうと貴人は手に持っていた刀を俺に差し出す。
マジかよ!聞いてみるもんだな!
武器名 :小狐丸
武器種 :太刀
攻撃力 :4
耐久値 :230/230(250)
技術 :剣術(太刀) >熟練度 100/100 習熟
習熟特典:力+1
技術 :妖気特攻 >熟練度 0/300
習熟特典:妖力+1
小狐丸を受け取った俺がそれを抜くと、銀狐の動きが止まる。
「ぐっ、忌々しい気を…!だがその刀さえどうにかしてしまえば、こちらのものよ!」
「それが出来ねぇから禅閤様を生かしておいたんだろ?来いや、この獣が!その毛皮を敷物にしてやるわ!」
「ぬかせえええ!」
すると銀狐は今までと違い飛び掛かるのではなく、自身の周りに狐火を浮かばせ、それを高速で打ち出してくる。
だが銃弾を斬れる俺にとっては止まっているようなもんだ!
俺が小狐丸を振るうと狐火は斬り裂かれ、消えていく。
「バカな!切り落とすだと!?」
「隙だらけだ、阿呆が!」
「ぬがあああああっ!!!」
今度は妖狐の右腕を斬り飛ばす。妖気特攻が付いている刀で切れるということは骨は妖気の塊なのかもな。妖気を纏っているだけならそもそも肉も斬れないだろうしな。
これで決める!
この戦いに決着をつける為、俺は刀を構え、銀狐へと踏み込むのであった。
妖怪のステータスをどうするかは悩み中。
妖力で一括りにするか、人間みたいに細かく書くか…
でもそうするとステータスだらけになりそう。
ちなみに小狐丸はこの時代ではまだ太刀だったという設定です。




