閑話 ぜったいてき きょうしゃ
久々に出社したら疲れました(寝落ちの言い訳)
今日中には間に合ったのでセーフ!
いつも誤字脱字報告と感想ありがとうございます。
感想については完全に追いつかない状態になってしまっており、遅くなっても個別で返信するか、活動報告でまとめて返信するか悩んでおります。
前話の後書きに第二章 尾張統一までの城と合戦場の地図を貼り付けてみました。
浮野の戦いによって尾張を統一したことにより、織田家は束の間の平穏を手に入れた。
またこの機に乗じて家臣団の再編が行われ、馬廻衆を中心に新たな部隊が新設されることとなった。
佐々内蔵助成政を筆頭とする黒母衣衆と、前田又左衛門利家を筆頭とする赤母衣衆、の二母衣衆、柳藤十郎信晃を筆頭とする遊撃隊が設立された。
表向きは横並びとされる黒母衣衆と赤母衣衆であったが、その顔ぶれは黒母衣衆が家格や年齢が上の者。赤母衣が黒母衣よりは家格が落ちたり、年齢が下がるが長年信長に仕えてきた者たちといった構成になっていた。
尾張上四郡を治めていた伊勢守家が滅びたことで弾正忠家の抱える領土は倍になった。その為母衣衆と遊撃大将に任じられた俺には知行と与力が与えられ、それぞれの土地を発展させることに腐心することになる。
成政率いる黒母衣衆は春日井郡を、赤母衣衆は海東郡を、俺は葉栗郡の一部を治めることとなった。
とはいえ各母衣衆の筆頭である成政、利家くんと俺の3人は信長との直接の政治的なやり取りがあったり、軍事的なスピード感を求められることから、未だに清洲城下で暮らしていたりする。
そして昇進して間もなく、めでたいニュースが俺の耳に飛び込んでくる事となった。
「はぁ!?しゅ、祝言…!?」
「あぁ」
「えっ、誰と誰が…?」
「俺とまつに決まっているだろうが」
お巡りさん、こいつです。
流石の戦国時代でも11歳はぶっちぎりで早いぞ!
「いや又左、落ち着け。まつちゃんはまだ11歳だぞ?許婚でいずれ祝言とは思っていたけど、流石に気が早すぎないか?」
「いや、俺も出世したし、良い機会だと思ってな。これから俺にも縁談が舞い込んでくるだろうし、それなら気の知れたまつと一緒になる方が良いと考えたのだ」
「えっ、母衣衆になると縁談とか来るのか?」
「勿論だ。なんと言っても我らは三郎様直属の隊を率いる長だぞ?誼を通じておきたい者ならば真っ先に娘を送り込んでくるだろうさ」
「うへぇ」
そんな下心も真っ黒な裏もありそうな縁談はご遠慮願いたい。
ゲンナリしている俺を見て利家くんは呵呵と笑う。
「なに、藤十郎は暫く心配することはないだろう。あんたはもう売約済みだし、側室として送り込むにしてもお市様との祝言前に話を持ってきて、三郎様に喧嘩を売るような輩は少なくとも家臣団にはおらんよ」
「やっぱ周りから見てもそう思う?」
「何を今更。あれだけ御館内で仲睦まじくしていることが許されているのだ。むしろあれでお市様を余所にやると言い出したら周りが納得せんよ」
薄々そんな気はしていた。普通に考えたら命の恩人とはいえ、姫様にあのスキンシップが許されるのはマンガやアニメの中だけだ。
「藤十郎も常設の大将となれば地位的にも何とか釣り合いが取れるようになってきたし、武勲は抜群。お市様とお互い想い合っているとなれば、それこそ何かの機会があればすぐに輿入れとなるだろうな」
「うーん、確かに市の事は好きだけど、女として見れるかと言ったら最低でも後数年は欲しいけどなぁ」
「そんな悠長な事を言っていると愛想を尽かされるぞ?まぁ取り敢えず夫婦になっておいて、あとはお市様と相談の上で決めればいいのではないか?」
「そういうもんかねぇ」
実際11歳となった市は少しずつ雰囲気が少女から女に変わりつつある。女の子は早熟と聞くが、それにしてもたまにドキッとさせられることがあるんだよなぁ。とは言え、流石に11歳は守備範囲外。ガッツリ目のウエストボールだ。年齢差13歳は伊達じゃない。
「ま、何はともあれおめでとう、又左。祝福するよ」
その後利家くんとまつちゃんの祝言は恙無く行われた。
この時代、祝言は非常に手間がかかり。三日三晩かけて行なわれる。初日の早朝、新郎側から迎えの人間が新婦の家に行き、昼まで歓待される。
その後お迎え役、祝儀品や嫁入り道具、新婦の親族が新郎宅に向かい、夜を徹してどころか2日がかりで飲めや歌えやの大騒ぎ。
親族同士の宴会が終わったら家中の者や特に親しい者たちへの人間へのお披露目会とまた宴会、とここまでやってようやく新郎新婦は初夜を迎えるのだ。
俺や成政、藤吉郎は3日目のお披露目会に招待された。長屋組の中で最初の既婚者となった利家くんに対し、俺たちのテンションの上がり方は半端じゃなかった。特に親族の祝言を経験したことのない俺と藤吉郎は、後で苦言を呈される程のはしゃぎっぷりで後で利家夫妻に謝り倒すことになる。
祝う気持ちは痛いほど伝わったから気にするなと、笑って許してくれた利家くんがまじイケメンだったことは一生忘れないだろう。これが勝者の余裕というやつか…!
こうして夫婦となった利家くんとまつちゃんだったが、恐ろしい事にその後すぐまつちゃん懐妊が判明する。こいつ、マジモンの鬼畜か。イケメンだからとは言え恐ろしい男である。
まぁまつちゃんが非常に幸せそうだったので外野がとやかく言うことはない。そんな輩は馬に蹴られて地獄に堕ちることになるのだ。
しかしこの誰も不幸にならないこの祝言は思わぬ形で俺を苦しめることになる。
市からの強烈なプレッシャーが増えたのだ。自分と同い年のまつちゃんが結婚したかと思ったらご懐妊だ。これに刺激された市は帰蝶さんと結託し、俺だけでなく信長にも手を伸ばし始める。
愛する妻と妹の強烈な二方面攻撃には、さしもの尾張の主も這々の体で逃げ出すしかなく、その元凶となった妹の想い人に文句を言いに行った先で身分的にまだ自分からは祝言を申し出られないが、どうにかしろと市からプレッシャーをかけられる俺を見ると、仲間意識が湧いたのか、仕事と称し夜な夜な政務室に俺を呼び出すと、盃を交わし合うことになる。
奇しくもこの出来事により、俺は戦働きを認められただけでなく、心情的に信長と打ち解け合うことになる。日に日に仲良くなる俺と信長を見て、市と帰蝶さんが満足げな顔をするようになったと思うのは俺だけではあるまい。
俺と信長の脳裏に不謹慎ながらも早く次の戦が起きないかなぁ、という考えが頭をよぎったのもしょうがない事ではなかろうか。
そうして年が明けて梅の花が咲き始める頃、信長は500の手勢を引き連れて京へ上洛することになった。
その中には俺も含まれていた。
10年待つかもと思っていた京都行きが思わぬ形で早く実現したことに、俺は期待に胸膨らますことになるのであった。
利家が11歳のまつを娶って、翌年出産は史実です。有名武将の中ではぶっちぎりの早婚早産だったみたいですね。史実だと濃姫こと帰蝶は14歳(諸説あり)で信長に、お市の方は20歳で浅井長政に嫁いでいます。
"藤"十郎が"青"母衣になったのは全くの偶然です。母衣衆にするのは決まっていましたが、色を決めたのは今日ですので。
"矢薙ぎ"と"柳"もそうですが、自分の想定以上に良く出来た名前だったようです(自画自賛)
いよいよ次回は京都へ入ります。果たして藤十郎の妖力は開放されるのか。はたまた10年がまでやっぱりお預けなのか。乞うご期待!




