第十八話 うきの の たたかい 1
いつも拙作をお読みいただきありがとうございます!
寝るまでは今日だからセーフ!
嘘ですごめんなさい。貼り付け前にデータが吹き飛んだので書き直しをしていました。
iPhoneのメモ帳にもCtrl+Zちょうだい_:(´ཀ`」 ∠):_
という訳で本日2話目です(まだ言う
織田弾正忠家の家督争いは信長の勝利で幕を閉じた。
先日達成が柴田勝家、林秀貞と共に清洲城へと謝罪しにきた。信長と達成の実母である土田御前の取りなしらしい。まぁ実の息子達が戦って、片方が死ぬのは親としては避けたいか。
柴田勝家と林秀貞は確りと謝罪の意を示したことで信長から許された。
しかし達成は端から見ていても態度が非常によろしくなかった。嫌々謝っている、なんなら母親がどうしてもというから来てやった感が半端じゃなかった。
信長の額に青筋が見えたのは気のせいではあるまい。だが土田御前が再三に渡って懇願したこともあり、なんとかその場は達成たちを許す形で収まった。
達成は武蔵守信成と名前を変え、末森城の城主を務めることになった。柴田勝家は内々に達成の目付役を命じられ共に末森城へ、林秀貞は那古野城に入ることになった。
これで尾張国の覇権争いは弾正忠家の信長と伊勢守家の信安の二人になる。
そんな状態から1年近く経った1557年11月、勝家から信成謀反の報せが入った。
どうも斎藤義龍から書状を受けて、対信長用に竜泉寺城の築城を始めたらしい。
これに信長は激怒した。そりゃそうだ。母親がどうしてもと懇願したから許してあげたのに、1年も経たないうちにコレじゃ怒るよなぁ。
即座に信長は信成を討つ事を決定。
軍を派遣しようとする信長に対して、恒興さんは、こんな事で信成如きに兵を消耗するなど勿体ない、と調略を提案。
要は信長が病気で重篤だと偽り、信成を呼び出すという作戦だ。
信成はこのウソにまんまと嵌り、ノコノコと勝家を伴って清洲城へとやってきた。
当然柴田勝家は信長方。哀れ信成は謀反の罪で誅殺される事になる。
そしてその4ヶ月後、織田弾正忠軍は今川・松平両家に動きありという報せを受け、守山城から東に約20kmに位置する品野城を攻める事を決めた。
ここを抑えられると今川・松平連合軍に東と南を抑え込まれ、包囲戦を展開される可能性がある。
信長は竹村長七郎長方を向かわせたが、松平勢に夜襲をかけられ敗走してしまった。
この戦いの結果から国外は情報を集める事を優先して、国内の統一を目指す事にした。
織田伊勢守家を征伐し、国力を上げた上で改めて今川・松平連合や斎藤家とやり合う覚悟を決めたのである。
〜side 伊勢守家 岩倉城〜
「父上!降伏しましょう!」
「兵衛、何を弱気な事を!貴様、いつからそんな情けない男になった!?」
降伏を勧める信賢に対し、信安は苛立ちも露わに言葉を返す。
だが信賢は顔を真っ青にして身体を震わせ、爪を噛みながらも決して退くことはなかった。
「父上はアレを見ていないからです!あの鬼と戦って勝てるわけがない!」
「ええい、やはり貴様ではなく久兵衛(信家)に家督を継がせるべきか!ええい、者共!この臆病者を摘み出せ!」
「父上っ!父上ぇーっ!」
信賢が連れ出された後、信安は家臣団に振り返り、戦の指示を出す。
「他にも怖気ついた者がいれば今すぐにここから立ち去るがいい!但し、信賢とは違いその贖いは命で行ってもらおう!」
尾張統一を目前とし、目を血走らせた伊勢守家頭領のその剣幕に、逃げ出す者はただ一人としていなかった。
その頃、信賢は兵達によって本丸から連れ出されていた。
「くっ、ええい、貴様ら!離さんか!」
「兵衛様、これも七兵衛尉様の命令なのです!どうか大人しくして下さい!」
兵達は兜を信賢に渡すと本丸の方へ戻っていった。
それを見送った信賢はこの後の身の振り方を考える。
「くっ、このままでは皆殺しだ。一刻も早く弾正忠家に降伏の意を伝えなければ、鬼が…鬼が来る!」
下津の戦で見た悪鬼羅刹の如き柳藤十郎信晃の姿を思い浮かべ、アレと対面した時に己の命がどれだけ保つかを考えた。
どう前向きに見積もっても一合と打ち合えることの想像がつかない。
改めてその武威を想像の中でも確認すると、信賢はふらつく脚で厩へと向かうのであった。
・・・・・・・・・
・・・・・・
・・・
〜side 弾正忠家 浮野本陣〜
「では三郎様。十郎左衛門殿にこの書簡、間違いなく届けて参ります」
そういうと恒興さんは本陣を後にする。
すれ違い様にそれを見送った俺は信長に中身を問う。
「三郎様、今勝三郎殿が持っていったのは?」
「藤十郎か。なに、犬山城主の十郎左衛門信清殿への書簡だ。十郎左衛門殿には俺の姉が輿入れしていてな。伊勢守家ではなく我らにつくようにと認めたのだ」
「そんなんでこちら方につくものですかね?」
「まぁ大方つくとは考えておる。そもそも信安めの後見を務めていたのを辞して独自に動いている時点で察せられるわ」
そんなもんかと納得していると報せが入った。
「申し上げます!岩倉城より単騎でこちらに向かってくる者がおります!指示をお願い致します!」
「単騎とな。何かの使者かも知れん。おい、藤十郎、お主が迎えに行ってまいれ」
「御意に」
本陣から出た俺は仁王立ちになりやってきた騎馬武者に向かって声を張る。
「そこの騎馬武者!そこで止まれぇ!何用で敵陣へと参られた!?」
俺がそう問うと騎馬武者は転げ落ちる様に馬から下りると兜を脱ぎ、その場で土下座をし始めた。
「は、はっ!手前は織田伊勢守家嫡男、織田兵衛信賢と申します!この度、手前は弾正忠家に降りたく参った次第…!」
「は?」
えーっ!?嫡男が単身降伏ってどうなってんの?
その言葉に嘘がないかステータスで確認をする。
〜ステータス〜
名前:織田兵衛信賢
レベル:11
年齢:26
所属:織田伊勢守家
職業:大名嫡男
称号:伊勢守家嫡男
状態:健康
体力:70/70
気力:70/70
妖力:-
力 :15
頑強:32(20+12)
敏捷:13
器用:15
知力:19
精神:24
幸運:18
忠誠:16(織田七兵衛尉信安)
技術:剣術(太刀)、槍術
〜装備〜
主武器:無銘・兼定(攻撃力4+1)
副武器:無銘・兼元(攻撃力3)
頭:三鍬形の兜(頑強+3)
胴:仏胴(頑強+3)
腕:籠手(頑強+2)
腰:佩楯(頑強+2)
脚:脛当て(頑強+2)
装飾品1:なし
装飾品2:なし
おぉ、ホンマや。というか、嫡男なのに忠誠低すぎじゃね?
改めて信賢を見ると顔を青醒めさせ、心なしか震えている。この反応見たことあるぞ。
「兵衛殿と言ったか。俺と会ったことがあるか?」
そう問うと信賢は身体をビクリと震わせ肯定する。
「はっ、下津にて400を率いて貴殿と相見え、恥ずかしくも逃げ延びまして…」
あー、あん時の大将だったのか。部下を置いて早々に逃げ出したくらいだし、心が折れたかな?
「そうか。で、降伏と言ったな?三郎様の元へ連れて行く。刀は預かるぞ?」
俺がそう促すと、信賢は驚くほど従順に刀を俺に預け、ついてくるのであった。
信長の前に連れてこられ、土下座をする信賢は先程よりもリラックスしている様に見えた。おい、信長がこの軍で一番偉いのに、俺の時よりリラックスっておかしいだろ。
「嫡男が家を捨てると言うのか。」
「手前は柳殿の武威を目の当たりにしています。2年前であの強さであれば今は更にお強くなられているでしょう。であれば伊勢守家に柳殿を止めるだけの力はありませぬ。手前から父にも降伏を訴えたのですが、臆病者と罵られ弟の久兵衛信家に家督を継がせると言い出し、本丸から追い出される始末。その為、こうして単騎で降った次第です」
そう述べる信賢は嘘を言っている様には見えなかった。しかし、臆病者呼ばわりからの弟に家督を譲るねぇ。それはグレて家出もしょうがないかもしれない。
信長も同様に思ったのか、その言葉に頷き返す。
「で、あるか。しかし藤十郎、お主に心をへし折られる者は今後も出てきそうだな」
そう言いつつニヤニヤする信長。こういう顔の時は大抵ロクなこと考えてないんだよなぁ。
何を言われるのかドキドキしていたが、その口から飛び出てきたのは俺の予想を超えたものだった。
「あい分かった。であれば此度の戦いで戦功を上げ、弾正忠家に仕えるという気概を見せよ!藤十郎、貴様の繋いだ縁じゃ。こやつはお主の隊に組み込め。今回は其奴の乗ってきた馬も合わせて使ってやれ」
「「えっ」」
思わず俺と信賢の声がハモる。
「ちょ、ちょっと待ってください!いきなりそう言われても兵衛殿がどういう立ち回りが得意かもわかりませんし、息が合うかもわかりませんよ!?」
俺が抗議すると、信長は鼻で笑いやがった。
「ふん、そんなことは百も承知よ。その上でそやつを上手く使ってみせよ、と言っておるのだ。これは決定だ。お主が何と言おうと変えるつもりはないぞ」
そう言うと俺と信賢は本陣を追い出された。
互いに顔を見合わすが、すぐに信賢の目が泳ぎ出す。
大丈夫かな、コレ?不安だなぁ。
「はぁ、三郎様も思いつきが過ぎるな…兵衛殿、という事だからよろしく頼む」
「は、ははぁ!この命に替えましても!」
ビビりすぎじゃね?
ステータスを確認すると所属が織田伊勢守家から織田弾正忠家に変わっていた。
〜ステータス〜
名前:織田兵衛信賢
レベル:11
年齢:26
所属:織田弾正忠家
職業:徒士
称号:元伊勢守家嫡男
状態:健康
体力:70/70
気力:70/70
妖力:-
力 :15
頑強:32(20+12)
敏捷:13
器用:15
知力:19
精神:24
幸運:18
忠誠:90(柳藤十郎信晃)
技術:剣術(太刀)、槍術
つーか、忠誠を誓う先がおかしい!信長じゃないんかい!
そう思っていると忠誠の横に矢印が出てきたので、それを触ってみる。
忠誠:v90(柳藤十郎信晃)
50(織田三郎信長)
矢印が展開されるとそこには次点なのかもう一つ忠誠心が出てきた。
信長の倍近い忠誠とか、俺が謀反でも起こした日にゃ確実に一緒に裏切るやつだな。
今まで気にしてなかったけど、今後はこういうパターンがないか見ておくか。
俺がステータス検証をしていると、落ち着かないのか、信賢がソワソワし始める。
その様子に思わず溜息をつき、俺は信賢を連れて自分の隊へと足を向けるのであった。
信賢は完全に心折れちゃってますね。
史実では信賢が信安と信家を追い出すのですが、心が折れて弱気になった信賢に伊勢守家は誰もついていかなかったようです。




