第十五話 いのう の たたかい 1
坪内利定の漢字が間違っていたので修正しました。
いよいよまともな合戦です!
〜名塚砦〜
「東より柴田軍凡そ1000、大将柴田権六郎勝家!南より林軍凡そ700、大将林美作守通具!」
「敵方は凡そ1700、対する当方は900か。まさかこれ程までに俺に人望がないとは思いもせなんだ」
報告を受け、そう独りごちる信長に対し恒興は慰めるように声をかける。
「何を言っているのですか三郎様。佐久間殿や佐々殿が残っているのですから、まだまだ悲観するほどではないでしょう?さぁ、軍議も始まりますし、自軍の雰囲気を盛り上げて下さい」
「うむ」
武将たちの視線が信長に集まり、軍議が始まる。
「皆の者よく聞けぃ!これより我らは謀反人織田勘十郎達成を成敗する!敵方は柴田権六郎勝家と林美作守通具、こやつらをうち破り末森城にいる達成を討つ!」
そして今回の戦における大将格の任命が行われる。
「佐久間大学介盛重、佐久間半羽介信盛、佐々孫介成経、丹羽五郎左衛門尉長秀、お主らは武者大将としてそれぞれ150を率い、柴田軍をうち破れ!織田造酒丞信房、森三左衛門可成、お主らは馬廻衆、小姓衆と共に本陣を守れ!そして柳藤十郎信晃、お主は武者大将として150を率い林軍を抑えよ。」
「「「ははぁっ」」」
任命式が終わると各々が持ち場に散っていく。
中には互いの健闘を祈り合う者たちもいる。
「兄上、ご武運を!」
「内蔵助、三郎様を確り守れよ。柴田殿は俺が首をあげるからな!」
「藤十郎殿、大役だな!武運を祈るぞ!」
「ありがとう、又左衛門殿。与えられた役目はしっかり果たすさ。お互いの健闘を祈るよ」
俺も利家くんや成政、藤吉郎、可成さんと話をして自陣に向かう。
自陣に向かっていると坪内利定くんが迎えに来ていた。戦における俺の人間離れした力を目の当たりにした事があり、受け入れやすいだろうということで、俺の補佐兼鉄砲大将となっている。
出会いはアレだったが、事前に内示があった事もあり人間関係はかなり良くなっている。
〜ステータス〜
名前:坪内喜太郎利定
レベル:6
年齢:17
所属:織田弾正忠家
職業:鉄砲大将
称号:なし
状態:健康
体力:50/50
気力:40/40
妖力:-
力 :12
頑強:24(14+10)
敏捷:12
器用:14
知力:14
精神:11
幸運:13
忠誠:86
技術:砲術、剣術(太刀)
〜装備〜
主武器:国友筒(攻撃力5+1)
副武器:無銘・数打(攻撃力3+1)
頭:鉢金(頑強+1)
胴:桶川胴(頑強+3)
腕:籠手(頑強+2)
腰:佩楯(頑強+2)
脚:脛当て(頑強+2)
装飾品1:なし
装飾品2:なし
利定くんが大将を務める鉄砲隊は信長軍の中でも新設されたばかりの隊で砲術に優れた者が集められている。その代わり白刃戦の能力はお察しだ。人間適材適所というものがあるのである。
「喜太郎殿、今回はよろしく頼むよ」
「藤十郎殿!貴方が味方であることがどれほど心強いか!敵方には同情しますな」
ははは、おだてすぎだろ。
「喜太郎殿、鉄砲隊の仕上がりはどうかな?」
「橋本伊賀守一巴様にも手解きを受けまして、何とか間に合いました」
「そうか。今回は150の兵で700を迎え撃つことになる。鉄砲隊は作戦の先鋒であり要でもある。頼むぞ」
「数の上では下津の時に比べたら楽に聞こえますな。戦働きは期待しておいてください。では私は先に陣に行って他の大将たちも集めておきます」
そういうと利定くんは走っていく。
柳軍の作戦はこうだ。
一、矢合わせの後、敵を引き付け火縄銃で前衛の数を減らす。
二、俺と騎馬隊が突撃して敵兵を片付けながら敵本陣へ向かう
三、槍、足軽隊が後に続き、俺たちが討ち漏らした敵を捌く
なんとも俺頼みの作戦ではあるが、これが一番堅実な戦い方なのである。
信長軍の戦略的には俺を達成がいる末森城に送り込むのが間違い無いだろう。
だがそれだと俺に戦功が集中しすぎて、他の武将たちが戦功を上げられなくなって不満が爆発してしまう。
なので今回は敵方の主戦力の柴田軍側に信長軍の主戦力として主だった武将が当てられ、俺は別働隊として林軍を抑えるのが今回の役割だ。
・・・・・・・・・
・・・・・・
・・・
「「「うぉおおおぉぉぉっ!!!」」」
ヒイイィィィィィイン!
戦場に両軍の鬨の声があがり、鏑矢が放たれる事で戦が開始になる。
この時代の戦、矢合わせという矢の打ち合いから始まる。少しでも兵を減らすためにお互いの陣に向けて弓を撃ち合うのだ。
少しでも被害を抑えられるよう、俺たちは弓兵の前に盾専門の兵を置き、陣の最前線にいる弓兵や鉄砲兵を守るのだ。
板を合わせて二等辺三角形状にした簡単なものだが結果的に被害は圧倒的に減ったので、お褒めの言葉を頂いた。
さて、お互いに弓を撃ち終えたらいよいよ前衛同士の戦い…とはならず、こちらにはまだ鉄砲隊がいる。
「第一隊、放てぇーっ!」
敵の槍兵が突っ込んでくるが、こちらの鉄砲兵の一斉掃射によりバタバタと倒れていき、兵の足が止まる。
が、火縄銃が連発が効かない武器だと思い至ったのか、再び走ってくる。
そうそう、それは間違った判断じゃない。俺がいなければな。
火縄銃の欠点なんて百も承知。その欠点を補う戦法だってわかっている。
「第二隊、放てぇーっ!」
利定くんの号令により再び火縄銃が火を噴き、また兵がバタバタと倒れていく。まさか連射されると思っていなかったのか、今度こそ敵兵の足が止まる。
だがそれでこちらが手を止めるわけもない。
「第三隊、放てぇーっ!」
再び戦場に轟音が響き渡る。
最早敵の先鋒はガタガタだ。だがまだまだ!
「第一隊、放てぇーっ!」
装填が終わった第一隊が再び銃撃を行う。
そして再び第二隊、第三隊と銃撃が完了すると既に敵兵で立っている者はいなかった。
「これは凄いですね。鉄砲隊の存在で戦が変わりますよ」
利定くんが呆然と呟く。
そうだよな。鉄砲隊自体まだまだ今の時代では画期的なのに、その欠点を補う運用までしたのだ。
本来なら長篠の戦いでお披露目される三段撃ちだが、それを待っていたらこの戦いで戦死者が増える。後世の信長には申し訳ないが先取りさせてもらう。
「喜太郎殿含めた鉄砲隊の大戦果だな。さて、ここからは白兵戦の時間だ。喜太郎殿、鉄砲隊で白刃戦が出来る者を集めて、俺と騎馬隊の後に槍隊と共について来い」
利定くんにそう言うと俺は刀を抜き最前線に出る。今回は本陣まで駆け抜ける速度重視の為、敵から武器を奪う時間がもったいない。数打の太刀を10本ほど用意してもらい背中に背負っている。
「柳藤十郎信晃、出るぞ!騎馬隊は俺に続いて敵陣を食い破れ!槍隊、足軽隊はそれに続いて討ち漏らしを片付けろ!」
「「「おおぉぉぉおおぉぉぉっ!」」」
俺の掛け声に柳軍から雄叫びが上がり、動揺する林軍へ突撃を開始するのであった。
馬よりも速く敵陣に辿り着いた俺は、進路上にいる敵兵を斬り捨てていく。
走りながら熟練度がカンストして消費気力が10になった"回転斬り"を放ち、こちらも熟練度カンストで消費気力が8になった"回し蹴り"で敵兵を蹴り飛ばし、まとめて吹き飛ばすことで道を切り拓いていく。
このコンボが一対多で戦うときには一番コストパフォーマンスの良い組み合わせだな、と考えつつも動きを止めない。
折れた5本目の数打ちを投げ捨て、次の刀を抜く。
後ろを振り向くと俺に続く騎馬隊がさらに敵の軍勢を割っていき、そこに後続部隊が襲い掛かるのが見えた。
敵は完全に浮き足立っていて、既に大勢は決したと見ていいだろう。だが、やるならば徹底的にやる。
本陣まであと少し、これで林軍は終わりだと思ったところで、本陣の方から信長の怒号が鳴り響いた。
距離もさることながら騒がしい戦場にまで響く声量は異常だが、それを出さなければいけない事態の方がもっと異常だ。
何かあってはまずいと、俺は騎馬大将と利定くんに前線を任せて本陣に向かって走り出すのであった。
続きます。
三段撃ちが史実より早くお披露目です。
史実で鉄砲隊がいつ結成されたかは定かではないですが、桶狭間の戦いの時点では500梃ほどは持っていたそうです。




