第十三話 ういじん 2
昨日中に更新すると言っておきながら執筆中に爆睡してしまいました。強力な効果だったので、近距離パワー型に違いありません。きっと近所にスタンド使いがいるのでしょう。
ごめんなさい _(:3」 ∠)_
「「「「うおおおおお!!!!」」」」
400人分の唸り声は地鳴りのように大地を広がり、草木をざわめかせる。
最初に槍を持った10人ほどの兵が突っ込んでくる。
少ないと思うかもしれないが、槍の間合いを考えると一度に襲いかかれる人数などそんなものだ。
ただの農民上がりではないのであろうその兵たちは、手慣れた動きで俺を包囲し、ギリギリ俺の太刀の射程外から同時に槍を突き出してくる。しかも一点ではなく、普通の人間ではどう逃げても必ず一撃は喰らうように適度に攻撃位置をバラしている。
だが残念ながら俺は普通じゃない。槍が突き出されると同時に飛び上がる。
「………は?」
誰が声を漏らしたのだろう。どいつもこいつも己の頭より高く飛び上がった俺を間抜け面で見ている。
敵を前にしてそんな隙を晒していては戦場では生きていけないぞ。
俺は空中で3本の苦無を掴むとそれを正面の3人に投げる。苦無は投擲術の効果も相まって、狙い違わず3人の首に突き刺さり、男たちは崩れ落ちる。
「まず3人」
投擲の勢いで身体を回した俺の目に飛び込んでくるのは、未だに間抜け面を晒している残りの男たち。
俺は槍の上に着地して武器破壊をすると正面の男たちの前に躍り出る。これで俺の間合いだ。
「"回転斬り"」
スキルにより俺の身体が強い捻りと共に回り始め、太刀の範囲内にいた男たちの首が宙を舞う。
「これで8人」
そこまで来て漸く残りの男たちが槍を捨て、刀を抜くが行動が二手遅い。
「せめて槍を外した瞬間にそうすべきだったな」
そう呟くと俺は残りの男たちに踊りかかった。
・・・・・・・・・
・・・・・・
・・・
「でえぇぇりゃああぁ!」
鎧武者が大刀を振りかぶり斬りかかってくる。
それを俺は一刀の元に斬り捨てる。
また刀が折れてしまった。だが武器なら沢山ある。
鎧ごと真っ二つになった武将の手から大刀を奪い、取り囲む兵たちを睥睨する。
「次」
「うわあああっ!」
半ば恐慌状態でまた槍で突きかかってくるが、今度は槍を掴んで引き寄せて"回し蹴り"を使う。
鞭のようにしなる脚が敵兵を捕らえると、槍を離した敵兵は地面と一直線にすっ飛んでいき他の仲間を巻き込んで倒れていった。肩を支えられて下げられていくということは恐らく生きているのであろう。
次々と襲いかかってくる敵兵を切り捨て、掴み、殴り飛ばし、かれこれ100人近くを倒してきた。
最初の頃は何人かでまとめて襲ってきていたが、段々と襲いかかってくる人間も減っていった。残りは農民上がりの兵ばかりで、死ぬ気で倒すという気概もほとんど感じられない。
その時螺貝が鳴る。
すると敵兵たちが退いた。漸く諦めた時、俺の耳に何かが風を切る音がした。
ヒュッ
「うおっ、あぶねぇ!」
音が聞こえると同時に目の端にキラリと光る物があったので掴み取ってみれば、矢が俺の手に握られていた。
「矢を掴んだだと!?」
敵兵の一人が驚いている。まぁ切り払うくらいは出来る人もいるけど、掴むとなると難易度上がるよね。俺は掴んだ矢を後ろに放る。
あとで無傷で回収できればそのまま弾正忠家の物資になる。
ヘイヘイ、物資カモンと余裕をこいていた俺に対し、弓兵隊が矢を番える。パッと見で100近くいる。
うそん、それは無理だわ。
ヒュゴオオォッ
100を超える矢が俺を目掛けて飛んでくる。避けるのは範囲が広すぎて無理。掴むには手が足りない。となれば切り払うしかない。
「再利用できないからもったいないんだよなぁ」
そう言いながらも飛んでくる矢を切り払う。コツは簡単。自分に当たる軌跡の矢の中で、自分に近い矢の矢尻部分を順番に刀で切り払うだけ。スローになった世界なら簡単でしょ?
全ての矢が着弾した後に無傷で立つ俺を見て、信安軍は動揺が隠せないようだ。
既に残りの敵兵の大半は腰が引けていて襲いかかってくる気配はない。
俺は信安軍に近づくと近くにいた鎧武者に問いかける。
「お前たちの大将はどこだ?」
「貴様などに教えるかぁぁああぁっグフゥッ!」
そいつは俺に斬りかかってきた。
質問に暴力で返すような輩には一切の容赦はしない。俺は踏み込んでアッパーカットを敵の腹に決め、浮き上がったところに"圧し切り"を叩き込む。また一本刀が折れたが敵の兵も一人減った。
「ひぃっ!ば、化け物め!」
「大将でない者は邪魔だ!もう一度だけ聞くぞ?大将はどいつだ?」
そう問いかけながら俺は周囲の敵兵にステータスオープンをかける。
だがそれらしい人物は見つけられなかった。
徒士頭はいるんだけど、この規模の軍勢を率いるような地位ではない。
ひょっとして既に逃げたか?
だがそうなるとこいつらがここから退かないのは何故だ?指揮系統の崩れた軍なんて速攻散り散りに敗走だろ。
相手が退かない以上、俺もこの場を立ち去ることはできない。
俺は敵軍から200メートルほどの位置で腰を据える。
これ、誰がどうやって収拾をつけるんだろうか。
・・・・・・・・・
・・・・・・
・・・
そうこうしているうちに背後から一騎の騎馬がやってきた。
「藤十郎殿ーっ!」
「可成さん?そうか三郎様たちが無事に辿り着いたのか。って、可成さん脚どうしたんですか!?」
やってきた可成さんは膝に包帯を巻いていて、それは血で染まっていた。
「殿ならば心配ない。ピンピンしておるよ。某はちょっと斬られてしまってな。だがこれくらいなら歩かなければ大したことない」
「ホントですか?まだお子さんも小さいんだから無茶しないで下さいよ」
「ははは、この軍勢の前に一人で立ち向かっている貴殿以上の無茶はあるまい!」
それを言われるとぐうの音もでない。
「それで、今これはどういう状況で?」
「あー、最初は順調に数を減らしていたんですけど、敵将が逃げ出したのかそれ以上攻めてくるでもなし、かと言って逃げ出すでもなし。戦意のない兵を殲滅する趣味もないし、どうしようか途方に暮れていたんですよ」
「ふむ」
可成さんは顎に手をあてて考え込む。何かいい知恵が出るといいんだけど。
「では某が話を聞いてこようか」
「え?いいですけど、俺も行きますよ。流石にあの数に襲われたら可成さんでも一たまりもないでしょう?」
そうして俺が可成さんと再び信安軍に近づくと一人の少年が前に進み出てきた。
「某は織田弾正忠家家臣、徒士頭の森三左衛門可成と申す。貴殿は何者か?」
「私は織田伊勢守家家臣、徒士頭の坪内喜太郎利定と申す。弾正忠三郎様にお伝え頂きたき事があり参りました」
「聞こう」
可成さんがそう言うと、坪内利定と名乗った少年はチラチラとこちらを見ながら話を続ける。
「我らは伊勢守兵衛(信賢)様を大将に、弾正忠三郎様の首を取る為、出兵してきました。しかしそこの柳藤十郎殿の鬼神の如き活躍により兵衛様は逃走し、我らは取り残されました。此度の戦で我らは伊勢守家では弾正忠家には勝てぬと思い知りました。どうか、三郎様にお取りなし頂き、配下に加えて頂きたく…!」
そう言うと坪内利定は深々と頭を下げ、背後にいた兵たちもそれに続く。
え?それ言うの俺でも良くない?なんで可成さんなの?あれか、下っ端じゃ話にならねぇってか?
「あいわかった。その旨、しかと三郎様に伝えよう。藤十郎殿、某は一走りしてくるでな、今暫くここをお任せしても良いか?」
「わかりました。ここまできたらどこまでも。あとそろそろ又左衛門殿と内蔵助殿が合流すると思うので、もし会ったらそちらに向かわせて下さい」
そう伝えると可成さんは馬を駆ってこの場を離れていく。
坪内利定もその場を離れようとしたので、呼び止めて気になることを聞いてみる事にした。
「なぁ坪内殿?」
俺が声をかけると彼は文字通り飛び上がり、錆び付いた機械のようにぎこちない動きでこちらを振り向く。
「ななななんでしょうか、柳殿?」
声が裏返り、歯の根もあっていない。誰がどう見ても緊張しているその様子に思わず苦笑してしまう
「落ち着け、先程の件でこの戦は終わりだ。ひとつ聞きたいことがあってな。先程の話、俺相手でも良かったと思うんだが、何で森殿が来るまでしなかったんだ?」
そう問うと、坪内利定はダラダラと脂汗をかき、目が忙しなく泳ぎ出した。
「あの、本当の事を申し上げても気を悪くされませんか…?」
「しないしない」
そう俺が言うと、何か大きな決意をするように彼は頷くと、理由を語り始めた。
「兵を易々と引き千切り、数多の返り血を浴びる悪鬼の如きあなたを見て、近付いたら話しかける前に容赦なく殺されてしまうのでないかと、恐ろしくなりまして…」
ビビってただけかーい!しかも可成さんには鬼神とか言ってたけど本音は悪鬼かよ!しかし怒らないと言った手前文句を言うわけにもいかず、俺はガックリと肩を落とすのであった。
のぶあき は おりつのたたかい に しょうりした!
〜ステータス〜
名前:柳藤十郎信晃
レベル:18 (348/1800)
年齢:22
所属:織田弾正忠家
職業:側仕え/小姓
称号:急成長
状態:健康
体力:170/170
気力:170/170
妖力:-
力 :65(49+16)
頑強:53(43+10)
敏捷:44(43+1)
器用:49(42+7)
知力:45
精神:48(45+3)
幸運:39(33+6)
忠誠:95
技術:剣術(全般)、槍術、無手格闘術、忍術(刀)、斧術、体術、急所突き、投擲術、解体、隠密、気配察知、夜目
必殺技:剣術 / 二連撃 ★★★★★、回転斬り ★★★★☆、圧し切り ★☆☆☆☆
槍術 / 二連突き ★★★☆☆
無手格闘術 / 正拳突き ★★★☆☆、回し蹴り ★★★☆☆
忍術 / 鎧貫き ★★☆☆☆
斧術 / 兜割り ★☆☆☆☆
〜装備〜
主武器:無銘・直江志津兼近(攻撃力4+2)
副武器:忍刀・無銘(攻撃力2+1)
頭:鉢金(頑強+1)
胴:桶川胴(頑強+3)
腕:籠手(頑強+2)
腰:佩楯(頑強+2)
脚:脛当て(頑強+2)
装飾品1:市のお守り(幸運+5)
装飾品2:ウサギの後ろ脚(幸運+1)
結局利家くんと成政は間に合いませんでした。
信晃も最早武将クラスでもない限りレベルが中々上がらなくなってきました。
一応経験値については基礎経験値や計算式に基づいて各話足し算をしています。
多くの感想を頂きありがとうございます。
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今後ともよろしくお願い致します<(_ _)>




