第十一話 つねおき ブートキャンプ
誤字報告機能、考えた人天才ですね。
いつもご指摘ありがとうございます!
チェックしているはずが、結構残っててお恥ずかしい…
あと話の都合上、第六話の恒興さんのステータスに2つスキルを追加しました。
それによってストーリーの流れはかわりませんし、キャラの特性が変わるものでもありません。
あの後、恒興さんから事の段取りを受けた。
一、城の見取り図と、侵入手順を基に単身信光の寝所に侵入
↓
二、寝静まった頃に信光を暗殺
↓
三、侵入経路を逆に辿り、脱出。以上
以上!?いや、簡略化しすぎでしょ!
だが侵入手順を見ると隠し通路から見張りの位置、交代の時間まで事細かに書いてあり、陽動すらいらない完璧なものが用意されていた。
どうやってこんな最高機密を入手したのかと問えば、協力者はどこにでもいるのですよ、とのこと。
これさえあれば俺じゃなくても良くね?と疑念の目を向けるが、恒興さんは目を細めた笑顔をこちらに向けるのみだ。
あれか、これは信長の競合相手を殺す事で忠誠心を測られていると見ていいのかな。
そう納得したところで実行日を問えば、実行までにあと七日ある。
そんなに準備がいるっけ?と思ったら恒興さん曰く、俺は存在感があり過ぎるとのこと。
どうもステータスの高さが覇気の様に一部の武人には感じられるらしく、今のままだと石垣を挟んでいても居場所がわかる、とのことだ。
そこで実行までの七日間、隠密の技を学ぶようにとの事。
訓練内容はこの先七日間の間に、気配を殺して待ち伏せをし、恒興さんの首に刀を突きつける事。
苦無の投擲でもいいのでは?と聞くと、確実に息の根を止める為に接近して事を為せということで、地獄の恒興ブートキャンプが始まった。
物陰に隠れて待ち伏せをしていたら、いつの間にか背後に回られていた。
え、全然気付かなかったんだけど?
木の上に潜んでエアアサシンを決めようとしたら、飛び降りた瞬間に避けられた上に、着地地点にどこからか取り出した短槍を立てられる。
慌てて斬り払ったけど体勢を崩した着地の隙に首に刃が添えられていた。
切り払いが間に合ってなかったら串刺しですよ?
御館の庭の茂みに隠れていたら火炎瓶を投げられて、茂みごと燃やされる。鬼か!ちなみに小火の原因は俺ということになっていて、庭の景観を損ねた事を信長に怒られた。解せぬ。
今度こそと思って寝所の床下に隠れていたらネズミをけしかけられて、身体中齧られる羽目に。テイマースキルでも持ってんの?
などなど、色々やったが涼しい顔で尽くが返される。
これ七日でどうにかなんの…?そう不安になりながらも恒興さんに挑み続けることになる。
・・・・・・・・・
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・・・
そして最終日、ようやくスキルが生えた。
技術名:隠密
効果 :気配を消す術が上手くなり、気付かれにくくなる。
取得特典:精神+1
技術名:気配察知
効果 :周囲の気配に敏感になり、潜んでいる人間に気付きやすくなる。
取得特典:精神+1
隠密は言わずもがな、気配察知は恒興さんの隠密に対抗していたら生えていた。
これで大分やりやすくなるはずだ。
さて、そんな俺は今恒興さんの寝所の梁の上にいる。
既に恒興さんは眠りについており、起きる気配はない。
だがここで油断をしてはいけない。前にも一度チャレンジしたときにはちょうど恒興さんの真上にあたる位置に撒菱が撒いてあり、それを踏んだ俺は声を抑えられず見つかってしまったのだ。
今回はまず梁の上をしっかりと確認する。よし、何もない…っ!?いや、よく目を凝らしてみると髪を編んだ細い紐が張られている。紐の先を見てみると鳴子が仕掛けられており、気付かずに紐に触れていたら即座に起きて警戒されていただろう。
紐をそっと跨いで恒興さんの直上に来る。
ここで再度恒興さんを直視しない様、目を凝らす。
直視するとその視線で目が覚めるのだそうだ。一度それで失敗してから常に広く視界を取る様にして対象の周りを見る様にしている。
梁から恒興さんの間に罠はない。
今夜がラストチャンス。鼓動を整え、心を落ち着かせる。
大丈夫、後は首に刃が当たる様にして降りるだけ。殺気は出さない。
そして静かに梁から飛び降り、恒興さんの首についに刃が届いた。
すると恒興さんは静かに目を開け、にやりと笑う。
「まぁ7日でここまで出来れば及第点ですね」
俺の刀は確かに恒興さんの首に突き付けられていたが、逆に俺の首にも恒興さんの刀が突き付けられていた。
「はぁ、完全な達成は無理だったか…」
「当たり前です。年季が違いますよ」
しかしこれで本番に臨める。
辛うじて合格を貰えた俺は翌日早朝に那古野城に向けて出発するのであった。
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・・・・・・
・・・
〜side 信長〜
「叔父上が亡くなった、か」
俺は報告をしてきた勝三郎を見つめる。
相も変わらず読めない笑顔だ。
「それで、何故殺した?」
「謀反の動きがあったから、では済まされませんかね?」
いけしゃあしゃあと勝三郎は宣う。恐らく何らかの証拠を掴んでの事であろうが、事が事だ。その真意は問いただしておかねばならない。
「叔父上は父上が亡くなった後、俺を支持してくれたし、大和守家を滅ぼす際に協力もして頂いた。それなりの理由を話せ」
圧をかけながら命じるが、勝三郎はどこ吹く風で答え始める。
「まず大前提として、謀反の動きがあったのは本当です。那古野城内に不自然な物資と兵の動きがありました。今の機会に信光様が兵を出さなければならない相手はいませんからね。こちらに打って出られる前に芽を摘み取りました」
そこで勝三郎は一旦言葉を切る。ここまでが建前、という事であろう。
「そしてこちらが真の目的ですが、勘十郎様を釣り出す為です。
三郎様には信秀様の弟である信光様と、美濃の蝮殿という、2つの後ろ盾がありました。これにより勘十郎様は尾張国の覇権争いに対し、期を伺うばかりで実力行使に出ることはありませんでした。
今まではそれでも良かった。時間をかけて調略するなりして徐々にあちらの勢力を削り、こちらの地盤を固めることで、確実に勝てる時に打って出れば良かったのですから。
ですが今川義元が家督を譲ったことで状況は変わりました。遠くない未来、今川は尾張に攻めてきます。そうなった時に尾張が割れていれば各個撃破されて尾張は今川に呑まれるでしょう。
そうならないよう、早急に勘十郎様を釣り出し、柴田殿や林殿を味方に引き込む必要があります。
勘十郎様から仕掛けてもらえれば、我々は自衛のために反撃し、討ち果たしたという大義名分ができます。信光様の死は膠着状態であった関係を崩す為に必要だったのです。」
「言いたい事はわかるが、あの頑固者どもが簡単にこちらに付くか?」
「付きますよ。お二人とも織田家の滅亡を望んでいるわけではない。三郎様が勘十郎様を斃し、将たる器を見せれば必ずこちらに付きます」
そう言われてしまうと反論のしようがない。あの二人に関しては、間違いなくそうなるだろうという確信が俺にもある。
「叔父上の死の必要性については、納得はしないが理解はした。ではそれを藤十郎にやらせた理由は何だ?」
すると勝三郎は少し悩んだ後、
「そうですね…あえて言うなら、忠誠心を試したと言うところでしょうか」
その意味を捉えかねていると、勝三郎は言葉を続けてくる。
「今回私は三郎様の為、信光様を殺すことが必要だと説明しました。その上で今回の暗殺が三郎様に対する忠誠心を測るものであると思い込ませたのです。藤十郎殿が人を殺す事に忌避感を覚えているのは分かっておりましたので、三郎様の為という忠誠と人を殺す忌避感どちらを優先するかを見極めたかったというのがありますね」
忠誠心なぞ、市に対する態度を見れば一目瞭然だろうに。今回の報告の中で一番胡散臭い理由が出てきた。
しかし自らの意志で人を殺せるか殺せないかは確かにこれからの世の中では重要だろう。結局相手を殺さねばこの先生きていくことも難しい時代になる。そう考えれば将来の義弟候補である藤十郎が一つ壁を乗り越えた事は喜ばしいことなのであろう。
「結果として藤十郎殿はやり遂げた。今回の件は色々な意味で公にする事はできませんし、藤十郎殿にも決して誰にも言わないよう言い含めています。ですが、これにより勘十郎様との戦は近いうちに必ず起こるでしょう。その時に確りと戦働きをしてもらい、他の方々に認めてもらうだけの功績を上げてもらう。これが我が織田家にとっても藤十郎殿にとっても良い事だと判断したまでです」
確かに俺は何でもやれ、と命じた。
だがまさかこんな大それた手段を取るとは思ってもみなかった。
結果としては恐らく最善であったのだろう。それが分かるだけに俺は勝三郎に対し、納得のいかない不快感をぶつけることも出来ず、「次から大きく事を動かす場合は必ず事前に報告する様に」と嗜めるに留まるのであった。
のぶあき は おだのぶみつ を たおした!
〜ステータス〜
名前:柳藤十郎信晃
レベル:16 (542/1600) ↑2
年齢:20
所属:織田弾正忠家
職業:側仕え/小姓
称号:急成長
状態:健康
体力:150/150 ↑20
気力:150/150 ↑20
妖力:-
力 :50(44+6) ↑5
頑強:43(38+5) ↑6
敏捷:37(36+1) ↑6
器用:43(36+6+1) ↑6
知力:40 ↑7
精神:42(39+2+1) ↑7
幸運:31(30+1) ↑4
忠誠:80
技術:剣術(全般)、槍術、体術、無手格闘術、忍術(刀)、急所突き、投擲術、解体、隠密・壱、気配察知・壱
必殺技:剣術 / 二連撃 ★★☆☆☆
〜装備〜
主武器:忍刀・無銘(攻撃力2+1)
副武器:無銘・直江志津兼近(攻撃力4+2)
頭:忍びの頭巾(頑強+1、精神+1)
胴:忍びの上衣(頑強+1)
腕:忍びの手甲(頑強+1、器用+1)
腰:忍びの袴(頑強+1)
脚:忍びの足袋(頑強+1)
装飾品1:なし
装飾品2:ウサギの後ろ脚(幸運+1)
信光暗殺は恒興さんの策略でした。
どんどん黒幕感が増していく…
最近自分でも執筆していて市ちゃんに癒されている事がわかりました。
市ちゃんが出ない話は書いててちょっと物足りなかったり(^_^;)
でもこれから合戦が増えてくると出番が相対的に減るんですよね!かと言って戦場を駆ける市ちゃんは書きたくない!悩ましいところです。




