その7 巨大なカエルモンスターに襲われた!
タンポポを回収して帰る為に斜面を登っていると、後ろでケロケロ騒がしい。
振り返るとカエルの集団が強盗団を発見したようで、逮捕しようと迫っている所じゃないか!
「あちゃー! 『アカネラッコの皮』の効果が切れたよ! 逃げるよ!」
期限付きですか~!
三人で斜面を駆け上がるが、カエルの中でも馬鹿でかい四トントラックくらいありそうなヤツが真後ろまで迫って来ている!
「おうさまケロケロだよ!」
トントンもだったけど、おうさまが付くと何故見かけがリアル志向になるのか。
追いつかれる寸前にさっきやって来た穴の中に飛び込んだ。
大きなカエルは穴の中に入れずに挟まってしまった。
「危なかったね! 〝おうさまケロケロ〟にやられちゃうところだったよ。二人とも大丈夫!?」
「ボクは……平気……」
酔っ払いは? と見回すと居ない。どこいったと入り口を見ると〝おうさまケロケロ〟の口からぶら下がる下半身のお尻。
食べられちゃってるじゃん!
「タンポポちゃん!」
慌てて二人で入り口に駆け寄り、挟まっているでっかいカエルの口からタンポポを引っ張り出そうとそれぞれ足を持った。
さすがに酔っ払ってる状態で食べられちゃったら、いくらタンポポでも消滅してしまう。
片足ずつ持ってるものだから、ちょっと目のやり場に困る。これはオバケ、オッサンのオバケだ。
二人で力いっぱい引っ張ると、スポン! とタンポポが抜けて三人はそのままふっ飛んだ。
タンポポは目玉がグルグルでノビている、やはり危機一髪だったようだ。
身体をカックンカックン揺さぶるがタンポポは起きない、女の子の顔を叩くのは気がひけたのでやめた、オジサンなんだけど。
「ああ、しまった。逃げる途中で回復薬を落としちゃったよ」
カレンが慌てているけど、オバケに回復薬なんて意味がないから大丈夫ですよ。
「このままなんとか出口まで運ぼう!」
そう言ってタンポポを抱えようとしたカレンの身体に、ピンク色の太いヘビが巻きついた。
「え!?」
しかしそれはヘビではなく〝おうさまケロケロ〟の舌だ。
両腕ごと身体に巻きつかれたカレンは剣が抜けない!
瞬時に彼女は巨大なカエルが待ち受ける入り口に引き戻され、頭からカエルの口に突っ込んだ!
「うわああああ」
ボクはカエルに突撃する!
モンスターガエルに飲み込まれまいとするカレンのじたばた暴れる足を必死に掴み、一生懸命引っ張ったがボクの力ではびくともしない。
どんどん飲み込まれていくカレンにボクは焦りまくり、必死に彼女の腰に抱きついた。
カレンの身体が吸い込まれていく……ボクの腕ももうカエルの口の中だ。
嫌だ嫌だ! こんな所でカレンとお別れするなんて嫌だ!
さっきいつまでも隣に居てくれるだろうかなんて、不安な事を思っちゃったのがいけなかったんだ!
もしかしたらこのまま二人一緒に飲み込まれるかも知れないけど、カレンを離す気なんて微塵もなかった。
カレンとこんな形でお別れするくらいなら、ボクも一緒に食べられる!
すると止まった。
突然カエルの動きが止まったのだ。
モンスター〝おうさまケロケロ〟はいきなり光り輝いたかと思ったら、そのままポックリいってしまったのである。
カクンとなったカエルから何とかカレンを引っ張り出す事に成功し、二人は洞窟に並んで座って、動かない光りガエルをボーゼンと見つめる。
「これって苔だよね、みのりんがカエルの口に苔を突っ込んでくれた?」
「やって……ない……」
パニックでそんな機転が利く訳がない、やるとしたら行動不明の酔っ払いだけどその酔っ払いは目を回して行動不能。
「どうしてだろう」
カレンはベチョベチョになった前髪を横に掻き分けるしぐさをして……
「「あ!」」
二人同時に気付いた、この犯人はやっぱりそこでノビているオバケの女子高生なのだ。
タンポポが酔っ払って『お友らちになってくらさい』とカレンの髪にさした苔が、ボクたちを窮地から救う事になったのである。
「ありがたやありがたや」
ボクとカレンはノビているタンポポに手を合わせた。
まるで合掌だが、オバケに合掌するのは当たり前の事なのだ。
でっかいカエルが挟まったお陰でカエル遊園地からの追っ手も無く、帰りは出口までゆっくりタンポポを運ぶ事にした。
お肉を纏った霊体であるモンスターは倒された後で暫らくすると消滅するけど、ボクたちがゆっくり脱出するくらいは余裕なのだとか。
カレンが重い上半身を持ち、ボクは軽い下半身担当なんだけど、そこそこの体重があるのが困り者だ。
霊体のくせに無駄に体重があるとか迷惑すぎます。壁を平気で抜けたりするんだから、持ち運びは片手でぶら下げるくらいにして頂かないと。
というか、霊体が何で気絶してるんだろう、この間の本体はどうなっているのか。
考えたら負けかな。
さすがに女子高生の足を運んでいると少しエッチな絵面にドキっとしてしまうが、運ばれてる途中でタンポポが何かを吐いた。
霊体のくせに何を吐いているんだろうか、目を回して口から何かをぶら下げているのを見て一瞬でエッチな気分はふっ飛んでいった、さすがタンポポである。
洞窟から先は偶然通りかかった馬車のオジサンに町まで乗せてもらった。
「ひいい! 少女少女強盗団!」
オジサンは最初、ボクたちを死体を運んでいる強盗団だと勘違いして慌てたみたいだ。
間違ってますよ、ボクたちは〝少女少女強盗団〟ではなく〝お肉強盗団〟ですからね。
それに運んでいるのは死体ではなく、その先のオバケですから。
町に戻り受付のお姉さんにお人形を渡して〝みのりんハウス〟に戻ると、タンポポ本体がボクの枕とタオルケットにえろえろやっていた。
やはり本体と連動していたか。
カレンと二人で枕とタオルケットを持って洗濯場に直行し、二人で笑いながら洗濯をした。
いつものスカート覗きオジサンが出たので、カレンが速攻で退治。
今、橋の上でオジサンが逃亡する際に献上してきたお菓子を食べている。
転生して二日目を思い出すよ、あの時もこうやってカレンとここに並んでお菓子を食べたんだ。
いつまでもこうやってカレンとは笑いあっていたい。
そう、いつまでも!
懐かしさに浸りながらお菓子を頬張る。
あま――あひゃぁ――い。
二人とも満面の笑みだった。
第14話 「優しい強盗団の洞窟探検」を読んで頂いてありがとうございました
次回から第15話になります
ついにモンスターの軍団が動き始めます
次回 第15話 「進撃してきたゴブリン軍」




