その6 カエルの遊園地でお宝ゲット
目の前に広がるカエルの遊園地。
カレンに言われて覗いて見ると、目の前のそれはとてつもなく大きくて広い空間だ。
ドーム野球場と表現した方がいいその空間は、天井や壁からの緑の光で遠くまで見渡せるのだ。
観客席の一番上から眺めていると、あちこちにカエルがいるのが見える。
巨大な石筍の上で鳴いてるカエルにそれを眺めるカエル、温泉みたいに池に並んで入っているカエルは、頭に手ぬぐいみたいなの乗せてるけど、気のせいだよね。
他には二列に並んで鳴きあったり斜めの岩を滑ったり、確かに遊園地と言われても違和感がなかった。
そしてボクはカエルに謝らなければならない。
カエルたちが小さく『ケロケロ』鳴いているお陰で全然うるさくないのだ。
これだけの数にゲロオゲロオやられていたらうるさくて仕方が無い、小さな『ケロケロ』はカエル同士のご近所付き合いから生まれた鳴き声だったのかも知れない。
騒音はご近所トラブルの元なのだ。
「こっちだよ、カエル避けアイテムがあるけどなるべく静かにね」
カレンに連れられてボクとタンポポは観客席の斜面を降りていく、下りきった場所に目的の窪みがあるらしい。
敵のアジトに潜入するスパイみたいで楽しい。カレンもどことなく楽しんでいる様子である。
その時一匹のカエルが近づいてきた、さては警備兵だな! スパイたちは慌てて近くの岩陰に隠れる。
タンポポが出て行こうとするのを必死で二人で押さえた。
カエルはケロケロ鳴きながらボクたちが隠れている岩を見ていたが、やがて離れていった。アイテムの効果はバツグンにいいみたいだ。
すると今度は二匹のカエルが連れ添ってやってきた、次から次へとまったく。
イチャイチャしている雰囲気からカップルのカエルのようである。
お熱い事でと思っていたら、タンポポが口でヒューヒューやりだした。
このオバケが口笛を吹けなくて本当によかった。
その少し離れた場所から、もう一匹のカエルがそのカエルのカップルを眺めているのが見えた。何を考えているのか無表情でじっとしている。
カップルを微笑ましいとか思ってるんだろうな。やっぱり恋人同士のシーンは見ていて心がポカポカしてくるものだ。
『ペッ!』
カップルカエルを眺めていたカエルが、地面にツバを吐いた。
それに気が付いたカップルは迷惑そうにどこかに行き、ツバ吐きカエルもどこかに消えた。
「さ、さあ、お宝を発掘しっか」
カレンがちょっと困惑した感じだ、せっかくの楽しい気持ちを微妙な雰囲気にしてくれたカエルめ許さないぞ。
でもなんとなくあいつの気持ちがわかってしまうのが辛い。
ボクたちは目的の場所に到着だ。
窪みの中には色んな物がギッシリと詰まっていた。
お宝と言っても、モンスターが拾ってきたものだけあってさすがにガラクタが多い。破れた長靴だの折れた釣竿、木の枝、入れ歯、トランクス……
何でそんなものを落とすかな。
おや、このコップはまだ使えるぞ、もったいないし持って帰ろうか。
この箱はおままごと用のテーブルに使えるかなあ……お、スプーン発見、これもおままごとに。
ち、違うぞ。たまたまおままごとに使えるかなと思っただけで、べ、別におままごとをやる気まんまんなわけじゃないぞ。
自分に言い訳をしていると紐みたいな物も発見した、これをタンポポに取り付けて帰りのリード代わりにしようか。
フラフラ迷子になりそうだしね。
紐を取り出そうと引っ張ると、ずるずるとブラジャーが出てきたので大慌てで埋めなおす。なんて危険な物を拾って来るんだカエルのやつめ。
ここが地雷原に思えてきたじゃないか。
今度は細くて青いスキニーパンツを見つけた、遂にお宝発見だ! 震える手でそれを掘り出す、これぞまさに掘り出し物だ。
これでスースーとお別れだ、夢にまで見たスカート以外のレーディースボトムスなのだ。
念の為に確認してみる。『メンズ』とあった、埋めなおす。
ショーツも出て来た、死にかけながら埋めなおす。
ふんどし、埋めなおす。
「らおおお」
タンポポが一ゴールドを見つけた、酔ってても嗅覚だけは凄いですねあなた。
ついでにカビたパンを発掘したので、食べる前にタンポポの手から叩き落す。
おにぎりを発見した、叩き落す。
お饅頭、叩き落す。
「みのりん、タンポポちゃん、何かあった? 私はアヒルのオモチャを見つけたよ。私の幼馴染みが釣りの浮きにしてたのとそっくり、きっと落としたんだね」
ボクは未だに大した成果なし……と、ある物を手に掴んだ。
それはお人形、女の子が遊ぶようなお人形だ、それでふと失くし物のお人形の張り紙を思い出した。
掲示板に貼られたあの依頼書にあったお人形の絵ってどんなんだったっけ……
お人形を持って思い出しているとカレンが近づいてきた。
「みのりんが見つけたんだねそれ、良かった見つかった」
差し出してきたのは掲示板に貼られていたはずの依頼書だ、カレンいつの間に……
そういえばギルドから出る時にカレンが受付のお姉さんに何か話していたっけ。
「うん、絵と同じだね。じゃ帰ろっか」
依頼書の絵と照らし合わせて、カレンが立ち上がった。〝任務完了〟というわけだ。
昨日、趣向を変えて洞窟探検に行こう、そう言ってカレンは笑ってた。
報酬ゼロなので、冒険者の誰も相手にしなかった依頼。
さすがボクの相棒、考えてる事も同じだよ、二人してお人形の事を気に留めていたんだね。
何だよこの優しい強盗団は、と心がポカポカしてきてタンポポに帰ろうと促すと、酒瓶を見つけていたので無理矢理奪い取って捨てた。
あなたはもうお酒は禁止です!
「らお?」
オチ要員となったタンポポは指を咥えて酒瓶を眺めていた。
次回 「巨大なカエルモンスターに襲われた!」
最後の最後に大騒動




